1on1とは?意味や目的、話すことがない場合の対処法など徹底解説!

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1on1とは、上司と部下によるマンツーマンの面談のことです。上司が部下とコミュニケーションを取り、仕事の悩みやプライベートなどを話し合い解決策や考え方のアドバイスを提示することで、部下の成長を促します。

本記事では、1on1の目的や実施のメリット、具体的な手順、成功のコツなどを解説します。

1on1とは

1on1とは、上司と部下が定期的に行うマンツーマンの面談です。上司からの一方的なコミュニケーションではなく、部下の話に耳を傾け、仕事からプライベートまで幅広く話し合い解決策や考え方のアドバイスを行い、部下の成長を促します。

面談とコーチングとの違い

1on1・面談・コーチングは、それぞれ以下のような違いがあります。

種類内容
1on1双方向のコミュニケーションを取り、課題やモチベーション、プライベートなどについて話すことで、部下の成長やモチベーションアップにつなげる
面談人事評価を決めたり目標の進捗を確認したりする。
上司から部下へのフィードバックやアドバイスなど、一方的なコミュニケーションがメインとなる
コーチングプロコーチが専門スキルを活用して、「コーチング相手が自発的に答えを導ける状態」を作り出す。
コーチングの考え方自体は1on1にも応用できる

1on1は意味ない?注目されている理由とは

1on1は「意味がない」「苦痛だからやめてほしい」という意見もあります。しかし、正しい方法で実施した1on1は、以下のように企業と社員に大きな意味をもたらします。         

  • 人材育成につながる
  • 多彩な価値観をお互いに理解し合い信頼関係を構築できる
  • 優秀な人材の流出防止につながる

1on1では部下の不安や悩みに対し、上司が解決策や改善に必要な考え方を提示します。これにより部下は、自発的に考えられる優秀な人材へ成長し、将来的に企業全体を強化できるのです。

また、お互いの価値観や考えを理解することで、信頼関係も構築できます。とくに現在は、世の中が急速に変化する「VUCAの時代(※)」です。その中で仕事を行うには、立場に関わらず幅広い価値観を取り入れる意識が重要です。

上記のような部下の成長環境が整い信頼関係もある企業は、優秀な人材から魅力的に思われるため、流出を防止できます。

(※)以下の5つの単語の頭文字をとった言葉
Volatility(変動性)
Uncertainty(不確実性)
Complexity(複雑性)
Ambiguity(曖昧性)

1on1を実施する5つの目的

1on1を実施する主な目的は以下の5つです。

  1. 社員の成長を促進するため
  2. 企業全体の組織力を強化するため
  3. 信頼関係を強化するため
  4. マネジメントの質を向上させるため
  5. チーム内での心理的安全性を高めるため

1.社員の成長を促進するため

業務進捗や課題、今後のキャリアなどを把握できれば、上司は適切なアドバイスやサポートを提供できます。また、問題に対処する「考え方」を指導すれば、部下自身に課題解決力や思考力が身に付き成長できるでしょう。部下自身が成長を実感できれば、モチベーションアップにもつながります。

2.企業全体の組織力を強化するため

上司や部下、同僚間での信頼関係が構築されれば、働きやすい職場環境になりコミュニケーションが活発化します。コミュニケーションが活発化し従業員のエンゲージメント(企業への愛着や思い入れ)が高まれば、仕事のモチベーションも上がるため、最終的に組織力全体が強化されるでしょう。

3.信頼関係を強化するため

1on1では、課題を解消するアドバイスや考え方、キャリアなどを幅広く話し合います。悩みが解消されれば上司への信頼が生まれますし、上司も部下の考えを知り「挑戦したいという仕事を任せる」など、お互いの関係性を強化できるでしょう。

4.マネジメントの質を向上させるため

1on1を通じ、上司が部下へのアドバイスや解決策を提示する経験を積むことで、上司自身のマネジメント力向上につながります。マネジメントの質が高まれば部下の能力も上がり、最終的に企業全体を強化できます。

5.チーム内での心理的安全性を高めるため

心理的安全性とは、組織内で誰もが安心して発言できる状態が確保されていることを指します。マンツーマンの1on1なら「業務の不満」「部署への意見」など、普段は言いにくいことも伝えやすいです。また、上司が改善に向けて実際に動けば、部下からの信頼はさらに高まります。

1on1を実施するメリット

1on1を実施するメリットは以下の4つです。

  • 部下のモチベーションが向上する
  • 一人ひとりのパフォーマンスが向上する
  • マネージャーの部下への理解が深まる
  • 会社へのエンゲージメントが高まる

部下のモチベーションが向上する

1on1を通じ部下が以下を実感できると、モチベーションが向上します。

  • 上司が部下に信頼している点や評価しているポイントを伝える
  • スキルの向上やキャリアアップできている点を上司から評価してもらう
  • 努力の過程を上司が評価してくれる

部下のモチベーションがアップすれば仕事の質が高まり、企業の利益につながるだけでなくエンゲージメントも上がるため、組織への定着率改善が期待できます。

一人ひとりのパフォーマンスが向上する

1on1では、上司から部下へ業務のフィードバックやアドバイスなどを伝えます。部下自身にこうした考え方が蓄積され、自身の強みがわかり自発的に動くスタンスを身に付けられれば、仕事のパフォーマンス向上につながります。

マネージャーの部下への理解が深まる

上司は1on1を通じて、部下の悩みや組織への希望、今後のキャリア、職場環境への不満などを深く理解できます。部下の本音を理解できれば、今後上司としてやるべきことを考え適切に行動できるようになるでしょう。

会社へのエンゲージメントが高まる

1on1はマンツーマンで上司に本音を話せるため、心理的安全性が高いです。さらに上司が、部下の努力を評価すれば「自分は守られている」「能力を活かせている」と実感できるため、モチベーションが高まります。モチベーション向上は企業へのエンゲージメント改善につながり、離職の防止にも有効です。

1on1のデメリット

1on1にはいくつかのデメリットもあります。

まず、1on1は30分程度の時間を使うため工数が膨大です。マネジメント人数が増えるほど、上司の負担は増えます。とくに1on1は、繰り返し行うことで部下が成長する施策であるため、短期的な成果が見えにくく企業によっては優先度を上げにくいでしょう。

また、1on1の意義を従業員が理解していなければ、「上司が一方的に話す」「部下が1on1の必要性を感じない」「雑談で終わる」などが起こり、効果を実感できません。

1on1を実施する流れ

1on1は以下の流れで実施しましょう。

  1. 実施と目的を共有する
  2. 日時や場所を決める
  3. 1on1を実施する
  4. 次回までのアクションを決める

1.実施と目的を共有する

最初に、1on1の実施目的である「相互理解を深め信頼関係を構築し部下の成長をサポートする時間」という点を、上司と部下間で共有しましょう。実施の意義を理解できれば、部下も1on1へのモチベーションが高まります。

1on1の文化が浸透するまでは、事前に「キャリアアップ」「業務の悩み」などのアジェンダを考えてもらうとよいでしょう。

2.日時や場所を決める

日時や場所は、上司の都合だけでなく部下のスケジュールも尊重して決めましょう。1回あたり30分程度が目安です。「毎月第二水曜日の15時〜」などと固定しておくと、スケジューリングの手間を省けます。

場所は企業の会議室だけでなく、開放的なラウンジやカフェなどを使うのもよいでしょう。

3.1on1を実施する

上司と部下が双方向にコミュニケーションを取り、業務の課題や悩み、キャリアパス、プライベートなどを丁寧に傾聴しながら進めましょう。上司は部下にアドバイスや解決策を提示しつつ、適度に部下自身に考えさせ自発的に思考できるよう導くことも大切です。

1on1の内容をメモしておくと、次回以降に振り返りやすくなり、毎回の進捗管理にも役立ちます。

4.次回までのアクションを決める

1on1で話した内容をもとに、次回までに「挑戦したい業務を書き出す」「1年後のキャリアをざっくり考える」など、具体的なアクションを決めましょう。決めたアクションをもとに毎回の1on1で進捗を確認し、アドバイスや進捗改善に向けた提案などを実施します。

1on1の日時を固定していない場合は、一緒に次回の実施日時も決めておくとスムーズです。

効果的な1on1を実施するコツとは

効果的な1on1を実施するには、以下のコツを押さえましょう。

  • 「最初は幹部候補の社員に絞り実施する」「1on1ツールを導入し面談内容や目標の達成度合いなどを効率的に管理する」などの工夫によって、時間的負荷を軽減する
  • 上司自身がヒアリングスキルや提案力、コーチングスキルを身に付ける
  • 部下に「対話で信頼関係を構築する場である」という認識を伝えモチベーションを高めてもらう
  • 部下の特性や希望を把握し、それぞれに応じた最適なサポートを提供する
  • 「相槌を打つ」「言語化が難しい部分をフォローする」などで部下が話しやすい雰囲気を作る

1on1で話すことがない場合の対処法

当日に話す内容がなくならないよう、以下のように「事前に話し合うテーマ」を決めておきましょう。

  • 業務の悩みや課題
  • 職場環境への意見
  • 今後のキャリアについて
  • プライベートな悩み
  • 仕事の目標

こうしたテーマを話しても内容が尽きそうな場合は、過去の1on1を振り返り、進捗率や変化の有無などを話し合ってもOKです。

【具体例付き】1on1で話すテーマ・アジェンダ10選

1on1で話すテーマやアジェンダの例として10個を紹介します。部下への具体的な問いかけ方なども解説しているため、1on1の参考にしてください。

1.業務や組織の課題解決

業務や組織の課題を部下に考えてもらい、解決策まで出せるよう上司がサポートします。1on1では心理的安全性が確保されているため、部下が普段感じている業務や組織への不満・課題を引き出しやすいでしょう。

課題解決に向けて上司が具体的に行動できれば、部下との信頼関係も構築できます。

【問いかけ例】
「組織の方針でどんな部分を改善したいと思う?」
「業務をスムーズに遂行するためにどこを改善すべきだと思う?」

2.会社の戦略・方針

会社の上層部が決定した戦略や方針を伝え、現場の視点でどのように感じるかを引き出します。決まった戦略や方針に対して、個人レベルで行うことや素直に感じたことを話し合いましょう。

【問いかけ例】
「組織の方針についてよいと思う点や気になる点はある?」
「組織の戦略達成のために個人として何をやるべきかイメージできそう?」

3.モチベーション

部下の成長を促し企業全体を強化するには、個人のモチベーションアップが欠かせません。部下のモチベーションについて「上がる要因・下がる要因」の両面から話し合い、上司として何ができるか一緒に考えましょう。

【問いかけ例】
「どんなときに仕事のモチベーションが上がる?」
「仕事のモチベーションを下げる要因になっている人間関係や業務などはある?」

4.業務における成果の共有

業務の成果や目標の達成度合いなどを共有します。成果を共有することで、「より高い目標を目指すアドバイス」「成果達成に向けた課題の解消方法」など、幅広い観点で部下に考え方を提示できます。

【問いかけ例】
「成果を出すため企業にどんな体制を整えてほしいなどの要望はある?」
「成果を目指すうえでの障壁はある?」

5.目標設定

目標は必ず部下自身に考えてもらいます。上司は「将来挑戦したいこと」「キャリアプラン」などを引き出し、部下が目標を設定できるよう導きましょう。目標が決まれば、上司も部下の将来を踏まえて配属先や業務の割り振りを決定できます。

問いかけ例】
「仕事で具体的に何を達成したい?」
「今後はどんな業務に携わりたい?」

6.健康状態

1on1では、健康診断で見えにくいメンタル面の状態をメインにチェックしましょう。ストレスやモチベーション低下につながる要因を把握し対処することで、部下のパフォーマンス向上や離職率低下を実現できます。

【問いかけ例】
「職場の人間関係で正直やりにくい部分はある?」
「持ち帰り残業などで睡眠時間を取れていないことはある?」

7.キャリア支援

部下のキャリアプランを把握できれば、上司は希望のキャリアにつながる業務を割り振ったり、配属先を考慮したりできます。部下が「この企業は自分のキャリアを支援してくれる」と実感できれば、エンゲージメントが高まり離職率低下やモチベーションアップにつなげられるでしょう。

【問いかけ例】
「今後はどんなスキルを身に付けたい?」
「どんな仕事であれば業務にやりがいを感じられる?」

8.プライベート

緊張を解いて1on1を進めたりお互いの考え方を知ったりするには、プライベートな話題に触れることも大切です。ただし、メインは「部下の成長促進」であるため、雑談だけにならないよう注意しましょう。また、あまりプライベートに踏み込みすぎないことも重要です。

【問いかけ例】
「休日は何をしているの?」
「最近一番ハマっている趣味はある?」

9.自己評価

部下の自己評価も業務に関わる大切な項目です。例えば、成果を出している部下が自分を過小評価していると、仕事のモチベーション低下につながります。部下が自分自身をどのように感じているか引き出し、上司が客観的な目線で評価することが大切です。

【問いかけ例】
「この間のプロジェクトは成功したと思っているけど、個人的にはどのように考えている?」
「今期の仕事を10段階評価するとしたらどれくらい?理由も教えてもらえる?」

10.人間関係

職場の人間関係は仕事のモチベーションに関わる重要な部分です。心理的安全性が確保されている1on1だからこそ、人間関係の悩みを引き出し、アドバイスや上司としてできる対処を行いましょう。

人間関係について聞く際は、部下が「自分は人間関係に問題があると思われているのでは?」と不安に感じさせない配慮が大切です。

【問いかけ例】
「職場の人とはどんなことを話している?」
「正直、少しやりにくいと感じる人はいる?」

1on1を実施する際に注意すべきこと

1on1は以下の点に注意して実施しましょう。

  • 上司が一方的に話さない
  • 雑談だけで終わらせない
  • 心理的安全性を意識する
  • プライベートなことは無理に聞かない

上司が一方的に話さない

1on1は、双方向のコミュニケーションによって部下の成長を促す場であるため、「上司が一方的に評価や改善策を話し続けること」は避けましょう。信頼関係を構築し、部下が自発的に改善策や考え方を導けるようサポートすることが上司の役割です。

雑談だけで終わらせない

1on1の目的は部下の成長促進であるため、雑談は最低限に留め「業務の目標」「キャリアプラン」などの達成に向けて、部下が取るべきアクションを考えられるよう導きましょう。

心理的安全性を意識する

1on1では、部下が「この場では普段言えない悩みや不満を話せる」という心理的安全性を確信できることが重要です。心理的安全性を確保するには、「相談内容を口外しないと約束する」「相槌を打ったり声のトーンを柔らかくしたりして話しやすい雰囲気を作る」などが効果的です。

プライベートなことは無理に聞かない

人によってはプライベートな部分を話したがらない部下もいます。アイスブレイクとしてプライベートな話題を話すのは大切ですが、部下の反応を見つつ踏み込んでほしくなさそうな話題は避けましょう。

1on1の目的をしっかり理解して臨もう!

今回の記事では、1on1のメリットや実施手順、注意点などを解説しました。

1on1では、双方向のコミュニケーションを取り、上司が部下の成長を促すよう傾聴することが大切です。部下の成長を促すことで仕事へのモチベーションが高まり、企業へのエンゲージメント向上も期待できます。

今回の記事を参考に、組織力強化につながる効果的な1on1を実施してみてください。

内野マナト

「ユーザーニーズを徹底的に満たせる記事を制作する」をモットーに活動しているWebライター。BtoB分野をメインに執筆しており、SEO・マーケティング・転職・CRMなど幅広いジャンルに対応可能。検索ニーズを満たすために必要な「独自性」を盛り込んだコンテンツの制作を心がけている。FP2級保有。X(旧Twitter)アカウント:@uchino_manato

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