エンゲージメントは、直訳すると「契約」「約束」という意味がありますが、人事領域においては、「従業員の会社への愛社精神や思い入れ」といった意味があります。
これまでは「従業員満足度」の向上が企業付加価値の創造には大切だと言われてきました。
しかし、少子高齢化や多様な価値観の許容など、大きな環境変化が起こっている現在は、「エンゲージメント向上」の必要性が増し、注目されるようになってきました。
そこでこの記事では、エンゲージメントとはどういったものなのか、その向上のためにはどのように進めていけば良いのか、なぜ人事課題に必須なのかを事例も交えてご紹介します。
エンゲージメント向上が求められる背景
先行きが不透明な状況の中、企業が成長していくためには、イノベーション人材の確保が絶対条件となっています。
このイノベーション人材は、エンゲージメントが高い企業ほど確保ができています。なぜなら、自らイノベーションを考える発想力やそれを実現するための行動力も、エンゲージメントを高めれば自然と高まるからです。
逆に、エンゲージメントが低い状態では、イノベーション人材の確保ができないのはもちろん、優秀な人材が流出してしまったり、従業員のモチベーションが下がってしまったり、会社に大きなデメリットをもたらす可能性が高いと言われています。
また、少子高齢化や労働人口の減少、グローバル化、市場ニーズや価値観の多様化・複雑化など市場環境が変わり、その環境で働く従業員の価値観も変わりました。
そのため、企業はこれまでの終身雇用や年功序列、画一的な施策といった人事制度から、成果主義、実力主義、個の自律を尊重する働き方に移行せざるを得ない状況になってきています。
私たち人事部門は、このような背景を受けて、エンゲージメント向上に着目した取り組みが必要となっています。
エンゲージメント向上する手法
エンゲージメントを向上する手法をご紹介します。
①企業理念・ミッションを浸透させる
②ワークライフバランスを推進する
③社内コミュニケーションを活性化させる
④従業員の成長をサポートする環境をつくる
⑤エンゲージメントを測定して、PDCAサイクルを回す
①企業理念・ミッションを浸透させる
企業理念やビジョンを浸透させることで、一体感が生まれエンゲージメントが向上します。
②ワークライフバランスを推進する
ワークライフバランスや健康状態が整っていることは不可欠です。
③社内コミュニケ―ショーンを活性化させる
上司・部下のタテの関係だけでなく、異なる職場メンバーとのヨコの関係も円滑にコミュニケーションが取れ、人間関係がうまくいっていること状況は必須事項です。
④従業員の成長をサポートする環境をつくる
従業員の成長をサポートし、理想のキャリアを描けるような環境をつくることでエンゲージメントは向上します。
⑤エンゲージメントを測定して、PDCAサイクルを回す
定期的にサーベイなどによりエンゲージメントを定量化し、従業員の期待度と満足とのギャップが大きいものを課題として取り上げて推進していくことがエンゲージメント向上につながります。
挑戦する機会の種類
エンゲージメント向上を図るために、従業員一人ひとりが理想のキャリアを描け、そのキャリアへ向かって進めるよう挑戦する機会の提供が必要です。
その種類には大きく分けると2種類あります。1つ目は、仕事や時間に対する裁量度を大きくする方法です。具体的には、課題を部門間を横断するプロジェクトとしそのリーダーを担当させたり、フレックスタイム制により自由な時間の使い方をさせたり、ミドルアップダウン経営を重視したりする方法です。
2つ目は、通常と異なる環境で活動させる方法です。具体的には、社内FA制で従業員自らが描いたキャリアに進めたり、社内副業や越境学習により新しい気づきや経験をさせ、キャリアを広げたりする方法です。
また、この機会の提供と合わせて、従業員が気軽に利用できるような職場体制の構築も必要です。具体的には、多能工化・標準化を推進し、職場で一番パフォーマンスの良い従業員が一定期間、職場を離れても問題がない体制まで持っていくのが理想です。
エンゲージメント向上の成果
エンゲージメントが向上すると、従業員一人ひとりが主体性をもって日々の行動を振り返り改善するようになります。そして、より良い働き方が習慣づき、働きがいが生まれ、モチベーションが高まります。その結果、職場の雰囲気が良くなり、離職率の低い働きやすい職場となり、魅力のある職場に変わります。
そんな魅力のある職場が顧客満足につながり、企業業績向上にまでつながります。理想的な正のスパイラルが回っているイメージです。
働きがいが感じられる職場で自律的に働くことが、会社にとっても従業員にとっても幸せにつながるのだと思います。
これからますます少子高齢化が進み、労働者人口が減少し、新たな人材確保が困難な状況になることは明らかです。
そのため、私たち人事部門は自社のエンゲージメントを定量化し、向上させていくことが必須課題だと言えます。
企業業績と従業員の幸せが両立する企業を目指して、私たち人事部門が伴走しましょう!