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越境サミット2021「越境と組織変革」レポート

9/14に「越境サミット2021 ~越境の起点・伴走・評価、そして組織変革への跳躍~」と題して、越境学習について研究されてきたパネリストによってその可能性を探るオンラインイベントが行われました。
今回はイベント第2部の「越境と組織変革」について、弊社加藤も含めた4名で行われたディスカッションの模様をお届けします。

講演者

モデレーター
エッセンス株式会社 越境研修事業部部長 島崎 由真氏
 
パネリスト
株式会社ニフコ 商品開発センター 技術主幹 根津 幹夫氏
法政大学大学院政策創造研究科 教授 石山恒貴氏
株式会社エンファクトリー 代表取締役社長 加藤 健太
 
 

 

越境学習モデル企業:ニフコさまの取り組みと越境時に生まれた5つの葛藤

 
島崎様:最初に組織変革というテーマに相応しいモデル企業として、ニフコさんからお話をしていただければと思います。ニフコさんでは、エッセンス社の他社留学やエンファクトリーさんの複業留学、そして同社のチームランサーを活用した組織変革にチャレンジをされています。
 
根津様:株式会社ニフコは売り上げが2560億円、従業員数1万1千人程の独立系の自動車部品メーカーです。
越境学習を始めた背景について、順を追って説明します。
 
弊社の強みは顧客から言われた困りごとを解決して具現化することです。一方で、弱みは顧客から言われないことに対しての対応は非常に苦手だという背景があります。
よって、長期的な目線で会社のことを考えたときに、いざ顧客からの依頼がなくなった時にどうするのかといった問題が常につきまといます。自ら仕事を作る能力が社員には必要で、潜在ニーズの企画創出ができるように、力を入れてやっていきたいと考えてきました。
しかし、社員の仕事への意識ではやらされ感が強くて、他責の傾向が強い状態でした。
 
そのため、「自分で考えて自ら行動する・まずやってみる」のマインドを持つ社員を増やすために意識の変化と自走力をつけさせたいと考えたわけです。ここから「越境×気づき」を軸としたプログラムを始めました。私のこの活動は今年で6年目です。
2016年の企画創出の仕組みから始めまして、今年は未来を創造するビジョン力について取り組んでおります。
 
さて、人材育成プログラムの一環として私が越境留学を初めて経験したのは、2019年の春ごろです。当時49歳の私は、「他社留学」という越境学習に出会いました。プログラムに取り入れられるかどうか、検討したいなと思いましたがどのようなものかわからず、まず自分から体験してみたのがきっかけです。
 
その際に、自らの強みが最も発揮できない、ベンチャー企業に行こうと思ったのが「葛藤」の始まりです。
意識と思考の変化は「葛藤」から、と私は考えておりますが、大きな葛藤が5つありました。それを簡単に説明します。
 
 
越境で起こる5つの葛藤
1.内省
越境が始まる前の1ヶ月前に自分のやりたいことは何か?と、たくさん考えました。
2.あがく
越境の6ヶ月間は何をやっていいのか、どうやって貢献するのか?と、とても悩みました。
3.再適応
越境後の3ヶ月間には、意識と思考の変化はあったけれど、これからどうする?という気持ちが3ヶ月ぐらい続きました。
4.焦り
そもそも社外で通用する自分の強みって何だろう?という気持ちから、1年間でいろんなものを学びまくりました。
5.再び内省
会社の肩書を取ったら、自分って誰?Who are you? と、たくさん考えて、いろんな今までの点をつなげて、
自分の強みを最大限にするためにはどうしたらいいか試行錯誤しました。
 
 
 

組織変革のためには小さな越境体験を共有し、身近な人へ影響を与えていく

 
島崎様:越境学習の取り組みが組織変革にも繋がっていくのか、事前に展望が見えていたのでしょうか?
 
根津様:よく考えて導入したわけではないです。どれを考えて比べてみても結論は出ないので、自分で試して良ければ導入しようと考えていました。
いろんなプログラムを越境のハードル別に色々なプランニングをしてるのですが、まずは全部自分で体験していいと思ったものを、講師の人とカスタムで作り上げています。
 
島崎様:これはうまくいった、いかなかったかの基準って、どこに置かれていますか?
 
根津様:例えば、去年は「他社留学」に公募制で6名が越境学習を行っています。
「自分を変えたい、変えて成長したい」と思っている人というただ一つの条件をつけて、社内公募をかけました。
組織を変えようとか、会社を変えようなんて誰一人も思ってないんです。
ただ、越境学習をしていくと、いろんな人や会社と触れ合うことによって、組織や会社も良くしていきたいなという気持ちがどんどん上がってくるんです。
 
並行して月一回のワークショップを自社内で行っていくと、その変化が実感できました。このように、
越境学習では少しずつ成長の過程が見えてくるので、すぐに成功した、成功してないと判断するのではなく、軌道修正しながら色々なプログラムを変えていく方が適切かもしれないです。
 
島崎様:ご自身の体験を同じ部門の方々に取り組んでもらう上で、コミュニケーションのとり方に気をつけたことはありますか?
 
根津様:基本的にはあまり多くを話さないようにしています。
自分でも半年間プログラム参加して、どこでどういう波が来て、どういう葛藤が起きて、どういう成長を及ぼすか、大体自分で体験してるので、6人に対しても全く同じタイミングで同じことが起きるのが肌で分かってきたというのもありました。
ただ、ここぞというときに越境学習を体験した人が言うと、言葉の重みや説得力も感じられたのではないかと思います。
 
また、一人ではなく6名で同時期にやってるからこそ学び合い、勝手にオンライン飲み会などを留学生同士でやってくれたんです。その効果も非常に大きかったのではないかと思います。
島崎様:まさに同じ傷を負いながら、互いに慰め合うことができるということですよね。
根津様:私自身が一人で留学していたので、大変さとか辛さとを、独りぼっちで感じていました。
それをうまいこと次の世代には解消してあげたいなとは思います。
 
島崎様:石山先生にお伺いしたいんですけれども、一人の方が越境して、それを組織の中に伝播させていくというのはハードルが高いかと思うんですが、その時に越境の価値を広めていくために、どこから始めるべきでしょうか?
 
石山先生:誰でも普通に出来る小さな越境でも、体験することが大切かと思います。
例えばPTAを越境先と考えてみるとか、近所のコワーキングスペースに行ってイベントをやることを越境と考えてみるとか、そういうことからでもいいのです。そして、その取り組みをみんなで話してみて、あの人もできるんだったら私もできるかなとなることが、実は一番強力だと思うんです。
最近は、企業でも副業をしている人がその自分の副業体験を話すことがありますが、身近な人からの影響はすごく大きいと思います。
 
根津様:場の提供をまずしてあげること、でもあれこれ言わないこと。提供した場をどう活かすかは本人次第だと思うんですけども、場を提供してあげながら、自走をフォローすることはすごく大切だなって思います。
 
 

 

越境の価値を社内へ浸透させていくため、共有の場はハードルを低く

 
島崎様:越境学習の取り組みを始めるには社内の理解が必須かと思いますが、社内の関係者や経営者に説明をして、納得してもらうために苦労したことはありますか?
 
根津様:私は技術部門にいるため、全てトライアルでの活動として始めてます。
おそらくHR部門であれば色々考えて、稟議書を通し、経営層に説明するフローがあると思いますが、私がそれをやる立場でもないですし、それをやると色々言われてしまう。
正面突破は難しいので、トライアルで進めながら成功事例を作り、外堀を埋めるイメージで実行していきました。事例についてニュースリリースやサステナビリティレポート・株主通信(https://pdf.irpocket.com/C7988/xqEb/cWjx/OL7U.pdf )で紹介をしていき、面白い取り組みをしているねと周りに言われて、本人たちも参加してみようかな、と外から囲い込めないかなと考えながら活動してるのは確かです。
 
島崎様:実際にサステナビリティレポートや、株主通信に載せようかという提案は他部署から来た話だと思うんですけども、理解者が広がっていく感覚は感じられましたか?
 
根津様:みんなの理解は無理ですが、たった一人でもその部署のコアな人からの理解を得られれば、いろんな人の仲間の絆が広がっていくと実感しました。本当に助けられています。
この経験からも、みんなに広げようとは考えず、少しずつ仲間を増やしながら、その周りの人に少しずつ広めていけないかなと思っています。
 
そのために加藤さんの会社(エンファクトリー)で提供しているチームランサー(社内SNSコミュニティ)でオープネスに示しているのですが、何気なく見てもらうだけでも変化が起こっていると感じていますね。
 
島崎様:越境の価値自体をさらにラーニングコミュニティで組織全体に伝播させていこうとしても、ハードルって意外と高いように思うのですが、他社ではどのように考える方が多いでしょうか?
 
加藤:大企業では、個人の殻を破るのがすごく苦手な人が大半です。
自分の感情とか思い・考えを発信や共有することがすごく苦手で、戸惑われていますね。そんなことするんですか、みたいな反応から始まって。
 
ニフコの根津さんのところも、そのようなことが最初はあったんじゃないかなと思います。
社内SNSが盛り上がらないという悩みはよくある話で、そこから打破するのがいつもスタート地点。
 
島崎様:そこから打破するために、どのように働きかけていますか?
 
加藤:スモールスタートが鉄則かと感じています。いきなり広げるとうまくいかないんです。
思いを共有することに興味がある・ハードルが低いと感じている人たちから入ってもらうことがまずひとつです。
 
あとは場のハードルをものすごく下げることです。複業の共有会を10年前からやってるんですけど、その場のハードルを下げた方がみんながいろんな思ったことを話すためにはものすごく効くなと感じました。
 
島崎様:石山先生、越境を推奨していくような場作りのために、越境した人自身が発信するポイントは何かあるでしょうか?
 
石山先生:まず理想を言うと、会社丸ごとコミュニティ化できてしまえば一番いいわけで。
エンファクトリーさんって、会社丸ごとコミュニティ化できちゃったわけです。
 
会社がコミュニティのようになっていて、その中では共有のハードルも下がり、みんながこんなこと経験してきたよと普通に言い合って、みんな面白いねってなる状態が理想だと思います。その背景には、トップ自身、つまり加藤さんがコミュニティは大事だよねと言ったことが大きく、時間をかけて今の状態へ醸成されたわけです。
 
でもこれを大企業でやれるかって言うと、なかなか難しいですよね。という話があって最初はスモールスタートで場のハードル下げて、関心がある人から集まり、ちょっと面白そうだぞという雰囲気が広がるというやり方なのかなと思います。
 
島崎様:オープンにするところはオープンにするけれども、小さく始めて心理的な安全性を担保し、何でも言っていいんだよっていう空気を作るのが重要ですね。
 
 
 

越境をきっかけに、自己開示のできる自律した人を増やしていく

 
島崎様:根津さん、今後はどうやって越境学習の取り組みを広げていきたいと思われていますか?
 
根津様:社内ではコアなメンバーを少しずつ増やしていくしかないかなと考えています。同時に、社外に対してはこれからもいろいろプロモーションかけて行きますし、両方を攻めていきたいなと思います。
 
社内に関しては引き続きチームランサーを活用していきます。「他社留学」の週次レポート、月次レポートを全てオープンにしてるので、社員はそこで見て何が起こってるかを知ってもらいます。
 
島崎様:加藤さんは各社がどのように越境の流れが広がっていったらいいなと思われていますか?
 
加藤:越境のサービスは、きっかけでしかないのかなと個人的には思ってます。これからのキャリア自律と言われるような、一人一人がサラリーマンのマインドを持つのではなく、自律していく流れになっていくのではと。
 
大企業ではなかなか上位下達の文化で、結構難しいところもあると思うんですけども、もともとは優秀な人達ばかりです。そういう人たちが本当に自律して、自分の判断でどんどんどんどん動けるようになれば、会社、さらには日本自体が復活していくんじゃないかなと。時間はかかるかもしれませんが、僕自身はそこに少しでも貢献できるようになれたらと思います。
 
越境って壁を越えることなので、いろんなレイヤーの特別な人から普通の人まで、いろんな壁の越え方があるかなと思ってまして、そこに対応したいろんなアプローチがあるはずです。
そして、越境サービスにもそれぞれ特色があります。それぞれの目的に応じたサービスの活用をきっかけにして、ゆくゆくは事業者がいらなくなるくらい個々人が自律して動いていけばいいなと思っています。
 
島崎様:石山先生から見て、根津さんの変化をどういうふうに捉えていますか?
 
石山先生:大企業の人で、越境して得るものが大きい人は、自分を語らない、自分を表現するのが苦手な人です。
大企業の中には、自分は置いといて自分以外のことをスマートにやるスタンスのタイプの方もいるかもしれません。
 
でもキャリア自律は、自分のやりたいことや大事にしてる価値観を自分で何だろうと考えて、それを自分で表現して、自分で他の人に語るってことですよね。
根津さんを僭越ながら拝見してますと、とても自分を語るようになって、なおかついろんな人とつながるようになっていて。大企業で活躍されている方が自分について語って、人とつながることに目覚めた、という感じがします
 
根津様:仰る通りですね。
自己開示しないと相手も語らないということも途中から分かったので、どんどん発信していこうと思いました。
 
島崎様:私は数年前に石山先生と出会って、越境の価値というのに気づかされました。私のようにこれまで身につけたものが実はバイアスがかかったということに気づき、それをお互いに話し合って、今後こういうふうに変われるかもねっていうことを前向きに語れるような人たちが今後増えていければ、日本も変わっていくのかなと思います。
 
 
 

まとめ

 
本イベントでは全編を通して、人材開発手法として注目される「越境学習」についての可能性や活用方法が2時間にわたり語られました。
社員のキャリア開発に悩まれている人事担当者は、越境学習のメリットを理解したうえで、どのように社内に取り入れられるか検討してみてはいかがでしょうか。また自身のキャリアに悩む方は、石山先生が語られた小さな越境の事例をもとに、どんなチャレンジができるか考えてみてもよいかもしれません。
 

エンファクトリー紹介

 
エンファクトリーは2011年にオールアバウトから分社し、「専業禁止!」という人材ポリシーを掲げながら大きく3つの事業(ショッピング事業、専門家マッチング事業、人材・組織開発支援事業)を行っている会社です。
 
およそ6割のメンバーは複業経験があり、ある種の越境学習・越境体験として、その取り組みはオープンにしております。オープンにすることで身近な人の影響を受け、みんなが学びあう組織になっているという特色があります。
 
この知見をもとに越境学習サービス「複業留学」を提供開始し、約60名の大手企業社員の複業留学を支援してきました。留学期間中はTeamlancerエンタープライズも併用し、複数人が越境先の学びを共有する「ピアラーニング」の仕組みを取り入れて、越境学習での学びを組織に還元しています。
 
Teamlancerエンタープライズは、興味・関心あるテーマで集まり、メンバーと交流しながら活動できる「チーム機能」、ミッションに共感した案件・プロジェクトのゴールを目指ざす「プロジェクト機能」、情報共有・告知・仕事相談などを簡単投稿できる「タイムライン機能」を通して人と情報の流れを生み出し、自律的に学び合う(ピアラーニング)を促進するプラットフォームです。株式会社ニフコ様においても、小さなところから会社の内外に越境していくプロセスでTeamlancerエンタープライズを活用していただいております。
 
越境型研修サービス「複業留学」:https://teamlancer.jp/lp/fukugyo_ryugaku
自律的人材を育成し組織を活性化するプラットフォーム「Teamlancerエンタープライズ」:https://teamlancer.jp/lp/organization_activity
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