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石山先生ご登壇「社員のプロアクティビティを引き出す仕組みとは? ~人を育て組織を強くする「越境学習」の始め方・広げ方~」開催レポート

本記事は、2022年5月25日(水)に行われたオンラインセミナー「社員のプロアクティビティを引き出す仕組みとは? ~人を育て組織を強くする「越境学習」の始め方・広げ方~」の開催レポートです。

【プログラム内容】
 - 越境学習は、選ばれし者のプログラムではない
 - 組織への波及方法(エンファクトリーの事例)
 - トークセッション:プロアクティビティを引き出すには?
 - 越境学習関連サービス紹介
【こんな方におすすめです】
 - 経営者・経営幹部の方
 - 人事の責任者、担当の方
 - 部署のマネージャーの方
 - 新規事業・部署横断プロジェクトに携わる方
 - インナーコミュニケーション担当の方
【スピーカー】
 石山恒貴氏
 法政大学大学院政策創造研究科教授

新たな事業を生み出す人材、あるいは自律型人材育成として、注目を集める越境学習。 変化が激しく、先行きがますます不透明な時代に、企業内で「冒険できる人材」を育てていくことは喫緊の課題です。しかしながら、現状越境学習の機会は一部の従業員だけに限られており、多くの従業員は変わらないままになっています。 本ウェビナーでは、『越境学習入門』の著者であり、越境学習の第一人者の法政大学大学院政策創造研究科 教授 石山恒貴さんをお招きし、越境学習の始め方、そして組織への波及方法について、対話中心ディスカッション形式でお話しいただきました。

▼セミナーグラレコ

※どんな内容かパッと知りたい方はこちらのグラレコで概要をご覧ください。

越境学習は、選ばれし者のプログラムではない

■越境学習とは?

越境学習とは何かの境界を超えて学ぶことであり、自分の心の中のホームとアウェイの境界を行き来することで学びが得られるものだと、石山さんは定義しています。 ホーム(自らが準拠する状況) …よく知った人がいて社内用語も通じて居心地は良いが、刺激がない場所 アウェイ(その他の状況) …見知らぬ人がいて社内用語は通じず居心地は悪いが、刺激がある場所 アウェイには別の企業に行くことだけではなく、PTAに参加することなども含まれます。 ホームのような上下関係はなく、一人一人がリーダーシップを発揮する必要がある場所がアウェイです。社内用語が通じないため異質性があり、伝えるための葛藤もあります。また、予定調和ではなく一から作ることが多いので、抽象度が高くもやもやすることもあります。そのような試行錯誤する経験から、学びが生まれます。まるで冒険です。 経験学習は専門性の熟達を目指すものですが、越境学習は意図的に専門性の熟達を止め、別の場所に行き、固定概念を打破するものです。簡単に言うと、深めるのではなく、別のことをして原点に立ち返る機会です。 越境学習を通して、イノベーターに必要な5つのスキルを得られると言われています。 これらのスキルはホームでは得られません。 ・関連づけの力 ・質問力 ・観察力 ・ネットワークの力 ・実験力 出所)クレイトン・クリステンセン他著・櫻井祐子訳(2009)『イノベーションのDNA』翔泳社

■越境学習のステップ

ルーブリックの次元を参考にすると、越境学習を通じた学びは次のように整理できます。

[caption id="attachment_3671" align="aligncenter" width="640"] 「ルーブリックの活用マニュアル」P17をもとに作成( https://co-hr-innovation.jp/wpcms/wp-content/uploads/2021/06/rubric_manual.pdf)[/caption]

驚いたのは、越境学習者は越境中よりも越境後に衝撃を受けるということです。具体的には、越境中に刺激を得てホームに戻り、還元したいと思い声を上げるも、面倒な人だと思われてしまい挫折してしまうことです。ただ声を上げるだけではなく、戦略が必要なことを知り、改めて学びます。
また越境を経て、自分の価値観だと思っていたものが実は会社の価値観だったことに気づくこともあります。客観的に俯瞰することで、自分と会社の価値観の引き剥がしができるようになります。

■越境学習の始め方

越境学習の場は会社に限らず、身近にもさまざまあります。

大事なのは、10割バッターではなく1割バッターの気持ちで臨むこと。「なにかを得なければ!」という学習効率を求めるのではなく、身の回りにたくさんある越境の場に行き、ちょっとでもいいことがあれば振り返って学びにしようという気持ちでいることです。一方で、ただ参加するだけではなく越境学習だと思って参加し、振り返らないとないと学びは得られにくいです。
また、学びを大きくするために組織の中に越境学習をした人たちのネットワークを作ること、そして伴走者がいることも重要です。上司は関心は持ちつつも、関与は慎重に行うことが大事です。アドバイスはほどほどにして本人に任せましょう。

■まとめ

越境学習は冒険ですが、特別な人のためにあるのではなくみんなが越境学習者の卵です。苦い経験や葛藤と丁寧に向き合うことで、振り返ると学びが出てきます。
アウェイな環境に行くことで多様な価値観に触れて、多元的でなりたい自分を考える機会になります。
冒険のドキドキ、ワクワクを感じながら、自らの”学びたい”を叶えられるものなのです。

■教えて石山先生!Q&A

Q. 社内副業だと越境にはなりませんか?
 A. まさに越境です。普段の状況、環境ではないので違和感や葛藤が生まれると思います。
Q. ホームからアウェイに行き、そのままホームに戻らない場合は越境学習になりませんか?
 A. ホームが1つになる状況は越境学習とは言いにくいです。転職した後もそこだけでなく他のコミュニティにも属していると越境学習になります。
Q. 越境ルーブリックの次元のなかで段差が大きいところ、脱落が多いところはありますか?
 A. 組織として何かを学んでくるスタンスだと脱落してしまうことがあります。自分自身の変化に繋げられるかどうか、伴走者のコーチングで気づくよう促せるといいですね。
Q. キャリアコンサルタントは人事、伴走者でいうとどのような立ち位置ですか?
 A. 壁打ちの役割をし、越境学習者の学びを深める役割です。人事として全社的に越境学習を広められるとさらに良いですね。
Q. 成果を求めないけれどもルーブリックの次元で成果を見ています。どういうことでしょうか?
 A. 成果の意味が違います。利益を求めるのではなく、本人に起きる変化から社内に新しい考え方を持ってくるという定量ではない成果があります。
Q. 振り返りで大事なポイントはありますか?
 A. 無意識に前提としていたことは何かを客観的に見てみることが大事です。ものの見方を増やして行けるのが越境学習のいいところです。

越境学習を促進するために行っているエンファクトリーの”しかけ”

エンファクトリーの事例は、『越境学習入門』の第4章で紹介されています。
越境学習を促進するために「専業禁止!」を掲げているエンファクトリーで行っている取り組みをモデレーターの松岡から4つご紹介しました。
①共有会…本業以外の複業などの越境活動の定期的な共有
②月次レポート…月次レポートでそれぞれの活動を共有(コロナ禍に開始)
③ナレッジシェア…普段の気づき・学びや本業での気づき・学びを共有
④資格取得…資格取得の宣言をし、応援しあう場所。(宣言すると補助が出ます)
入社して1年ほど経ったメンバーがみんなの複業活動を見て複業を始めました。
一歩踏み出すきっかけになっているのではないかと思います。

トークセッション:プロアクティビティを引き出すには?

先ほどお話いただいた石山さんとエンファクトリー代表取締役社長 CEOの加藤を交えてトークセッションを行いました。ここからは対話形式でお届けします。
<越境活動を活かす組織としてなぜ、自己開示や発信が大事なの?>
加藤)自己開示って苦手な人多いですよね。
石山)エンファクトリーさんだとイベントをよくやっていますよね。私が気になったのは、個人として参加しているはずなのに、大企業からの参加者は自分の話をしないケースが多いこと。越境学習は「自分」が大事になるけど、「会社員としての自分」になっているなと感じます。
加藤)エンファクトリーでも、中途入社や新しく入ってきたメンバーは最初戸惑っていますね…。私は個人として自己開示や発信することってとても大事だと思うんですけど石山さんはどう考えてらっしゃいますか?
石山)今は個人個人のアイデアが価値を持つ時代で自分が何をやりたいかが大事になってくるので、自己開示や発信はデフォルトになっていると思います。今までは長期雇用が前提であることもあり、社内イベントを通して知る機会が用意されていたので発信する必要がなかったのかも。
加藤)言われたことをすればOKだった時代から、一人一人が自営業者、いわば”株式会社じぶん”に変わりましたもんね。自分というタレントを発信し、広報する必要があります。
石山)その通りだと思います。「〇〇会社の〇〇さん」から、「〇〇ができる〇〇さん」のように、できることと人ベースになっています。でも自己開示っていきなりできないですよね。私も最初は名刺交換から会話を探っていたが、越境を繰り返すことではじめて会う人とも会話をできるようになってきました。
加藤)共有会や月次レポートで社内で自分の活動をシェアをしたときに起きたのは、「じゃあこれやってよ」という複業の受託でした。(笑)
松岡)越境のシーンで自己開示していくことで慣れていく、いいことがあることに気づくことはトライしたらこそ言えることですね。まだ踏み出せていない人に、本人の意識以外で働きかけられるものはありますか?
<共有!自己開示!と言っても、いやいや…ハードルが高いデス…。>
石山)アウェイの場では自己開示がプログラムに組み込まれていることが多い気がします。茅ヶ崎にある「チガラボ」というコワーキングスペースのコミュニティでは、ワークショップをすると、その半分くらいの時間が自己紹介で終わることもしばしばあります。(笑)意外に話せちゃうんです。アウェイの仕組みに乗って自己開示ではなく、自己紹介をするという気持ちで参加してみるといいかもしれないです。
加藤)僕の場合、少しお酒を入れつつくだけた感じで振る舞うことで、みんなもオープンになれる場が作れるので、ハードルを下げる雰囲気づくりを意識しています。一方で、何を学んだの?」と真面目な話も聞いて、うまく使い分けています。
石山)たとえば、鎧を着ているような堅い人がいたらどうするんですか?
加藤)巻き込みますね。大企業から3人人材を受け入れたことがありましたが、やはり堅い。社内外問わず、いろいろなイベントに参加いただきました。結果的に自己開示できるようになりました。印象に残っているのは、意味のない飲み会や意味のない人に会うことに価値があったと言っていたことです。
石山)まさに1割バッターですね。越境したい気持ちはあるけど仮面をつけている人を場に連れていくだけではダメだったと思います。巻き込みながらとにかくダラダラ話すのがよかったのでは。
加藤)そうだと思います。気を遣わないで巻き込んでいく方がお互い楽だなと思いました。
石山)エスノグラフィという授業があるんですが、30分間だらだら食卓を観察するようなワークがあるんです。ビジネスマンだと耐えられない人がいて、怒り出すこともあります。しかし、ダラダラ見ることで大事なものが見えてくるものなんです。効率主義が主流のなかでダラダラするのが越境学習だと伝えても、「ROIは何ですか?」と聞かれることがしばしばあります。
加藤)私も最近、まさにその質問を受けました。(笑)
石山)現場より、経営者の方が共感してくれたりしますよね。無駄なもの、ダラダラすることの大事さを知っている。それが越境学習に大事な要素なのですが、言えば言うほど理解してもらえないんですよ。(笑)
加藤)効率主義で削ぎ落とされている部分が大切なんですけどね…。
松岡)最近、「対話が大事だ」と言う企業も増えていますよね。答えを求めて効率を求めた結果、新しいアイデアが生まれなくなっている。越境学習はそのことに気づく一つの答えなのかなと思いました。
石山)「一つの答えを求めなければ」と思ってしまう方がけっこういる。でも、なんの方向性も示さずにダラダラ話す方が深い振り返りができることを知っていきます。慣れてくるとただダラダラ話せてよかったとなってくるんです。もちろん、テーマを決めて話すことも大事なので、使い分けが大事ですね。

<改めて、組織に越境している人が増えるとどんないいことが起きる?>
加藤)まじめな話をすると、越境している人が増えると「誰が何に詳しいか」が共有されるので、社内外問わず頼れるのはいいことだと思います。加えて、なんとなく会社の雰囲気が寛容になる気がします。いろいろな人がいることが当たり前になるからかもしれません。
石山)加藤さんのお話に共感しています。アカデミックに言うと、前者が組織の中のトランザクティブメモリーが増えて、後者は個人のイントラパーソナルダイバーシティが増えています。越境のいいところって、会社の中だけでなく外にも拡張していることなんですよね。例えば、広島県の福山市は風光明媚なスポットがあることから、「映像の街」にしたいと考えていました。ただ、福山市だけだと映像クリエイターとの繋がりがないんです。しかし、以前福山市が副業で民間の人を受け入れた際に、首都圏の映像関係の職種の方がいました。その人経由で渋谷の映像クリエイター達とつながり、今ではそれらの渋谷のクリエイター達が福山に足繁く通い、中には年間で半年間わーケーションとして二地域居住し、釣りをして楽しんでいる、なんてこともあります。
寛容になった話だと、ただ推進していくと対立が起きてしまいますが、みんなが越境することで認め合えるようになり、組織が寛容になり楽しくなるというメカニズムがあります。
加藤)本当にそうです。ほかにいいなと思ったのは、一人一人が複業でお金をもらっていたりするので、経営者目線で考えることもできていることです。
松岡)オーナーシップを持てているということですね。お話は尽きませんが、ここまでにしたいと思います、ありがとうございました!

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身の回りにも越境場所があるというのは大きな発見でした。
まずは小さな一歩踏み出して振り返りを行ってみようと勇気をもらえた時間でした。
執筆ライター:さーや(@sayaaan1582)さん

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