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【イベントレポート】企業と個人の関係性は「相利共生」へ 〜 越境経験で育成される従業員の自律性と、そこから組織の風土改革へ繋げる処方箋とは 〜

ウィズコロナ、アフターコロナの時代になり、企業と個人の関係性は、大きく変わりつつあります。企業は、雇用に伴うリスクを抑えながら、戦略的な人事を、個人は企業に頼らず自分自身で、自己開発していくことが求められています。

企業と個人のこれからの関係性を「相利共生」と捉え、企業経営/人事ご担当者、人材育成、キャリア開発支援に携わっている方を対象に、本イベントを企画・実施いたしました。
相利共生のために、企業がもつべき文化とは? 個人の姿勢は? などイベントのようすをダイジェストでお届けいたします。

【登壇者】

石山恒貴氏
法政大学大学院 政策創造研究科教授 
一橋大学社会学部卒業、産業能率大学大学院経営情報学研究科修士課程修了、法政大学大学院政策創造研究科博士後期課程修了、博士(政策学)。一橋大学卒業後、NEC、GE、米系ライフサイエンス会社を経て、現職。越境的学習、キャリア形成、人的資源管理等が研究領域。日本労務学会理事、人材育成学会常任理事、フリーランス協会アドバイザリーボード、早稲田大学・大学総合研究センター招聘研究員、一般社団法人トライセクター顧問

主な著書:『越境的学習のメカニズム』福村出版 2018年、『パラレルキャリアを始めよう!』ダイヤモンド社 2015年、『会社人生を後悔しない40代からの仕事術』(パーソル総研と共著)ダイヤモンド社 2018年

越境のニーズが高まる背景

法政大学大学院で、越境学習やミドルシニアの方の人材育成、人事施策、キャリアの研究をしている石山氏。
コロナによって、社会の変化が加速。不確実性が高く、変化の大きいこれからの時代には、いろんな人と働きながら、変化に対応していく、学び続けていく、生涯学習が大切だと言います。 

そんな学びの一つとして、越境が注目される背景として以下を挙げています。

・激しい変化の時代に、自社内の学びだけでは通用しない
・働き方改革の一環として、兼業・副業が注目を集めるようになった(ただし、越境≠副業)
・人生100年時代になり、生涯学習がより重要になった
・会社としてはイノベーション人材を増やしたい
・プロジェクト単位での働き方へ

ニーズが高まる越境。どのように向き合っていけばいいのでしょうか。

 

「分かったつもり」が危険。 越境の効果と必要性

 

一般的に越境(学習)は、企業の中から外に学びに行くこととされていますが、「自分の心の中のホームとアウェイを行ったり来たりすることが越境」だと、石山氏は話します。

ホームは、居心地がいいが、刺激がない場所。アウェイは、居心地が悪く、刺激がある場所とのこと。
人事異動や出向は、次第に慣れていき、そこがホームになるという点で、越境ではなく”移行”なのだそうです。

また、越境をするメリットとして、アウェイに身を置くことで「分かったつもり」が成立しないことによる気づきを挙げています。

本来、人はいろいろな価値観をもっており、本当の意味では分かり合えないのですが、(ホームの人同士だと)分かったつもりになってしまうんです。分かり合えないと認識しながら、異質な人と分かり合えるように接していく必要があります。越境すると、そのことを思い出させてくれるのです。(石山氏)
 

たしかに居心地のいいホームにおけるツーカーの仲は、代えがたく必要な存在ですが、その関係性に閉ざしてしまうと、気づきや学びは逓減していくのかもしれません。

暗黙の前提が横たわっていることに気がつけるのも、越境の大きなメリットですね。

続いて企業と越境の関係の話題に移ります。

 

越境を認める企業文化とは?

 

石山氏は、越境におけるよくある問題点として以下を挙げています。

・越境の最初の一歩をどう踏み出していいか分からない
・越境する人は迫害される
・風化

とくに、2つ目の「迫害」について、アウトドアウェアブランドのパタゴニアの例をもとに、従業員の越境を実現するためには、社員の自律性を信じ柔軟に動いてもらう風土こそが大事だと言います。

コロナ禍の在宅勤務で、部下への過剰な干渉が起こってしまうような社員との信頼関係がない企業では、大人の学びの実現は難しいのではないかと鋭いご指摘が。
また、一方で「(日本の場合)従業員が、企業に頼りすぎている」とお話がありました。企業だけでなく、個人の企業への向き合い方にも課題がありそうです。

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続く登壇者は、富士通の社員として働きながら、自ら社団法人を立ち上げるなどパラレルに活動する高嶋さんです。

 

【登壇者】

高嶋大介氏

富士通株式会社 コーポレートコミュニケーション統括部

一般社団法人 INTO THE FABRIC 代表理事大学卒業後、大手ゼネコンにて現場管理や設計に従事。2005年富士通入社。ワークプレイスやショールームデザインを経て企業・自治体の働き方や将来ビジョン作りのデザインコンサルティングを行う。デザイン思考と出会い人生が分かり、現在では組織戦略の立案、人材育成などに従事。「社会課題をデザインとビジネスの力で解決する」をモットーに活動中。

2017年に複業の会社公認を受けパラレルで活動を始め「働き人をゆるくつなぐ」場創りを行う。サウナと散歩好き。

 外の人と接点をもつことで生まれた変化

 

5年くらい前まで、会社の中で言われたことをやることが、仕事だと思っていました。と話す高嶋さん。今考えると、それはまさに思考停止。ある意味では、楽だったそうです。そんな高嶋さんの変わるきっかけは、仕事の一環で、毎日違う人と会う機会をもったこと。多くの人と話すことで、自分の当たり前が、当たり前ではないことに、気づけたそうです。
前述した石山氏が挙げる
越境のメリットをまさに体感されています。

それから高嶋さんは、自分が好きで楽しいと思うことをやりはじめ、さらに人脈やお仕事の幅も広がっていったのだそうです。

「働き方改革」で立ち止まり、選んだ複業の道

その後、働き方改革で、労働時間が限られ、やりたいことをやりきれない状況になり、会社ではできないことが増えていきます。

 「多様な人と出会うことで、自分が変わった」という原体験と

・富士通という看板がなくても通用するのか試してみたい

・会社の中で学べないスキルを身につけたい
・リストラもあるかもしれなから、備えておきたい
・動けるうちにチャレンジしておきたい
という想いから独立か複業で迷ったそう。

 当時、副業規定がなかったので、人事に相談へ。人事と一緒に考え、複業を実践することを決意。
今では、高嶋さんの事例が制度のベースになっているそうです。

 

複業を通じて、企業と対等な関係へ

大手企業に勤め、前例のない複業を3年間続けてきた高嶋さんにとって「複業は、やらないことがリスク」と話します。

そんな複業のメリットは
・ 生活の基盤が安定しているのでチャレンジ &失敗ができる
・視野が広がる、視座が上がる、物の考え方が変わる
・チャレンジした新しい領域が本業に活かされる
・自分が動かないと何も始まらないという意識がついた
・ 企業の経営者と会いやすくなる
・ 会社に依存しなくなる
とのこと。

 本業に活かされるという点については、「複業をして、何かすぐに本業に反映されるわけではないけれど、自分の中にナレッジがたまり、じわじわと滲み出てくる」とのこと。
本業と複業を行ったり来たりする、まさに「越境」的な活動が、個人の成長につながると伝わるお話でした。
さらに、「もし今何かが起こった時に会社にすがるのではなく、法人があることで生活の不安が減り、精神的に安定する」と、自律した個人として企業と対等であるということ、企業と個人の相利共生を体現されています。

 最後に、企業と個人の「相利共生」を目指すエンファクトリーの取り組みのご紹介です。

 

【登壇者】

藤生朋子

株式会社エンファクトリー ライフデザインユニット
オールアバウト在籍中、Webデザイナーとして新規事業部に携わる。現職のエンファクトリーでは、パラレルワーカー・フリーランスのチーム支援プラットフォーム『Teamlancer』を立ち上げ。現在では2011年の創業以来「専業禁止!!」を掲げるエンファクトリーの複業実績・ノウハウを活かし、人材育成・複業の支援事業を行う。群馬県桐生市の特産物ブランディング支援や、働き方を支援するイベントプロボノ活動など、これまでさまざまな複業・幅業活動を行う。

これからの企業と個人の関係性

藤生:不確実性が高まる中で、企業も個人も求められているものが変わりつつあります。

個人の方の活躍が増え、状況に応じて柔軟に働く「越境力」が試されていく時代です。

くわえて、環境に応じて、自己を変容させて他者とのつながりを共創し、就社ではなく就業・メンバーシップ型の働き方へと変わっていくと予測されます。

 

副業解禁や企業のオープンイノベーションなど、外部人材の活用も増え、これからは、チームランサーの集合体が新しい組織のカタチになっていくのではないでしょうか。

なお、政府による「働き方の未来2035」や「未来投資会議」でも、このような働き方についても触れられています。

企業と個人は、互いに対等な相利共生の時代へ

藤生:これまでの企業は、人そのものが資産でした。これからは相利共生の関係そのもの(人的関連資産)が資産になり、企業と個人は、互いに対等でパートナーシップを築いていきます。なので、緩やかで誠実なつながりを企業と従業員は作っていく必要があるのではないでしょうか。

 

そんな相利共生の関係を構成するにあたってキーになるのが、民主化だと思っています。

相利共生には、従業員の自律が前提になるのですが、自分のキャリアのために必要な自己開発を自分で選んでいくことが(民主化)必要です。

そうした民主化と、従業員の越境活動をどう企業に還元していくかを考えることが大切で、エンファクトリーでは相利共生の仕組みを以下のように実践しています。 

エンファクトリーでは、越境活動を支援する「パラレルワーク(副業)制度」や「留学制度」があります。留学制度は、2ヶ月20時間程度の複業を会社側が後押しする制度で、去年から始めました。

「複業をやってみたいけど、一歩が踏み出せない」といった従業員の背中を押してあげる研修的な仕組みです。

複業といった実践的な業務を通じて、本業以外の環境でスキル・経験が通用するのか、いい意味での「自己ギャップ」を経験することで、結果的に自己開発にもつながると考えます。

 

この留学制度をもとに「複業留学」というサービスを開始しています。

もしご興味をお持ちの方は、是非お問い合わせください>>

 

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