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【前編】山口周さん登壇「副業特区会議」特別講演『これからの時代における「個と企業の関係性」』

2019年12月11日、『これからの時代における「個と企業の関係性」』をテーマとした講演会が開催されました。この講演会は、株式会社エンファクトリー一般社団法人WorkDesignLab一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会の3団体が企画運営する勉強会「副業特区会議」の特別講演となります。

当日登壇されたのは株式会社エンファクトリー代表取締役社長の加藤健太さん、一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会代表理事の平田麻莉さん、そして書籍「ニュータイプの時代」「劣化するオッサン社会の処方箋」の著者であり、独立研究者・著作家・パブリックスピーカーとして活動されている山口周さんです。

まずはエンファクトリー代表の加藤さんより、副業解禁企業の事例として自社の取り組みについてのお話がありました。

イベントレポート後編はこちら>>>

「専業禁止」という人材理念・副業解禁の事例

副業解禁については、2年ほど前から政府も後押ししており、今年6月の「成長戦略実行計画」でもテーマとなりました。世の中的にも副業解禁の流れが進む一方で、副業解禁には過重労働、情報漏えい、利益相反といったリスクや課題も懸念されています。そこで、「専業禁止」という人材ポリシーのもと、2011年の創業時より副業を認めているエンファクトリーのケースをご紹介させて頂きます。

株式会社エンファクトリー 代表取締役社長 CEO 加藤健太さん
リクルートを経て、All Aboutの創業メンバーとして財務、総務、人事、広報、営業企画など裏方周りのあらゆることを担当し、取締役兼CFOとして2005年に IPO。その後、現在の株式会社エンファクトリーを分社し代表に就任。エンファクトリーでは「ローカルプレナー(※)のための自己実現ターミナルの創造」を目指し、また、社内では「専業禁止!!」という人材ポリシーを打ち出して、関わる人々すべての「生きるを、デザイン」を応援中。

現在エンファクトリーでは、従業員の約5割が副業を実践しています。5割という数字は他の副業解禁企業と比較するとかなり大きく、これは社内で行っている副業をオープンにするイベント「エンターミナル」による効果が大きいです。身近な社員の副業活動を目の当たりにすると、社員同士でも刺激を受けるんですよね。

この「副業を社内でオープンにする」という仕組みは他の企業でもほとんど例がありませんが、実はかなり効果の大きい施策です。

副業活動を開示することが牽制となり、悪いことはできない、しない。自身も副業活動にコミットするし、本業にも手を抜けなくなる。副業解禁時のリスクヘッジとなるわけです。

さらに副業を表明することで、周りからも応援してもらえたり、異なる視点からのアドバイスを得られたりするなど、外部の知やアイデアが還流する「正の循環」が起こります。このような循環は、社員の成長にもつながるほか、社内でもさまざまな形で新しいアイデアが形になるなど、プラスの効果も生まれるのです。

境界を溶かし、アイデアや知の流れを作る。副業解禁の先にある、これからの組織の在り方

最近はリモートワーク・残業時間の上限規制などを背景に、社員が会社に居る時間が減り、相対的に社外に居る時間が増えています。そのため、企業がすべての社員に対し平等に機会を提供することはどんどん難しくなっています。

このような現状のもと、1つの企業内のみで得られる個人の成長機会にはどうしても限界がきてしまう。そのため企業は、社員が外で学ぶことを支援する、外部の人材を巻き込んだチームを組み社内プロジェクトを進行するなど、社外に目を向け外部の知・経験を積極的に取り込むことで、社員への成長機会を提供することが出来るでしょう。

そのときのポイントは2つです。1つは既存の企業の「境界を溶かす」こと、もう1つは、越境して学んだ「アイデアや知の流れを作る」こと。これからの人的資産の管理というのは、従業員だけではなく社外パートナーも含めた大きな範囲で考えていくべきだと思っています。

我々エンファクトリーは、“会社や組織の垣根を超えてチームを作り、プロジェクトやミッションを推進する”働き方を「チームランサー」と定義しており、これからの時代の組織は、チームランサーの集合体となっていくだろうと考えています。

我々が提供する同名のサービス「チームランサー」では、既存の組織を超えたチームビルディングをサポートしており、まさにチームランサー的に働く越境活動を支援しています。今年の11月には、このチームランサーをプラットフォームとした企業向けの副業・越境活動可視化サービス「副業特区」もリリースしました。

このように、エンファクトリーは、自ら枠を外してチームを組み協創する社会を支援してまいります。

続いてフリーランス協会代表理事の平田さんより、副業解禁企業12社の運用制度についての調査報告がありました。

副業解禁は、組織・人事戦略全体の一部分。副業解禁企業の実態とは?

現在、副業解禁が進められている背景として、独立副業の敷居が低下したと同時に、人材不足と経済縮小により多様な働き方が可能かつ求められている時代になったことがあります。

一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会 代表理事 平田麻莉さん
慶應義塾大学総合政策学部在学中にPR会社ビルコムの創業期に参画。Fortune 500企業からベンチャーまで、国内外50社以上において広報の戦略・企画・実働を担い、戦略的PR手法の体系化に尽力。ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院への交換留学を経て、慶應義塾大学大学院経営管理研究科修了。現在はフリーランスでPRプランニングや出版プロデュースを行う。2017年1月にプロボノの社会活動としてプロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会設立。 政策提言を始めとする8つのプロジェクト活動、フリーランス向けベネフィットプランの提供などを行い、新しい働き方のムーブメントづくりに情熱を注ぐ。

さて今回、副業解禁企業12社にヒアリングを行いましたが、副業解禁の目的や従業員への関与度は企業によってさまざまという印象を受けました。副業解禁の目的は「オープンイノベーション」と「キャリア自律・採用強化」の大きく2つに分かれるようです。従業員への関与度については、全く介入しない会社、申請を出せばいい会社、そして申請を出した上で承認が必要な会社もあり、人材に対する各企業のスタンスや考え方が表れているように思います。

同時に、副業解禁は組織人事戦略全体の一部分であることを強く感じました。会社の風土や評価制度、採用する人材の傾向などと一体となって初めて、副業解禁の制度が意味をなすものです。そのため、副業解禁を契機に経営層や人事担当者が議論し、組織と従業員の関係性や組織の境界線、コンプライアンスなどについて自社なりの見解を持つことは、組織戦略全体を考える上で非常に重要です。

過重労働?コンプライアンス違反? 各種リスクに対する、副業解禁企業の対応

最後に、副業解禁へのよくある懸念に対して各社がどう対応されているかをお話します。

まず「過重労働」リスクの対策ですが、二重雇用を禁止するパターンと、労働時間に制限を設けるパターン、それから就業時間外は自己責任と割り切るパターンがあるようです。次に「コンプライアンス」リスクに関してですが、各社の見解はほぼ共通しており、副業特有のリスクではないため日頃から対策を徹底する、NG項目をシンプルかつ明確にして最低限のリスクヘッジをするといった対応をとっているようです。

また「本業への支障」は評価制度が鍵となっていて、もともとの評価基準が明確であれば“支障”という曖昧なものに影響は受けないということでした。最後に「人材流出の懸念」に関しては、そもそも企業と従業員とは選び選ばれる対等な関係であるため、いかに従業員に選ばれる会社であるかという方向で努力されている点が印象的でした。私からは以上とさせていただきます。

平田さんからは各社のアンケート結果についても詳しいご報告がありましたが、このレポートでは割愛させていただきます。詳しくはフリーランス協会公式サイトにてご確認ください。

次に特別講演として、山口周さんに「ニュータイプのワーキングスタイル」というテーマでお話がありました。詳しい内容は後編でお伝えします!

 

written by 三浦亜有子

フリーランスライター、エディター。月刊PC誌の編集記者として、オフィスソフトをはじめコンシューマー向け製品・サービスに関する記事執筆を担当。ウェブメディア関連企業にて新規事業立ち上げを経験したのち、2006年よりライターとして独立。現在はITを中心にライフスタイル、住宅、金融など幅広いテーマの取材・体験記事を執筆。

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