エンファクトリーが提供する越境型研修サービス「複業留学」は、大手企業の従業員がベンチャー企業で実務を行う「越境研修」です。
株式会社トリニアス細井裕作様に複業留学で取り組んでいただいた内容についてインタビューいたしました。
──まず、企業の概要について教えていただけますか?
私たちの会社は、店舗向けにデジタルマーケティングを提供しています。特に、オンラインマーケティングに焦点を当てており、その中でもMEO対策サービスとソーシャルネットワーキングサービスを主要なサービスとしています。これらを駆使し、店舗のウェブ集客を強力にサポートしています。
──複業留学の受け入れを決めた理由を教えてください。
複業留学の受入れを決めた理由は主に二つあります。まず一つ目は、「第二象限」と呼ばれる、将来的に必要だが緊急性はない重要なタスクへの対応です。例えば、2年や3年後の事業計画を立てる際、やるべきことは明確ですが、現場では目の前の数値を獲得するための緊急タスクが優先されます。その結果、将来に向けたプロダクト設計や人材育成、マネージメント、採用戦略、ブランディングなど、重要な部分に手が付けられない状況が生じていました。そこで、大手企業の方々に参画いただき、これらの課題を新たな視点から解決に向けて進めていくことを考えました。
二つ目の理由は、大手企業とのネットワーク構築です。協業などを通じて、大手企業とのつながりを深めることができればと考え、複業留学の受入れを決めました。
──複業留学期間中、留学生はどのような稼働をされていましたか?
留学生の活動内容は、最初の一カ月間で特定の課題改善を目指すという目標設定から始まりました。具体的には、インバウンド施策の実現に向けたプロダクト設計について考えてもらうことにしました。そのために、まず市場調査からスタートし、その結果を基にどのような商品が必要かを考えるという流れを想定しました。
このプロセスを一ヶ月間で明文化し、更に具体化していくことを目指しました。主な活動としては、週一日の出社で、最初の2週間は市場調査に専念し、残りの2週間でその調査結果を基に商品設計を進めるという形でした。その結果、留学生は市場調査に集中し、その結果を報告するという流れで活動を進めました。
また、出社日の業務開始前には、最初の30分から一時間ほどかけてその週の要望を伝え、一週間の会社の動向や決定事項を共有しました。その上で、前回の進行状況と新たな視点を持って活動を進めていくよう依頼しました。
後半になると、留学生自身から積極的に意見や提案が出てきました。最初は自分の立ち位置や発信の仕方に悩んでいたようですが、後半になると自分に何が求められているのかが見えてきて、よりコミュニケーションがスムーズになりました。
──実際に受け入れてみて、いかがでしたか?
受入れてみてまず感じたのは、留学生の人柄が非常に良く、我々のメンバーにすぐに馴染んでいただけたことです。新たな取り組みとしては、その点が非常に重要だと思います。人柄が良くなければ、どんなに正しい意見を述べても受け入れられない場面もあると思いますので、その点は非常に良かったと感じています。
また、我々のメンバーは非常に若く、社会人経験がないまま入社することが多いため、社会人としての姿勢や考え方についての課題がありました。しかし、留学生は視野が広く、 大手企業での経験からマクロ的な考え方を持っていらっしゃるため、課題解決に対するアプローチが異なりました。特に、マーケットから見た 我々の改善すべき点についての課題解決案を出していただいたことは、社員にとって新たな視点を提供してくれました。
その結果、社員たちは考え方の違いや仕事への取り組み方について新たな視点を得ることができ、良い刺激になったと感じています。複業留学の受入れは非常に良い経験だったと思っています。
──苦労した点について教えてください。
苦労した点としては、複業留学の活動が週に一度という制約があったため、その間に起きた動きを毎週共有するという部分が挙げられます。その情報を適切に管理し共有する仕組みを作っていなかったことが、反省点としてありました。
また、三ヶ月間のミッションを明確に設定していなかったことも苦労した点です。その場その場で動いてしまうことが多く、留学生の力を最大限に発揮してもらうための環境を整えられていなかったと感じています。
次に受入れる際には、これらの反省点を踏まえて、 ミッションを明確に設定することを心掛けたいと思います。
──留学生の変化について気づいたことを教えてください。
留学生が特に強調していた「スピード感」の変化が印象的でした。彼が大手企業からベンチャー企業への複業留学を通じて感じたのは、改善案を提出してからそれが実行されるまでのスピード感の違いでした。私自身も前職が大手企業だったので、彼の感じた違和感はよく理解できます。大手企業では、一つの改善案が通るまでに非常に時間がかかり、自分が提案したことを忘れてしまうことすらありました。しかし、ベンチャー企業では、改善案が出されてそれが実行に移されるまでの時間が非常に短いです。彼はこのスピード感に驚き、それをホームの大手企業へどうやって持ち帰れるかを常に考えていました。そして、このスピード感を持つことがいかに大事かを、三ヶ月の留学期間を通じて身をもって感じたようです。
彼は最後の発表の際にも、このスピード感があれば、自社もさらに良くなるのではないかと述べていました。また、彼は自身だけでなく、会社全体の視点も持つようになり、経営視点で物事を考えるようになったと感じました。彼のこの経験は、自分だけが早く動くだけではなく、周りを巻き込んだり、上層部を動かす力がどんどん必要になってくることを示しています。この複業留学が、そのような視点を持つきっかけになったと思います。
──最後に、複業留学の受入を検討している企業へのメッセージをお願いします。
私からのメッセージは、ぜひ複業留学の受入を検討していただきたいということです。特に、ベンチャー企業と大手企業という全く違う規模感の企業間であれば、その効果はより大きいと思います。特に創立の一年目、二年目のベンチャー・スタートアップ企業にとっては、この複業留学は非常に有益な経験になるのではないかと思います。