「研修に対する社員のモチベーションが低い」
「どうにかして社員を惹きつける研修を実施したい」
こういったお悩みをお持ちの人事担当者の方も多いかもしれません。せっかく研修を実施するのであれば、できる限り社員にとって有意義な時間にしたいもの。そこで有効なのが、研修を「面白くする」というアイディアです。
本記事では、社員の主体性を引き出す上で有効な「面白い研修」の実例を8つ紹介します。
目次
「面白い」社内研修とは?
「面白い」社内研修とは、社員が楽しみながら意欲的に参加できる研修のこと。OJTや講義型の研修とは異なり、肩の力を抜いて参加できる点が特徴です。
具体的な実施方法としては、例えば次のようなものが挙げられます。
- 体験学習
- チームビルディング
- ゲーミフィケーション
企業事例は後ほど詳しく紹介しますが、社員同士で登山をしたり、座禅を組んだりといったように、最近ではユニークな研修を実施する企業も多いです。また、こうした社内研修の様子をSNSなどへ投稿することで、企業のイメージアップを図る企業も増えてきています。
面白い社内研修を実施するメリット
研修を面白くすることで、以下のようなメリットが期待できます。
- 社員の主体性を引き出すことができる
- 職場の心理的安全性が向上する
- 研修全体への満足度が高まる
- 対外的なブランディングにつながる
社員研修を面白くするメリットを確認していきましょう。
社員の主体性を引き出すことができる
社員研修を面白くする最大のメリットは、社員へ主体的に参加してもらえる点です。
従来、「研修」といえば座学での講義やOJTが一般的でした。講義やOJTはスキルアップするために大切ですが、社員からは「同じような内容で退屈」「話を聞くだけでつまらない」といった印象を抱かれることも。特に講義を聞くだけの研修は、「講師→社員」という一方通行のコミュニケーションになりがちです。
一方で面白い研修では、社員が自ら考え、行動する仕掛けが豊富に用意されています。グループワークやロールプレイングなどを通じて「講師⇄社員」「社員⇄社員」という双方向のコミュニケーションが発生するため、社員は受け身の姿勢になりません。
最後まで集中力を持って研修に参加してもらえるので、学習効果を高めることができるのです。
職場の心理的安全性が向上する
面白い研修を通じて、職場の心理的安全性が向上するというメリットもあります。
面白い研修では、「社員同士で登山する」「社員同士で協力してサバイバルする」といったように、社員同士で協力して物事をこなすことが多いです。こうした経験は、社員の間に一体感や連帯感を醸成するのに役立ちます。普段の仕事であまり関わらないメンバーとも協力する体験を積むことで、職場全体に信頼関係が構築され、心理的安全性が向上するのです。
職場全体の心理的安全性が高まると、新しいアイディアが出やすくなったり、社員のストレスが軽減されたりといった多くの効果も期待できます。
研修全体への満足度が高まる
一部の研修に遊び心を取り入れることで、研修全体の満足度が向上します。
社員の中には、研修に対してなんとなくネガティブなイメージを持つ人も珍しくありません。「座って話を聞くのは集中力が持たない」という人もいますし、「普段の仕事が忙しくて研修に時間を割けない」といった考えから研修中に内職をする人もいるでしょう。
研修に遊び心を加えることで、こうした社員に対して「研修を聞いてもらうきっかけ」を与えることができます。体験学習などを通じて「今回の研修は面白いな」と感じてもらえれば、しめたものです。研修全体に対するネガティブなイメージを払拭できるため、他の研修にも能動的に参加してもらいやすくなります。
対外的なブランディングにつながる
面白い研修を実施すると、企業のブランディングにつながるというメリットも。
面白い研修を実施する場合、その様子を撮影してSNSへ投稿したり、コーポレートサイト上へ公開したりするケースも多いでしょう。社員が研修を楽しんでいる様子を発信すれば、社外から「楽しそうな会社だな」というイメージを持ってもらうことができます。新卒採用サイトなどで情報発信することで、採用力の強化につながるかもしれません。
「明るい会社」「活き活きとした会社」といったブランディングを行う際には、ぜひ面白い研修を実施してみましょう。
面白い社内研修の事例8選|新入社員から管理職まで
ここからは、実際に企業が実施している面白い研修の事例を紹介します。
全社員向けのものから新入社員向けのもの、管理職向けのものまで階層ごとに解説するので、ぜひ参考にしてください。
【全社員】未来会議(富士通鹿児島インフォネット)
株式会社富士通鹿児島インフォネットでは、全社員を対象に「未来会議」というワークショップ形式の研修を実施しています。
「未来会議」は、同社が毎年クリスマスの時期に合わせて実施している社内研修です。企業の年表を作成するワークショップや、テーマごとのセッションなどを行い、社員同士のコミュニケーションを促しています。
同研修に参加する社員の中には、サンタクロースの帽子を被った人の姿も。研修の堅苦しいイメージから離れ、社員同士が自由に思いを共有できる場を設けている事例です。
参考:対話の場づくりを企業で実践 社内イベント「未来会議」を開催
【全社員】森林整備体験研修(サントリーグループ)
サントリーグループでは、基本となる価値観の一つに「自然との共生」を掲げています。それを実現するために取り組んでいる施策の一つが、毎年6,000人の社員を対象に実施される「森林整備体験研修」です。
森林整備体験研修では、有志の社員が実際に森林で植樹作業に取り組みます。ナツツバキやカスミザクラなどの植樹を通じて、森林の形成が土壌流出の防止や防災につながることを実感してもらいました。
参考:サントリー社員が取り組む「森林整備体験研修」を登美の丘ワイナリーでも
【新入社員】登山研修(伊藤忠商事)
伊藤忠商事の登山研修は、新入社員を対象とした本格的な体験型研修として有名です。
社員は那須岳でテント生活をしながら、標高1,700メートルの登山に挑戦します。日程はなんと5泊6日で、日によっては3時に起床することもあるそうです。4月に実施入社直後の新入社員にとっては、タフと感じられることも少なくありません。
この研修の目的は、厳しい状況でも諦めない忍耐力を養うこと。協力しながら困難を乗り越える経験を得てもらうことで、マインド面での成長を促しています。
参考:なぜ新入社員は山に登るのか? | ダイヤモンド・オンライン
【新入社員】kmウォーキング(国産自動車グループ)
国産自動車グループでは、「kmウォーキング」研修を毎年実施しています。新入社員を対象とした研修で、夕方から翌朝にかけて東京都心部を練り歩くという内容です。
ある年は、次のような行程で42.195kmを歩きました。
代官山IC→皇居外苑→芝公園→築地川銀座公園→錦糸公園→東京温泉 まねきの湯
(一部抜粋)
社員は単に散歩するのではなく、東京都心部の地理を理解することが求められます。長距離を歩くことで一体感を醸成するのはもちろん、上記の行程を通じて首都高環状線の構造などを確認し、業務に役立てることも狙いの一つです。
【新入社員】坐禅研修(日置電機株式会社)
電気計測器メーカーの日置電機では、社員が禅寺で実際の坐禅体験を行う「座禅研修」を実施しています。「お寺」という非日常的な空間の中で、座禅を通じて心身をリフレッシュすることが目的です。2泊3日の日程で、新入社員を対象に実施しています。
入社したばかりの社員が寝食を共にすることで、社員同士のコミュニケーションを促進し、絆を醸成することが主な目的です。ちなみに、座禅のようなマインドフルネスは、Googleの研修でも取り入れられています。
【新任管理職】無人島サバイバル研修(日進食品グループ)
「骨太の管理職育成」を掲げる日進食品グループ。その一環として実施している取り組みが、新任管理職を対象とした2泊3日の無人島サバイバル研修です。
参加者は、寝床の確保から火おこし、食糧調達までを自分自身の力で行います。特別な指示は与えられないため、参加者同士がアイディアを出し合わなければならない点が最大のポイント。精神面・肉体面でタフな管理職を養成するとともに、無人島という過酷な環境で「食の大切さ」を改めて認識してもらうことも目的の一つです。
参考:「骨太の管理職育成」無人島サバイバル研修 日清食品グループ 新任管理職研修 実施のお知らせ | ニュースリリース
【全社員】越境サーキット
越境サーキットは、弊社エンファクトリーの提供している研修です。参加者は3ヶ月間という時間をかけてスタートアップ企業へ越境し、普段とは全く異なる業種での課題解決にチャレンジします。
例えば自動車部品メーカーの株式会社アイシンでは、社員に「外を知って視点を変えてもらう」ことを目的に越境サーキットを導入しました。初期は現場に近いチームリーダー層を対象に実施し、その後は徐々にグループマネージャーや管理職へと対象を広げていったそうです。
株式会社アイシン人事本部の齊藤様は、越境サーキットの効果について次のようにおっしゃっています。
「他者の意見を積極的に聞くこと」や「試行錯誤しながら自分の意見を発言すること」において、明らかな変化が見られました。これは、越境学習をきっかけにできるようになったという成果だと思います。
体験学習と同様に普段とは異なる環境へ身をおいてもらいつつ、実務的な経験を通じてマインド面の変化や他社との協働、視野拡大といった成長を促したユニークな研修事例です。
本事例の詳細は、以下のページからご覧ください。
越境サーキット導入企業インタビュー「越境学習が生んだ自発的な行動変化」
【全社員】複業留学
複業留学も、弊社エンファクトリーが実施している越境学習プログラムの一つです。複業留学では、ベンチャー企業で3〜6ヶ月程度の時間をかけて課題解決に取り組みます。
例えば東海東京フィナンシャル・ホールディングスでは複業留学を導入し、社外での経験を積んでもらう機会を用意しました。公募制で参加者を集めた結果、入社10年目前後で「何か一歩踏み出したい」と感じている社員から多くの応募が集まったそうです。
同社人事部の沖田様は、複業留学の効果について次のようにおっしゃっています。
留学生のインタビューを改めて読むと、「複業留学」を通じて知識や経験が足りないことへの「気づき」や「自分への反省(内省)」などがあり、自分を見つめ直すきっかけになったと思っています。
複業留学の効果や具体的な実施方法は、以下のインタビュー記事から詳しくご覧いただけます。
新しい経営計画に根差した人事制度・研修に「複業留学」を導入 | 越境学習のご案内
面白い研修を実施するためのポイント
ここまで、さまざまな「面白い研修」の事例を紹介しました。
事例からも分かる通り、面白い研修の実施方法は企業によってさまざまです。それでは、研修を「面白い」と感じてもらうための本質はどこにあるのでしょうか。
ここからは、研修を「面白い」と感じてもらうために大切なポイントを解説します。
コミュニケーションを促す
研修を面白くするためのポイントとして、「コミュニケーションを促す」という点が挙げられます。
例えば富士通鹿児島インフォネットの「未来会議」では、社員同士でのコミュニケーションを通じて企業の歴史と未来についてディスカッションしてもらいました。森林整備研修でも、普段は関わることの少ない社員同士が植樹を通じて協力しています。
コミュニケーションには人それぞれ得意不得意がありますが、普段はあまり関わらない人から新しいアイディアを得られれば誰でも嬉しいもの。社員から「面白い」と思ってもらえる研修では、普段の仕事では発生しないようなコミュニケーションを意識的に生み出し、社員同士が楽しい時間を共有できる仕掛けを作っているのです。
もちろん越境学習や複業留学でも、ベンチャー企業やスタートアップの社員はもちろん、他社の仲間とコミュニケーションを取る機会が豊富にあります。
未知の状況へチャレンジしてもらう
面白い研修では、未知の状況へ果敢にチャレンジしてもらう点もポイントです。
人間の成長に関して、以下の3つの領域があることが知られています。
コンフォートゾーン | 安全でリラックスできる環境 |
ラーニングゾーン | 少しだけストレスを感じる、いつもより少し違う環境 |
パニックゾーン | ストレスや負荷が過度にかかる環境 |
このうち最も人間の成長が促されるのは、2番目の「ラーニングゾーン」です。
「面白い研修」では、意図的に社員をこの「ラーニングゾーン」に置いています。先ほど紹介した登山研修やkmウォーキングは、チャレンジングな環境に身をおいてもらう代表例です。越境サーキットや複業留学でも、あえて異業種の課題解決に挑戦してもらうことで、新しいスキルや視点を養います。
ラーニングゾーンで得られる「普段とは異なる」という感覚は、社員の好奇心や冒険心を刺激しますし、研修終了後の成長実感にもつながります。そのため、未知の状況へ飛び込む研修は、社員に「面白い」と感じてもらいやすいのです。
新しい環境へ飛び込むには越境学習もおすすめ
社員へ新しい環境へ飛び込んでもらう手段として、越境学習が注目されています。越境学習にはさまざまな形態がありますが、中でも弊社が特におすすめしているのが、ベンチャーやスタートアップへ3〜6ヶ月かけて留学する「複業留学」です。
複業留学では、普段の仕事と並行しながら、新しい業務にチャレンジすることができます。いつもとは異なる業務をこなすことでスキル面での成長につながりますし、自らのキャリアを見つめ直すきっかけを得ることが可能です。さらに、自社以外の社員と協働することで、無意識のうちにとらわれている「当たり前」に気がつくといった、マインド面での成長も期待できます。
社員に「面白い」と感じてもらえる人事育成を実施したい場合は、ぜひ越境学習の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
エンファクトリーでは、3〜6ヶ月程度でベンチャー企業のリアルな課題解決にチャレンジする越境学習プログラム「複業留学」を提供しています。これまで累計80社以上、300名以上を支援してまいりました。
複業留学についてご興味がある方は、ぜひ以下から資料をダウンロードしてください。