「OJTがいつの間にか放置になっている」
「期待していたほどOJTによって新人が育っていない」
人材育成の柱として、多くの企業が取り入れているOJT。しかし、自社のOJTに課題を感じる人事担当者の方も多いのではないでしょうか。
本記事では、「OJTは意味がない」と言われる原因を深堀りします。また、OJTを効果的に運用するためのポイントも解説するので、ぜひ最後までお読みください。
目次
「OJTは意味がない」と言われる際の本質的な課題とは
「OJTは意味がない」と言われてしまう根本的な理由は、「OJTは組織的に取り組むもの」という意識が十分に浸透していないためです。
OJTに課題を感じる企業の多くは、「OJTはOJTトレーナーが取り組むもの」と考える傾向があります。もちろん直接的な指導を担当するのはOJTトレーナーで間違いないのですが、OJTトレーナーが質の高い教育を実施するためには、組織全体からのバックアップが必要不可欠です。
しかし、こうした組織全体からのバックアップがないと、どうしてもトレーナーの指導品質にバラつきが生じます。さらに、多くのトレーナーは普段の業務の合間を縫ってOJTを担当するため、自然とOJTにかける工数は少なくなっていくでしょう。こうした要因が重なり、最終的には「放置」の状態まで至ってしまうのです。
OJTが放置になってしまう理由は主に4つ
組織でOJTに取り組む意識が薄いと、以下の4つの課題が生じます。
- OJTの目標や目的が社内で十分に共有されていない
- トレーナーの力量が不足している
- トレーナーの業務量が多い
- 周囲のサポートや理解が足りていない
OJTが形骸化する具体的な理由を確認していきましょう。
OJTの目標や目的が社内で十分に共有されていない
OJTが形骸化する組織では、OJTの目標や目的が明確にされていません。
例えば、「3ヶ月で一通りの業務ができるようになってもらう」といった曖昧な目標しか設定されていないケースが目立ちます。しかし、「一通りの業務」が具体的に何を指すのか、どの程度のレベルまで到達すべきなのかが明確でなければ、効果的な指導はできません。
また、「当たり前のようにOJTをやっている」という状態になっており、OJTが人材育成全体の中でどのような位置付けになっているのか不明確な場合も多いです。その結果、他の人材育成施策との連携が不十分になったり、社内からのOJTに対する理解が得づらくなったりします。
トレーナーの力量が不足している
OJTが形骸化する要因として、トレーナーの力量不足も挙げられます。
実務面において優秀な社員が、指導者として必ずしも優秀とは限りません。優秀な社員の中には感覚で物事をこなす人もいるため、こうしたトレーナーは指導時に自分のノウハウをうまく言葉で伝えることに苦労しがちです。
また、最近ではハラスメントに敏感な社員も多いため、踏み込んだ指導がしづらいと感じるトレーナーも多いです。
トレーナーの業務量が多い
トレーナーが日常業務に忙殺されてしまう点も、OJTが形骸化する理由の一つです。
多くの企業では、普段の業務と並行しながらOJTを担当することが前提となっています。しかし、売上目標の達成期限やプロジェクトの締切といった重要な期日が迫ると、OJTの指導は後回しになりがち。結果として、OJTの放置につながってしまいます。
さらに、OJT指導を評価するための人事制度が不十分なケースも多いです。OJT指導での貢献が正当に評価されないと、どうしても指導は手薄になってしまいます。
OJTの実効性を高めるために実施すべき対策
「OJTは意味がない」と言われる原因を解説しました。それでは、こうした課題を解決するために、人事部としては何ができるのでしょうか。
OJTの実効性を高めるために必要な対策は、主に以下の4つです。
- OJTについて社内で情報共有をする
- 日報や定期ミーティングなどを導入する
- トレーナーを対象とした研修を実施する
- OJT対象者に定期的なフォローを実施する
OJTを効果的なものにするためのポイントを解説します。
OJTについて社内で情報共有をする
OJTを成功させるためには、まずOJTについて社内で情報共有する必要があります。
OJTの実施前に、以下のような項目をOJTトレーナー全員と人事部で共有してみましょう。
目的 | なぜOJTを実施するのか |
目標 | いつまでに何を達成できるようにするのか |
効果測定 | 効果測定のタイミングと方法 |
上記を明確にしておくだけでも、OJTトレーナーによる指導品質の差を埋めやすくなります。
OJT期間中には、定期的にOJTトレーナーを対象としたミーティングを実施することもおすすめ。このミーティングでは、以下のような内容を共有してみてください。
進捗状況 | 個々の達成状況 |
成功事例 | 効果的だった指導方法はあるか |
改善点 | 直面した課題はあるか |
OJTトレーナー同士で定期的に進捗を共有することで、指導の方向性を共有できます。成功事例や改善点を共有すれば、指導品質の底上げにつながるでしょう。
日報や定期ミーティングなどを導入する
OJTを成功させるためには、OJT制度を「仕組み化」することが大切です。日報や定期ミーティングなどを導入し、OJTトレーナーと新入社員が定期的にコミュニケーションを取る仕組みを作りましょう。
例えば日報では、新入社員に以下のような内容を記入してもらうのが効果的です。
- 今日学んだこと
- 理解できなかった点
- 明日の目標
それぞれ、書き出す最低個数などを決めてもよいでしょう。例えば「学んだことを最低3つ、OJTトレーナーへの質問を最低1つ書く」といったルールを設けるのがおすすめです。OJTトレーナーも、必ずこの日報に対してフィードバックを行うようにしてください。
定期ミーティングも有効です。最低でも月に1〜2回程度のペースを目安に、OJTトレーナーがしっかりと新入社員に向き合う時間を作りましょう。
トレーナーを対象とした研修を実施する
OJTトレーナーを対象とした研修を実施するのも、OJTの成功に向けた効果的な施策の一つです。
OJTトレーナー研修では、コミュニケーションスキルやフィードバックスキルを中心に学んでもらいましょう。ロールプレイングやケーススタディなども交えながら、実践形式で指導スキルを身につけることが重要です。ハラスメントに関する講義を実施して、注意すべき言動を学んでもらうのもよいでしょう。
OJT対象者に定期的なフォローを実施する
OJTの対象者に、OJTとは別のフォローを加えるのも有効です。
代表的な施策としては、メンター制度の併用が挙げられます。メンター制度とは、OJT担当者とは別の先輩社員がメンターとなり、新入社員からの幅広い相談に応じる制度です。OJTが実務中心なのに対し、メンター制度ではキャリアのことや仕事以外の悩みなど、幅広い相談をカバーします。
メンター制度を導入すれば、「OJTトレーナーとコミュニケーションが取りづらい」「OJTトレーナーとの相性が悪い」といった悩みをメンターへ相談できるようになり、新入社員が孤立することを防げます。
このほか、OJTトレーナー以外との1on1ミーティングの実施や、シスター・ブラザー制度の導入なども効果的な施策の一つです。新入社員は環境変化によるストレスが大きいため、メンタル面でのサポートも意識してみてください。
OJTに限界を感じている場合は越境学習の導入もおすすめ
OJTに課題を感じている場合は、越境学習もおすすめです。
中には「社外OJT」として位置づけ、導入を行っている企業も存在します。
越境学習とは、自社とは異なる環境で3〜6ヶ月程度の実務経験を積む人材育成手法です。主にベンチャー企業やスタートアップ企業へ留学し、普段とは異なる業種で課題解決に挑戦します。
OJTと越境学習の関係は、次のように整理できます。

OJTが社内で学ぶ実践重視の学習なのに対し、越境学習は社外で学ぶ実践重視の学習です。社内だけでは得づらい経験ができるため、すでにある程度業務に慣れた社員が新しいノウハウを身につけるのに向いています。また、OJTで習得した知識やスキルを社外で実践する場として活用するのも効果的です。
社内にはないノウハウも取り込みたい場合は、ぜひOJTと並行して越境学習にも取り組んでみてはいかがでしょうか。
越境学習で人材育成の課題解決に成功した事例
弊社エンファクトリーでは、越境学習サービス「複業留学」を提供しています。ここからは、複業留学を活用して他社へ留学し、社外で実践的な活動に取り組んだ方のレポートをお届けします。
株式会社NTTドコモの横段(よこだん)様は、普段コーポレート部門において総務人事部に所属しています。普段は秘書室全体の運営に関わる業務をこなしていますが、「インプットとアウトプットの両方に挑戦したい」という思いから、異業種での課題解決にチャレンジする複業留学へ参加することを決めました。
複業留学先では、主に以下の3つの課題に取り組んでいます。
- 事業計画の検討と策定
- 直近の販売計画の策定
- 人事評価制度の抜本的な見直し
担当する業務範囲の広さに驚いたそうですが、当初の狙い通りインプットとアウトプットの両面で成果を残すことができました。すべて5の評価をもらったことで、自信とモチベーション向上にもつながったそうです。
複業留学について、以下のようなコメントを頂いています。
ベンチャー企業や新しい社会に飛び込むことに不安を感じる方もいるかもしれませんが、同期のレポートを見ていると、どの会社もきっとウェルカムな環境だと感じました。 期間も、弊社が行っているOJTなどと比較すると、チャレンジしやすいと思います。 ですので、ぜひこの機会に飛び込んで挑戦してほしいと思います。
本事例の詳細は、以下のページからご覧いただけます。
複業留学体験レポート「新しい環境での挑戦がもたらす成長:ベンチャー企業での学びと気づき」 | 越境学習のご案内
まとめ
「OJTは意味がない」と言われてしまう根本的な原因や、OJTの実効性を高めるために必要な対策について解説しました。
OJTの実効性が低下する原因は、OJTに対して組織で取り組むという意識が十分に浸透していない点にあります。OJTトレーナーに負担を押し付けると、放置や制度の形骸化につながってしまうでしょう。日報やミーティングの導入、OJTトレーナー研修の実施などを通じて、組織全体でOJTを進めていくことが大切です。
OJTは、日本企業における人材育成の要といっても過言ではありません。多くの社員はOJTで仕事の具体的な進め方を学び、徐々に自走できる人材へと育っていきます。
ぜひこの記事を参考にOJTの実効性を高め、効果的な人材育成につなげてください。
また、OJTの実施がリソース的に難しい、新しいスキルを身につけてほしい、といった場合には「越境学習」の導入もおすすめです。詳しく知りたい方は、以下より資料をダウンロードしてみてください。