【事例7選】越境学習でリーダー育成に成功した企業事例|リーダー育成のポイントや越境学習の活用法も解説

サクセッション・リーダー育成

ビジネス環境が激しく変化する中、リーダー育成を重視する企業が増えてきています。

しかし、「自社のリーダー育成に課題を感じている」という企業担当者の声も少なくありません。リーダー育成は、どのように進めていくべきなのでしょうか。

本記事では、越境学習を通じてリーダー育成に成功した事例を7つご紹介。リーダー育成を成功させるためのポイントも徹底解説するので、ぜひ自社の人材育成のヒントとしてお役立てください。

リーダー育成とは?

具体的な事例の紹介に入る前に、まずはリーダー育成の定義からおさらいしましょう。
リーダー育成とは、チームを牽引する人材を計画的に育て上げる取り組みです。チームのビジョンを描いたり、メンバーを巻き込んだりする能力を育成します。

将来を見通しづらい現代において、リーダーにはさまざまな能力が必要です。ざっと列挙するだけでも、下記の能力が求められます。

  • 専門知識や技術力
  • コミュニケーション能力
  • 判断力
  • チームマネジメント力
  • 課題解決力

こうした能力は、一朝一夕に身につくものではありません。そのため、時間をかけて体系的に自社のリーダーを育てる「リーダー育成」が重要視されているのです。

リーダー育成が求められている背景は主に3つある

現代では、リーダー育成の重要性がますます増しています。リーダー育成がこれまで以上に重要視されている背景を確認しましょう。

ビジネス環境が急激に変化している

現代のビジネス環境は、デジタル化やグローバル化、働き方改革や新型コロナウイルスなどの影響によって、かつてないスピードで変化しています。これによって、従来の考え方だけでは対応できない場面が増えました。

例えばコロナ禍でリモートワークが普及した際、今まで通りのマネジメント手法に限界を感じた管理職の方も多いでしょう。リモートワークの環境下では、オンラインでのコミュニケーションに適応し、部下をマネジメントするための新しい方法を編み出す必要があります。

また、これまでのOJTによるリーダー育成が困難になりつつある点も指摘されています。例えば早稲田大学ビジネススクール教授の池上重輔氏が発表した論文では、リーダー育成に対する問題意識として真っ先に「内部OJTの限界」が挙げられています。

時代の変化に適応するために、能力の高いリーダーを新しい方法で育成する必要性が増しているのです。

参考:池上重輔, “日本企業のリーダーシップ開発の現状と市場との対話”, 時流 (2023) 

人材不足が進んでいる

少子高齢化は、日本が抱える大きな社会問題です。厚生労働省が発表している資料によると、2070年には日本の生産年齢人口(※)が4,535万人となり、2020年の7,509万人から実に60.4%に減少すると予測されています。

このような背景から、企業における人材不足は深刻です。働き方改革の影響で一人あたりの労働時間が減少していることもあり、従来のようにじっくりとリーダーの経験を積んでもらうことは難しくなりつつあります。

限られた人材を効率的に育成するためには、体系的で再現性の高いリーダー育成施策が必要です。

(※)生産年齢人口:15〜64歳人口のこと

参考資料:我が国の人口について|厚生労働省 

人材の流動化が起こっている

ビジネス環境のグローバル化によって、日本企業でも人材の流動性が増加しました。

これまでは終身雇用で定年まで勤め上げるのが当たり前だった企業でも、キャリアアップやライフスタイルの変化を理由に転職する社員が出てきています。企業側からすれば、ひとたび「合わないな」と思われてしまうとすぐに辞められてしまう、非常に難しい環境になりつつあります。

こうした中、優秀なリーダーの存在は社員の心をつなぎとめるのに役立ちます。リーダーが優秀だとメンバーのエンゲージメントも向上しますし、職場の働きがいも向上するので社員が辞めづらくなります。

さらに、リーダー育成はリーダー候補自身の離職を防ぐうえでも重要です。

リーダー候補になる優秀な社員は成長意欲も高く、すぐに転職しやすい傾向があります。リーダー候補人材への抜擢などを通じて会社からの期待感を示すことで、本人もその期待に応えようとしてくれるのです。

越境学習を通じてリーダー育成に成功した企業事例3選

リーダー育成にはさまざまな方法がありますが、中でもおすすめなのが越境学習を活用する手法です。

越境学習ではベンチャーやスタートアップへ3〜6ヶ月留学し、留学先企業の一員として課題解決に取り組みます。特にリーダー育成の文脈では、留学先企業の経営層に近いポジションで経験を積んでもらうケースが多いです。

越境学習で経営へ携われば、リーダーに必要な高い視座を養うことができますし、座学研修やワークショップでは得づらいリアルなリーダー経験を積むことができます。

ここからは、越境学習を通じてリーダー育成に成功した企業事例を見ていきましょう。リーダー育成の具体的な進め方を知りたい方は、ぜひ参考にしてください。

なお、越境学習に限らずリーダー育成全般に関する知識を深めたい方は、下記の記事もご覧ください。

【企業事例あり】次世代リーダー育成を成功させるには?選抜方法や育成の流れ、求められる資質を徹底解説 

【大日本印刷株式会社】越境学習でベンチャー企業の風土を体感

大日本印刷で新規事業開発チームのリーダーを務める秦さま。以前から、ベンチャー企業の取り組みを深く理解してスピード感を身につけたいという思いがありました。

そこで、越境学習(複業留学)を活用して地域課題の解決に取り組むベンチャー企業への留学を決意。地方活性化に向けた計画の立案などへ携わっていただきました。

越境学習を経て、自身の振る舞いについて以下のような変化があったそうです。

複業留学を経て、特にチームのメンバーや部下に対して、自分の想いや考えをはっきりと伝えるようになったと感じています。以前は新規事業のチームにおいて調整型のリーダーシップを優先し、部下がやりたいことやモチベーションを重視していました。しかし、今は自分の中にミッションやビジョンをしっかりと持ち、それを堂々と表現することができるようになったと思います。

自社の中だけで経験を積んでいると、どうしても理想とするリーダーシップ像が自社特有のものに染まってしまうことがあります。秦さまの事例は、ベンチャー企業の風土に触れることで、より芯のあるリーダーシップを身につけることに成功したケースです。

本事例の詳細は、以下のページをご覧ください。

複業留学体験レポート「異質な環境が引き出した新たなリーダーシップ」 | 越境学習のご案内 

【帝人ファーマ株式会社】リーダー業務へのモチベーションを強化

帝人ファーマのグループ企業で人事を務める西岡様は、人材採用や労務管理、制度改定などの業務に携わっています。自身の能力が他社でどれほど通用するのか確かめるため、上司に自ら越境学習(複業留学)への参加を相談し、参加を決めたそうです。

留学先では、インターン生のサポートや顧客理解の促進業務などへ携わりました。普段は部署内で最年少の西岡様は、越境学習を通じて上司や先輩側の視点で物事を考える機会が増えたそうです。

インタビューでは、次のようにお答え頂いています。

私は現在の会社で一人で人事を担当しており、部署内でも最年少です。異動も早かったため、部下を持つ経験がありませんでした。そのため、自分中心で仕事を進めることが多かったのですが、今回 インターン生をサポートする立場になったことで、彼らの理解やモチベーション、成長を促すために何をすべきかを考える機会が増えました。

さらに、西岡様は自身が指導した後輩や部下が成果を出したときの喜びもはじめて実感しました。

日本企業ではどうしても年功序列の風土があるため、若いうちからリーダーとしての視座を身につけることが難しいケースがあります。本事例では越境学習を活用し、リアルなリーダー経験を獲得することができました。

詳細は、次のページからご覧ください。

複業留学体験レポート「複業留学で得た視野 :人事制度改革への新たな一歩」 

【株式会社カルモア】社外での武者修行で新しい視点を獲得

アジアトップクラスで空気環境ビジネスを展開している株式会社カルモア。同社では経営戦略を逆算して次世代の経営者育成を進めており、実力さえあれば年齢に関係なくリーダーを抜擢しています。

もちろん、実力のある人に突然リーダーを任せているわけではありません。リーダーを育成するための取り組みも数多く実施しており、その中の一つとして越境学習を取り入れています。

弊社エンファクトリーでは、株式会社カルモアの人材育成や越境学習の実践事例についてご紹介するウェビナーを開催しました。その内容をまとめたイベントレポートをご用意しましたので、同社での越境学習やリーダー育成についてご興味がある方は、以下のページから資料をご確認ください。

人財育成ゼロからの次期経営者育成~次期経営者育成における越境学習の成果と道のり 

その他のリーダー育成の事例4選

ここからは、越境学習に限らずリーダー育成に取り組んだ事例を4つご紹介します。

【三井化学株式会社】キータレントマネジメントを実施

長期経営計画「VISION 2030」を掲げ、次世代リーダー育成を戦略的に進めてきた三井化学株式会社。「キータレントマネジメント」と呼ばれる同社独自のリーダー育成の取り組みを積極的に進め、2024年時点での後継者候補準備率は200%を超えました。

同社のキータレントマネジメントでは、パフォーマンスの高い人材をグローバルレベルでピックアップしています。人的資本経営のモデルケースとして「人材版伊藤レポート2.0」にも取り上げられるなど、注目を集めている事例です。

弊社エンファクトリーでは、三井化学株式会社の経営者候補育成の戦略や組織づくりのポイントについてお聞きするウェビナーを開催しました。当日の内容を抜粋した資料をご用意しましたので、ぜひ以下のページからダウンロードしてください。

【アステラス製薬株式会社】オーナーシップと経営者目線を強化

アステラス製薬株式会社では、「事業のオーナーシップを持った社員」をキーワードに人材育成を進めています。人材育成でも、社員本人の意志を重視しているのが特徴です。

例えばリーダーのポストに空きが出た際は、社内に公募を出しています。候補者に対しては上司などの面談を実施し、適任者を決めるというシステムです。これによって「管理職をやりたくないのに管理職になってしまった」というミスマッチを防いでいます。

参考:実践事例 変化する時代の キャリア開発の取組み 

【オムロン株式会社】意欲ある人材が活躍する組織を目指して

オムロン株式会社では、リーダーに求める要素を明確化しました。

具体的には、以下の3つを軸に据えています。

  • Lead the Self(自分をリードする力)
  • Deliver Higher Results(成果を創出する力)
  • Lead People & Organization(人と組織をリードする力)

行動評価や人材配置の際も、これらが基準となります。社内で統一された基準が設けられているため公平感がありますし、キャリアアップに向けた努力がしやすくなっているのがポイントです。

意欲がある人材が活躍できるよう、昇格時には試験によって可否を判断しています。勤務年数や経験の要件を撤廃し、リーダーに求める要素を明確化したことで、主体性を持ったリーダーの育成に成功しました。

参考:実践事例 変化する時代の キャリア開発の取組み 

【株式会社神戸製鋼所】自律型教育と選抜型教育を併用

株式会社神戸製鋼所では、選択式・公開式の教育と選抜型の教育を併用することで、リーダーの効率的な育成を進めています。

選択式の教育では、時間や場所を問わず自由に学べる動画型の教材を用意し、個人の成長課題に合わせた教育ができるよう工夫しました。導入以降、2,600名以上が何らかの学びを行うなど、多くの社員が前向きに自分の学びを進めているようです。

また、選抜研修も併用しています。将来のリーダー候補となる人材には、社外講師を招いた経営力養成プログラムを6ヶ月間にわたって実施。2014年以降の参加者数は200名に達し、体系的なマネジメントスキルの習得を促しています。

参考:実践事例 変化する時代の キャリア開発の取組み 

事例から紐解くリーダー育成のポイント

ここからは、リーダー育成を成功させるためのポイントを、各社の事例から紐解いていきましょう。自社のリーダー育成を考える際には、これらのポイントをおさえられているかどうか確認してみてください。

自社のリーダーに求める要素を明確化する

リーダー育成を成功させるためには、まず自社がどのようなリーダーを求めているかを明確に定義することが重要です。例えばオムロン株式会社では、自社のリーダーに求める3つの要素を明確化することでリーダー育成の指針を明確化していました。

リーダー像を描く際は、自社のMVVから逆算しましょう。「自社のビジョンを目指すためには、それぞれのリーダーがどのような役割を果たすべきなのか?」を考えることで、それぞれの階層のリーダーに必要な要素が見えてきます。

本物の責任と権限を伴う場を用意する

座学やケーススタディだけでは、真のリーダーシップを身につけることはできません。リーダー育成プログラムを考えるときは、本物の責任と権限を伴う経験を積んでもらうことが重要です。

従来型の研修では、失敗しても実際のビジネスには影響がありません。しかし、大日本印刷株式会社や帝人ファーマ株式会社などが取り組んだ越境学習では留学先のスタートアップ企業が実際に取り組むプロジェクトに参画するため、本人の行動が事業成果へ直接影響します。

座学で体系的な知識を身につけることももちろん大切ですが、可能な限りリアルな課題に取り組む機会を確保して、リーダーとしての自覚を促しましょう。

普段と異なるタフな環境で経験を積んでもらう

リーダーとして成長するためには、普段の業務では経験できないような困難な状況に直面することも重要です。課題解決力や判断力、ストレス耐性などの能力は、適度にタフな環境でこそ鍛えられます。

特に大企業の場合は、前例やマニュアルに沿って業務を進めることが多くなりがちです。しかし、リーダーを務める人材は前例だけに頼るわけにはいきません。育成期間中に困難な状況を体験させることで、前例に頼らずに自分の意志で意思決定できるタフなリーダーを育成できます。

あえて困難な経験を積んでもらう育成手法は、「タフアサインメント」とも呼ばれています。タフアサインメントによるリーダー育成の事例や、具体的な実践機会の作り方に興味がある方は、次の記事をご確認ください。

リーダー育成には越境学習の活用がおすすめ

リーダー育成には、越境学習の活用がおすすめです。

先程の事例でもご紹介した通り、越境学習ではベンチャーやスタートアップの抱えるリアルな課題解決に挑むことができます。普段通りの業務の進め方が通用しないタフな環境で、徹底的に課題解決能力やコミュニケーション能力を磨くことが可能です。

また、留学先の経営層と直接関わる機会も多いため、リーダーに必要な高い視座を自然と身につけることができます。一定の職務経験があるリーダー候補の社員はもちろん、20代〜30代の若い社員にリーダー経験を積んでもらいたい場合にも、越境学習が効果的です。

弊社では、越境学習をはじめて導入する方に向けた、「はじめての越境学習ガイドブック 」をご用意しました。リーダー育成における越境学習の導入についてご興味を持たれた方は、ぜひお気軽に資料をダウンロードしてください。

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