グローバルリーダーとは?定義や必要なスキル、企業での育成方法をまるっと解説

サクセッション・リーダー育成

グローバルリーダーとは、グローバルな環境で人々をまとめ上げることのできる人材です。グローバルリーダーの定義や必要なスキル、育成方法を解説します。

昨今、ビジネス環境のグローバル化が進んでいます。海外の取引先と折衝したり、自社商品の海外展開を検討したりする企業も多いのではないでしょうか。

こうした環境で重要視されているのが、グローバルリーダーです。グローバルリーダーとは、グローバルな環境で人々をうまくまとめ上げ、組織を成功に導く人材を指します。

グローバルリーダーの定義や必要なスキル、企業での具体的な育成方法を体系的に解説します。

グローバルリーダーの定義

まずは、「グローバル人材」や「グローバルリーダー」の定義についておさらいしましょう。

グローバル人材とは

そもそも、「グローバル人材」とはどのような人材を指すのでしょうか。

グローバル人材とは、一言で表現すれば「国籍による言語や文化、価値観の違いを乗り越えながら活躍できる人材」のことです。文部科学省の公表した資料では、より細かく次のような定義が示されています。

日本人としてのアイデンティティを持ちながら、広い視野に立って培われる教養と専門性、異なる言語、文化、価値 を乗り越えて関係を構築するためのコミュニケーション能力と協調性、新しい価値を創造する能力、次世代までも視野に入れた社会貢献の意識などを持った人間
(文部科学省「産学官によるグローバル人材の育成のための戦略」より引用)

この定義からも分かる通り、国籍の違いを超えて周囲と関係構築し、価値創造できることがグローバル人材にとって重要です。

参考:文部科学省「産学官によるグローバル人材の育成のための戦略

グローバルリーダーとは

グローバルリーダーとは、高いリーダーシップを持ったグローバル人材のことです。

前述したグローバル人材の中でも、周囲をまとめ上げ、導く能力が特に高い人材ともいえます。単純に「英語が話せる」「海外経験がある」だけでは不十分で、自分とは異なる背景を持った人々の価値観を理解し、それぞれの強みを活かしながらチーム全体のパフォーマンスを最大化することが重要です。

例えば「日本人だけのチーム」と、「アメリカ人と日本人が半分ずつのチーム」を管理する場面を比較してみましょう。

前者では共通の価値観や働き方が存在しますが、後者では労働に対する考え方やコミュニケーションのスタイル、さらには宗教なども大きく異なります。この複雑な環境でも明確なビジョンを示し、全員が納得できる形でチームを牽引できる人材こそが、真のグローバルリーダーです。

グローバルリーダーが注目されている背景

昨今、グローバルリーダーの重要性が急速に高まっています。グローバルリーダーが重要視されている主な理由は、次の2点です。

  • グローバル化の進展
  • ダイバーシティの推進

それぞれの背景について、順に解説します。

グローバル化の進展

昨今、ビジネス環境のグローバル化が一層進んでいます。

最近では、中小企業でも海外市場への参入が容易になりました。また、少子高齢化の影響で多くの日本市場は縮小傾向にあると言われており、成長する海外市場を狙うメリットも大きくなりつつあります。

ビジネスを海外展開する際には、現地のチームを統率できるリーダーの存在が欠かせません。単に本社からの指示を伝達するのではなく、現地の文化や商習慣を踏まえて現場をマネジメントできるリーダーが必要で、こうした人材の価値が非常に高まっています。

ダイバーシティの推進

最近は、ダイバーシティ推進の動きも加速しています。

例えば日本拠点で積極的に外国人エンジニアを採用したり、技能実習生を受け入れたりする企業は多いです。役員に海外人材を抜擢するケースもありますし、海外拠点と連携して多国籍のチームを編成することもあるでしょう。場面を問わず、異なる国籍の人材と働く機会は格段に増えつつあります。

多様性のあるチームは競争力が高いと言われていますが、その分マネジメントの難易度が高いのも事実です。日本人チームのマネジメントが上手いからといって、必ずしもグローバルなチームのマネジメントが上手いとは限りません。

多様性を競争力につなげていくためにも、全員の価値観や特性を正しく理解したうえで、柔軟にチームを運営できるグローバルリーダーが求められているのです。

グローバルリーダーに必要な6つの要素

グローバルリーダーにはさまざまな能力が必要ですが、大きく「マインド・スキル」「自分・環境」という2つの軸に分類できます。

これらに沿ってグローバルリーダーに必要な要素を分類したのが、下表です。

マインドスキル
自分グローバルなマインドセット外国語での対話力・発信力コンセプチュアルスキルテクニカルスキル
環境異文化コミュニケーション能力ヒューマンスキル

グローバルリーダーを育成する際は、これらをバランスよく伸ばすことが大切です。

ここからは、グローバルリーダーに必要な6つの能力について解説します。

【マインド】グローバルなマインドセット

グローバルリーダーには、グローバルなマインドセットが必要です。

グローバルなマインドセットとは、世界で活躍する際に必要な思考や心構えのことを指します。主に、次の3つから構成されます。

  • 知的資本
  • 心理的資本
  • 社会的資本

知的資本とは、それぞれの国の歴史や政治・文化的な背景に関する知識です。各国の文化や歴史について知ることは、その国の国民性や価値観などを理解するための第一歩です。

心理的資本とは、異文化について興味を持ち、交流する心構えのことです。平たく言えば、「異文化交流を楽しむ姿勢」とも言えます。

3つめの社会的資本とは、自らと異なる文化的背景を持つ人を巻き込む能力のことです。いずれも、国籍の異なる人材をマネジメントするのに欠かせない素質です。

グローバルなマインドセットを持った人材になるためには、これら3つの要素を磨く必要があります。

【マインド】異文化コミュニケーション能力

異文化コミュニケーション能力も、グローバルリーダーにとって重要な資質の一つです。語学力の有無とは関係なく、異なる価値観を持った相手とビジネスを前に進めるために必要な信頼関係を構築できるかどうかを指します。

例えばリーダーとして、様々な国籍のメンバーに指示を出す場面を考えてみましょう。日本人の部下が相手であれば、「もっと頑張って」といった曖昧な指示でやる気を鼓舞できるかもしれません。

しかし、外国籍のメンバーにはこうした指示が響かないことも多いです。「今月中に新規顧客を3社獲得して売上高を10%向上してください」といった数字に基づく指示が響く場合もありますし、雑談を交えながら「チーム全体で頑張りましょう」といった雰囲気作りを行うのが効果的な場合もあります。

もちろん、単に「この国の人はこのような指示が良い」と型に当てはめるのではなく、相手の様子を見ながら個々のスタイルに合わせることが重要です。優秀な異文化コミュニケーション能力を持ったリーダーは、相手の文化的背景を推し量りつつ、相手にとって心地よいコミュニケーションを徹底することができます。

【スキル】外国語での対話力・発信力

語学力は、グローバルリーダーにとって必須のツールです。外国籍のメンバーと信頼関係を構築するうえで、最低限の語学力は必要不可欠だと考えておきましょう。

もちろん、単にペーパーテストの点が高ければよいというわけではありません。例えばTOEIC900点を持っていても、英語での会議であまり発言できない日本人の管理職は多いです。逆にTOEICが700点程度でも堂々とプレゼンテーションを行い、グローバルなチームを牽引するリーダーも存在します。

資格試験やテストの点数だけにとらわれず、実務で英語を利用する経験を積むことが大切です。

【スキル】コンセプチュアルスキル

ここからは、主にリーダーとしての素質に深く関わる3つの要素です。まず、コンセプチュアルスキルをご紹介します。

コンセプチュアルスキルとは、複雑な問題を体系的に整理し、本質を見抜く能力のことです。リーダーシップに関する一般論でも語られることの多い概念ですが、特にグローバルな環境では複雑な課題に直面することが多いため、この能力が特に重要になります。

コンセプチュアルスキルを磨くためには、「抽象化」と「具体化」を意識することが重要です。一朝一夕に身につくものではないので、日頃から物事を論理的に捉えるクセをつけ、時間をかけて伸ばしていく必要があります。

【スキル】ヒューマンスキル

ヒューマンスキルは、周囲と良好な人間関係を築くための能力です。

ヒューマンスキルの高いリーダーは、相手の話に傾聴して共感することができます。部下は「自分のことを理解してくれているな」と感じるため、リーダーとの間に信頼関係が生まれやすいです。また、他者へ自分の考えを発信することも上手いので、交渉やプレゼンテーションも得意です。

ヒューマンスキルを磨くためには、ロールプレイングやコーチングの練習などを重ねることが効果的です。また、書籍や研修を通じて、コミュニケーションの理論について学ぶのもよいでしょう。

【スキル】テクニカルスキル

テクニカルスキルは、業務を遂行するのに必要な専門知識や技術のことです。

グローバルリーダーの場合、自身の専門分野の知識に加え、以下の知識がテクニカルスキルに該当します。

  • 国際法務・税務
  • 貿易
  • 各国の商習慣

特に、各国の商習慣や法規制に関する基礎知識はグローバルリーダーにとって重要です。例えば中東でビジネスを行うのであれば、日本とは大きく異なるイスラム金融の仕組みについて理解する必要があります。欧州ではGDPRなどの個人情報保護の要件が厳しいですし、中国では土地制度が日本とは全く異なります。

国境を超えてビジネスを行うためには、各国の諸制度に関する知識が必要不可欠なのです。

グローバルリーダーを育成する方法

グローバルリーダーには多くの素質が必要なことがわかりました。それでは、どうすればこれらを備えたグローバルリーダーを育成できるのでしょうか。

グローバルリーダーを育成する方法は、主に以下の3つです。

  • 海外への赴任を経験してもらう
  • eラーニングなどで語学力を強化する
  • 越境学習にチャレンジしてもらう

それぞれについて、詳しく解説します。

海外への赴任を経験してもらう

海外赴任は、グローバルリーダーを育成する際に効果的な方法の一つです。

現地での生活を通じて、異文化理解力や適応力を身につけることができます。現地スタッフの管理や取引先との交渉も経験できるため、テクニカルスキルやヒューマンスキルも効果的に伸ばすことが可能です。マインド面にも大きな変化が生まれるでしょう。

海外赴任を経験させる際は、赴任前にしっかりと座学研修などで基礎を固めることが大切です。また、赴任中のサポートも忘れないようにしましょう。月に1回程度のペースで本社との定期面談を行ったり、現地での困りごとを相談できる先輩をメンターとして配属したりするのが効果的です。

eラーニングなどで語学力を強化する

語学力は、海外で勤務する際にすべての土台となる基礎スキルです。グローバルリーダーを育成する際には、eラーニングなどを活用しながら語学力を強化してもらいましょう。

ただし、赴任前に語学を完璧にしなければいけないというわけではありません。実際の業務の中で語学力が伸びるのはよくあることなので、ある程度一人でコミュニケーションを取れるようになったら実践に取り組んでもらうのも一つの手です。英語であれば、TOEICで730点程度が一つの目安となります(※)。

※ 参考:企業・団体の主なTOEIC Program活用目的 

越境学習にチャレンジしてもらう

越境学習は、ベンチャー企業やスタートアップ企業で3ヶ月〜6ヶ月程度の研鑽を積む人材育成手法で、グローバルリーダーの育成にも効果的です。

越境学習に参加すると、普段とは異なる環境の中、ベンチャーやスタートアップの限られたリソースで成果を出すことが求められます。そのため、変化への対応力やマインド面のタフさが向上するのです。普段は関わらない人材と関わることになるため、自分と異なる背景を持った人と協働する能力も高まります。

また、海外赴任は社員にとって心理的なハードルが高いものです。越境学習を導入すれば「異なる環境へチャレンジするハードル」を下げることができるため、社員も海外への挑戦を積極的に考えるようになるかもしれません。

日本国内のスタートアップであっても、海外進出や外国人社員の雇用を通じて、外国語によるコミュニケーションが社内で行われていたり、外国人社員やパートナーと協働したりする環境を有しているケースもあります。

グローバルリーダーを育成したいと考えている企業担当者の方は、ぜひ越境学習を導入してみてはいかがでしょうか。

弊社エンファクトリーでは、越境学習の進め方やポイントをわかりやすくまとめたガイドブックをご用意しております。越境学習に少しでもご興味がある方は、ぜひ以下のガイドブックをご覧ください。

はじめての越境学習ガイドブック

まとめ

ビジネス環境のグローバル化が加速する中、グローバルリーダーは企業にとって貴重な人材です。海外の企業と対等に渡り合うことのできる人材は、今後もますます重要視されるでしょう。

グローバルリーダーは、単に語学力や海外経験を身につけているだけでは不十分です。異文化コミュニケーション能力やグローバルマインドセット、そしてさまざまな専門スキルを体系的に身につけることで、はじめて多様なメンバーを牽引できる優秀なリーダーになることができます。

ぜひこの記事を参考に、自社に最適なグローバルリーダーの育成を進めてみてください。

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