OJTに代わる新たな人材育成手法として注目を浴びているOJL。しかし、そもそもOJLの定義が曖昧だったり、OJTとの違いがいまいちピンと来ない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、OJLの定義やOJTとの違い、具体的な進め方を徹底解説します。OJLに成功した企業事例も解説するので、ぜひ最後までお読みください。
目次
OJLとは?
OJLとは、社員が実際の業務を通じて主体的に学習することです。「On the Job Learning」の略語で、直訳すると「実務を通じた学習」となります。
例えば、営業担当者が新規顧客を開拓する手法を学ぶ場面を想像してみてください。これまでのOJTでは、上司が「このように営業してみなさい」とやり方を見せることが一般的でした。しかし、OJLでは営業担当者自身が「どうすれば顧客により価値を提供できるか」を考え、自ら実践しながら次の行動を決めていきます。
OJLは最近注目され始めた概念ですが、これほどまでに脚光を浴びている理由は、従来のOJTの限界が認識され始めてきたからです。これまでのOJTでは、業務に必要なスキルや知識を習得することに重きが置かれてきました。
しかし、最近ではAIやDXの進展によって、ビジネスパーソンに求められるスキルは時々刻々と変化しています。こうした状況では、決められた手順を覚えるだけでなく、状況に応じて柔軟に学び続ける力が必要です。
OJLは、この「学び続ける力」を伸ばすための育成手法です。主体的な学習を促しながら、「実務を通じて学び続けることのできる人材」になってもらうことを目指します。
OJT・OJDとの違い
OJLは、OJTやOJDと混同されることも少なくありません。
これらには、以下のような違いがあります。
| 主体 | 進め方 | 目的 | 期間の目安 | |
| OJT | 指導者 | 指導者がやり方を見せる | 特定のスキルを習得する | 1〜3ヶ月 |
| OJD | 指導者 | 実務を通じて計画的に能力開発する | 体系的に能力開発する | 1〜2年 |
| OJL | 学習者 | 自主的な経験学習を促す | 主体的な成長を促進する | 1年以上 |
例えば新入社員がExcelの操作を教える場面を考えてみましょう。OJTでは先輩が横について、「この関数を使って、こう入力してみてください」と手順を教えます。OJDでは「データ分析業務を通じて、Excelスキルを身につけてもらいます」と計画的に業務を割り当てることが多いです。一方、OJLでは新入社員自身が「この業務をもっと効率化したい」と考え、自らExcelの機能を調べて試行錯誤しながら学んでいきます。
上記の例からも分かる通り、OJT・OJDとOJLの最も大きな違いは、取り組みの主体が指導者側にあるか学習者側にあるかです。OJTとOJDは主に指導者が中心となって進めますが、OJLは学習者側の主体的な行動が学びの源泉となります。
OJLに取り組む際は、この「主体性を引き出す」という点を意識してみましょう。
OJLにおける学習サイクル
OJLでは、下記のサイクルに沿って学びを深めていきます。
- 業務を経験する
- リフレクションを行う
- 得られた知識を体系化する
ここからは、OJLにおける学習サイクルを見ていきましょう。
なお、このサイクルは「経験学習モデル」とも密接な関係があります。経験学習モデルについて詳しく知りたい方は、以下の記事もお読みいただくとさらに理解が深まるでしょう。
業務を経験する
OJLの第一歩は、実際の業務に取り組み、学びにつながる経験を得ることです。
ただし、単純に業務をこなすだけでは学習効果が限られてしまいます。例えば、既に慣れたルーティンワークに取り組むだけではほとんど学びは得られません。質の高い経験を得るためには、現在のスキルレベルよりも少しだけ背伸びした「ストレッチゾーン」の課題に取り組むことが大切です。
例えば異なる部署やプロジェクトに参加したり、リーダー役を引き受けたりすることが効果的です。機会があれば、新規事業開発にチャレンジするのもよいでしょう。
リフレクションを行う
経験を積んだ後は、「リフレクション」の段階に入ります。リフレクションとは、自らの経験を客観的に振り返ることです。
リフレクションを行う際には、KPT法やPDCA サイクルなどのフレームワークを活用するとよいでしょう。フレームワークを活用することで、自分の経験が頭の中で構造的に整理しやすくなります。
加えて、同僚や上司との対話を通じたリフレクションも効果的です。例えば「1日の終わりに上司と10分間、その日の経験を共有する」といった仕組みを設けると、社員は客観的な視点から自分の経験を振り返ることができるでしょう。
なお、日々の業務に追われていると、どうしても十分な振り返りができません。リフレクションを促進するためには、リフレクションの時間を確保する仕組みを作ることと、日々の業務量を適度に調整することの2点が大切です。
得られた知識を体系化する
リフレクションが終わったら、そこで得られた学びを体系的に整理し、今後の業務に活用できる形に落とし込みます。知識を体系化することで、次の業務に生かせる「教訓」を得ることが肝心です。
知識を体系化する際は、単に頭の中で経験を反芻するのではなく、何らかの形で書き出してみることをおすすめします。例えば、学習ノートやメモ、日報などを活用するとよいでしょう。営業であれば、顧客との商談から得た学びを「顧客タイプ別のアプローチ方法」として整理し、次回の商談に活かせる形にまとめるといった方法が考えられます。
また、個人の学びを組織全体で共有するのも効果的です。社内Wikiを活用したり、研修で事例共有の時間を設けたりして、得られた経験を組織で横展開する仕掛けを作りましょう。
OJLの実施方法は大きく4つ
OJLにはさまざまな実施方法がありますが、特におすすめなのは以下の4つの手法です。
- プロジェクトへの参加
- ジョブローテーションの実施
- 社内副業制度の導入
- 越境学習への参加
ここからは、OJLの具体的な進め方を解説します。
プロジェクトへの参加
プロジェクトへの参加は、OJLの中でも最も導入しやすい手法の一つです。普段とは異なる課題に取り組むことで、多様な学習機会を得ることができます。
プロジェクトへの参加を通じてOJLを進める際は、以下の3点を意識してみてください。
- 社員に適したレベルのプロジェクトをアサインする
- リフレクションの時間を必ず確保する
- 学びを生み出すための「遊び」をもたせる
最初にお伝えした通り、OJLで最も重要な点は社員が主体的に学ぶことです。
仮に社員の実力を大きく超えた役割を与えてしまうと、社員は目の前の仕事をこなすだけで精一杯になってしまいます。社員が「自分なりに創意工夫を加えよう」と考えるのは、与えられた役割に対してある程度の「余裕」があってこそです。
社員の経験なども加味しつつ、実力にマッチした役割を与えることを意識してみましょう。
ジョブローテーションの実施
ジョブローテーションとは、社員にあえて異なる部署や職務を経験してもらうことで、幅広い知識とスキルの習得を促す育成手法です。
OJLの一環としてジョブローテーションを実施する際は、社員の主体性を尊重するよう意識してみてください。例えば社員が自分の希望に基づいて異動先を選択できるようにしたり、短期間のトライアルを通じて異動先の部署とのマッチングを確認できるようにしたりすることが効果的です。
社内副業制度の導入
社内副業も、OJLを実施する際におすすめの方法です。
社内副業とは、社員が本来の職務と並行しながら、社内で別の業務に取り組む制度です。社内で気軽に新しい経験を得られることから、最近では導入企業が増えてきています。
OJLで社内副業を実施する場合は、ジョブローテーションと同様に社員の主体性を尊重する仕組みを用意しましょう。副業先を自分で選択できるようにすることはもちろん、副業先でもある程度の裁量を与えるなど、「言われたことをこなすだけ」にならないように注意してください。
弊社エンファクトリーでは、はじめて社内副業を解禁する方に向けたガイドブックをご用意しております。社内副業を実施する際に役立つ情報が満載なので、ぜひ下記から資料をご覧ください。
越境学習への参加
越境学習は、社員がベンチャーやスタートアップに留学する手法です。期間は3ヶ月〜6ヶ月が多く、その間はベンチャーやスタートアップの一員としてリアルな課題解決に取り組みます。
越境学習の最大のメリットは、自社と異なる風土を肌で体感できることです。実際、越境学習に参加すると「ベンチャー企業のスピーディーな意思決定に驚いた」「人間関係がフラットで新鮮だった」と感じる方も少なくありません。
留学先の企業では普段と全く異なる業務に取り組むため、社員は自然と「自分にできることはなんだろうか?」と考えるようになり、主体性が向上します。OJLを実施する際は、ぜひ越境学習の導入も検討してみてください。
エンファクトリーでは、越境学習の導入に役立つガイドブックも公開しています。ぜひ、下記のリンクからご覧ください。
越境学習・社内副業でOJLに成功した事例3選
弊社エンファクトリーでは、これまで越境学習や社内副業を通じて、社員の主体的な成長を支援して参りました。
ここからは、それらの中から特に参考となる事例を3つ厳選してご紹介します。越境学習や社内副業の具体的な進め方について知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
【社内副業】静岡ガス株式会社
静岡ガス株式会社では、2024年2月から社内副業を試行運用しています。
同社が社内副業制度を導入している理由は、主に以下の2点です。
- 「挑戦する文化」を醸成する
- 社員のスキルアップと部門間の相互理解を促進する
同社では、まずキャリア自律に関するレクチャーなどを通じて、自律的な学びへのモチベーションを形成しました。その後、ワークショップの実施や社内副業案件の説明会の開催を通じて、社内副業へ挑戦するきっかけを作っています。
制度の運用中は、インタビュー記事の作成やセミナーの開催などを通じて、社内副業の浸透にも力を入れました。弊社エンファクトリーでは、社内副業を管理する「Teamlancerエンタープライズ」の提供などを通じて支援させていただいています。
【越境学習】SMBCコンシューマーファイナンス株式会社
2021年から越境学習サービス「複業留学」を導入して頂いている、SMBCコンシューマーファイナンス株式会社。
導入したきっかけは、「金融サービスを取り巻く環境が激しく変化する中で、社員には自ら殻を破って成長してほしい」という思いからでした。複業留学に参加する社員は公募型で募集し、社員に主体的な姿勢を身につけてもらうことを目指しています。
同社で人事を務める濱様は、複業留学の効果について次のように言及しています。
今回、留学生はECサイトのマーケティングを経験しました。活動を通じて本人のキャリアを考える機会となったようで、社内で公募型の異動に手を挙げました。複業留学が、本人のモチベーションと視野拡大に繋がったと思います。
今後も、複業留学を通じて自発的に行動できる人材を増やし、組織へ取り組みを波及させていきたいと考えているそうです。
本事例についてさらに詳しく知りたい方は、次のインタビュー記事をご覧ください。
【越境学習】サッポロビール株式会社
サッポロビール株式会社の水谷様は、上司から越境学習を進められたことや、自分のスキルや実力が社外でも通用するか確かめたいという思いをきっかけに、「越境サーキット」への参加を決めました。
越境サーキットは、エンファクトリーの実施する越境学習プログラムです。本事例では三重県のプライベートサウナの運営に携わり、売上向上に取り組んでいただきました。
水谷様は、越境学習を経て以下のような学びを得られたそうです。
少しの勇気で一歩踏み出すことの重要性に気づけたことが、最も価値のある学びでした。自信がなくても行動を起こすことがどれほど意義深いかを実感し、新しいことに挑戦する心理的なハードルが大きく下がったと感じています。
行動することの大切さを学ぶことで、OJLに必要な主体性の獲得に成功した事例です。本事例の詳細は、次のページからご覧ください。
まとめ
OJLについて、定義や具体的な進め方などをご理解いただけたでしょうか。
2020年代に入り、従来型のOJTにはさまざまな限界があることが明らかになりました。OJLは、そんなOJTの限界を乗り越えることのできる、新しい人材育成手法です。
この記事でも解説したように、OJLにはさまざまな実施方法が存在します。プロジェクトへの参加やジョブローテーションはもちろん、社内副業や越境学習へ参加してもらうのも手です。
ぜひ自社にぴったりな手法を選択し、自ら学ぶことのできる社員を増やしていきましょう。





