【企業事例あり】企業における自己啓発支援とは|企業が支援するメリットや具体的な方法、実際の取り組みを詳しく解説

キャリア自律

「人生100年時代」とも言われる昨今、企業における人材育成の形も変化しつつあります。その中でも特に注目を浴びているのが、自己啓発支援です。

企業が社員の自己啓発を支援すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。

本記事では、自己啓発を企業が支援するメリットやデメリット、具体的な事例をご紹介します。

自己啓発とは?

自己啓発とは、個人が自ら知識やスキルを身につけ、成長を目指す活動のことです。従来の社内研修やOJTとは異なり、社員が主体的にテーマを選び、自分のペースで学びを進めることができます。

具体的な進め方はさまざまですが、代表的な手法は次のように分類できます。

座学重視実践重視
個人・読書
・資格取得
・ワーケーション
・副業・兼業(個人)
複数人・オンライン講座の受講
・セミナーへの参加
・越境学習
・副業・兼業(企業)

経済産業省と中小企業庁が公表した研究会報告書でも言及されている通り、現在では一度身につけたスキルや知識がすぐに陳腐化する傾向があります。VUCAの時代において価値を発揮し続けるためには、常に自分自身を磨き続け、時代に合わせた能力を身につけることが必要不可欠です。

参考:経済産業省・中小企業庁「我が国産業における人材力強化に向けた研究会」報告書 (2018)

2025年における自己啓発支援の現状

2025年現在、社員の自己啓発を支援する企業は増加傾向にあります。

厚生労働省が2025年6月に公表した「能力開発基本調査」によると、自己啓発支援に費用を支出した企業の割合はここ5年で次のように推移しました。

2020年度24.8%
2021年度24.6%
2022年度23.8%
2023年度25.7%
2024年度27.2%

参考:厚生労働省「令和6年度 能力開発基本調査」(2025)

上記の結果を見ると、企業における自己啓発支援のトレンドは2022年度に一度落ち着いたものの、そこから2024年にかけて急激に広がりを見せていることがわかります。

また、同調査では自己啓発支援に対して支出した金額の平均にも言及されており、こちらは2024年時点で「労働者1人あたり、平均で年間0.4万円」という結果になりました。

企業が自己啓発を支援するメリットは多い

企業における自己啓発支援が進んでいることがおわかりいただけたと思います。しかし、自己啓発はあくまでも社員が個人で行う取り組みであり、企業が支援するメリットは一見薄いように思えるかもしれません。

それでは、どうして自己啓発支援を行う企業が増えているのでしょうか。

企業が自己啓発支援を行う理由は、下記のようなメリットが期待できるからです。

  • 社員のキャリア自律を促進できる
  • 変化への対応力が上がる
  • 優秀な社員の離職を防止できる

具体的に見ていきましょう。

社員のキャリア自律を促進できる

企業が社員の自己啓発を支援するメリットとして、社員のキャリア自律を促進できる点が挙げられます。

キャリア自律とは、社員が自分自身のキャリアに対して当事者意識を持つことです。これまで一般的だった「会社が用意したレールに乗る」という受け身のキャリア観から脱却し、「自分で道筋を描き、必要なスキルを身につける」という能動的な姿勢へすることを意味します。

社員が自己啓発に取り組むと、身につけたスキルを軸に自分のキャリアに道筋をつけることができます。例えば国際的な部門で活躍したいと考えている社員がいたとしても、忙しい仕事の合間を縫って英語を学び始めるのはハードルが高いものです。一方で社内に語学学習を支援する制度があれば、「まずはこれでやってみよう」と最初の一歩を踏み出しやすくなるでしょう。

変化への対応力が上がる

自己啓発を行うことは、変化への対応力を高める観点からも大切です。

DXやグローバル化によって産業構造が大きく変化している昨今、求められるスキルや知識が激しく変化しているのは言うまでもありません。また、現在はいわゆる「人生100年時代」です。職業人生は長期化する傾向にあり、ますますリスキリングの重要性は増しています。

こうした背景から、企業は戦後から続くOJTや座学研修だけに頼ることが難しくなりました。現在のスピード感に対応するためには、社員が自ら「何を学ぶべきなのか?」を考え、自分のペースで柔軟に学習を進める必要があります。

社員の自己啓発を支援することで、OJTや座学研修ではカバーしづらい専門知識や最新の知識を効率よく身につけることができるのです。結果的に個人の能力が伸び、組織全体としての変化に対する対応力も向上します。

なお、リスキリングを進める方法は、下記の記事でも解説しています。詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

優秀な社員の離職を防止できる

昨今、人材の流動性が高まりつつあります。

これまで日本における雇用の流動性は比較的低いとされてきましたが、最近のグローバル化や労働力不足の影響を受け、雇用の流動性を高める動きも随所で見られます。フリーランスなど新たな働き方も登場していますし、転職回数が多くても以前ほどマイナス評価を受けづらくなりました。端的にいえば、社員にとって転職に対するハードルが下がっているのです。

このような中で企業の競争力を維持するためには、優秀な社員をなんとしてでもつなぎとめなければいけません。一般的に優秀な社員ほど成長意欲は高く、自己啓発にも積極的に取り組む傾向があります。

優秀な社員に対して「この企業は自分の成長を支援してくれるな」「自分のやりたいことが実現できる環境だな」と思ってもらうためには、企業が自己啓発を支援することが有効なのです。

自己啓発にはデメリットや注意点も

企業が社員の自己啓発を支援することには、いくつかのデメリットや注意点があるのも事実。

例えば自己啓発では、「学ぶこと」自体が目的化しがちです。自分の興味の赴くままに勉強を進めるあまり、いつの間にか学んでいる内容が趣味に近いものへ偏ってしまうことがあります。「何のための学習なのか」を忘れないようにすることが大切です。

また、費用や時間のバランスも勘案する必要があります。企業による自己啓発支援といっても、無制限で社員の書籍購入費やセミナー参加費を補助するわけにはいきません。また、自己啓発に時間を取られるあまり、本来の業務がおろそかになってしまっては本末転倒です。支援金額や内容に制限を設ける、自己啓発を支援する回数に上限を設けるといった対策が求められます。

社員の自己啓発を促進する具体的な方法

自己啓発支援の方法は多岐にわたります。

ここからは、社員の自己啓発を促進するための具体的な方法を4つに分けて解説します。

公募型研修の実施

公募型研修の実施は、自己啓発を支援する方法の一つです。

公募型研修は社員が自らの意思で参加を決められるので、意欲を持った社員を集めやすいという特徴があります。また、さまざまな部門から社員が集まるため、普段顔を合わせない社員同士の交流を促進できる点もメリットです。

公募型研修を実施する際には、事前に社員へアンケートを実施して、社員がどのようなテーマに興味を持っているのか調査するとよいでしょう。

自己啓発休暇制度の導入

自己啓発を支援する方法の一つとして、「自己啓発休暇」を導入する企業もあります。

自己啓発休暇は、主に資格取得や海外留学、長期の研修参加を理由に、職場を一定期間離れることを認める制度です。この間は日常業務から完全に離れることができるため、社員は勉強に集中することができます。

実は公務員にも「自己啓発等休業制度」と呼ばれる同様の制度が導入されており、国際貢献や大学・大学院入学を理由に最長3年までの休暇を取得することが可能です。

セミナーや書籍などの費用補助

セミナー参加や書籍購入に対する費用補助も、効果的な自己啓発支援の方法の一つです。

ただし、効果的に運用するためには一定のルールを設ける必要があります。例えば「支援額は最大で年間5万円まで」といった金額面での制限を設けてもよいですし、「学習内容が直接業務に活きるなら100%補助する」といった内容に関する制限をかけるのもよいでしょう。

また、資格取得を費用補助の条件にする企業もあります。例えば「基本情報処理技術者試験に合格したら、書籍購入と受験費用を会社が全額負担する」といったパターンです。自己啓発は途中で諦めてしまう社員も多いので、資格取得の条件を設けることで、学習を継続するインセンティブを与えることができます。

副業や兼業の容認

ややハードルが高いかもしれませんが、副業や兼業の容認も自己啓発支援を支援する方法の一つです。

以前は副業や兼業を禁止する企業が多かったですが、昨今ではこれらを容認する流れが進んでいます。実際、2022年に経団連が実施した調査によると、副業を「認めている」「認める予定」と回答した企業は1,509社中の約70.6%に達しました。

副業や兼業では、座学では得られない「生きた」ビジネス経験を積むことができます。実際の仕事を通じて学んだ経験は、本業にも直接活かしやすく、企業にとってもメリットが大きいです。

ただし、副業解禁の際には利益相反や機密情報の漏洩に対するリスク管理も求められます。

弊社エンファクトリーでは、副業を解禁する際に知っておいていただきたい知識をまとめた弁護士監修のガイドブックをご用意しております。ご興味がある方は、以下のページからダウンロードしてください。

参考:労働政策研究・研修機構「副業・兼業に関するアンケート調査」(経団連実施)

社員の自己啓発に成功した事例

ここからは、企業が社員の自己啓発支援に成功した事例を見ていきましょう。弊社エンファクトリーが支援した事例を中心にご紹介します。

SMBCコンシューマーファイナンス株式会社

SMBCコンシューマーファイナンス株式会社の平田様は、普段コールセンター業務に取り組んでいます。日頃から知的好奇心が高く、公募型研修を眺める中で「複業留学」という越境学習プログラムに魅力を感じて参加を決めました。

複業留学は、3ヶ月間かけてベンチャーやスタートアップへ留学し、留学先企業の一員として課題解決に取り組むプログラムです。平田様のケースでは、留学先企業のインターン生の育成やイベント企画に取り組んでいただきました。

留学前には少し不安を感じていた平田様ですが、実際に越境学習を経験すると自身と周囲のマインド面に大きな変化が生まれたそうです。

私は以前から新しいことに積極的に取り組むタイプでしたが、複業留学を通じてさらにその姿勢が強まったと感じています。(中略)自分が複業留学を行っていることをグループのメンバーにメールで共有したところ、興味を持ってくれた人が多かったです。複業留学について知らなかった人たちにもその存在を知ってもらうことができ、自己啓発に対する意欲を底上げできたと感じています。

越境学習へ参加した一人の社員をきっかけに、組織全体へ自己啓発の機運が醸成された事例です。

本事例の詳細は、下記のインタビュー記事よりご覧ください。

株式会社オリエントコーポレーション

債権回収センターで支店長を務める株式会社オリエントコーポレーションの竹田様。自分自身のキャリアが社内に縛られているという危機感から、越境学習で社外へ挑戦したいと考え、複業留学へ参加しました。

竹田様のケースでは、地域創生プロジェクトや自治体に向けた提言に取り組んでいただいています。本業との時間調整にやや苦労したそうですが、留学後には自身の成長を実感しました。

留学後のインタビューでは、留学前後の変化について次のようにお答えいただいています。

地域貢献への意識が高まり、自身の成長を実感できました。また、当社の新しい理念への共感や目指す方向性がより明確になりました。自分自身が仕事を楽しむことで周りへも好循環が生まれ、そのような風土づくりの重要性を感じました。

自らの意思で越境学習へ挑戦して成長を実現した、自己啓発の好事例です。本事例の詳細は、次のページからご覧いただけます。

株式会社三菱東京UFJ銀行

三菱東京UFJ銀行では「世界に選ばれる、信頼のグローバル金融グループへ」をスローガンに、行員の成長と挑戦をサポートするための人材育成制度を整えています。その一環として導入しているのが、自己啓発支援です。

同行では、主に以下の4つの自己啓発支援プログラムを用意。

  • 「学びの場」の提供(ELP研修)
  • 資格取得支援
  • 語学学習
  • e-learning

このうち資格取得支援では、公認会計士や証券アナリスト、ファイナンシャルプランナーなどの資格取得に成功した社員に対し、報奨金を支給しています。語学学習ではTOEIC IPテストを全行で実施するなど、効果測定に務めているのが特徴です。

参考:厚生労働省「キャリア支援企業 好事例集 」(2015)

まとめ

自己啓発について、定義やメリット、具体的な方法を詳しく解説しました。

ビジネスに必要な知識やスキルは、激しく変化しています。時代に取り残されないためには、常に社員一人ひとりが主体的な学習を進めることが肝要です。

企業は、できる限り社員が自己啓発に取り組みやすくなるようなサポートを行いましょう。そのためには、副業や兼業の容認、公募型研修の実施やセミナー参加・書籍購入に対する補助などが有効です。その際には、ぜひ越境学習も検討してみてください。

本記事を参考に、ぜひ社員の主体的な成長を支援してみてはいかがでしょうか。

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