越境学習は離職につながる?従業員のキャリア自律と越境学習の関係性を徹底解説

越境学習

越境学習の実施にあたり、よく聞かれるのが「違う会社の良さに気づき、辞めてしまうのではないか」「他の会社の方が、長く活躍できると考えて辞めてしまうのではないか」といった離職に関する質問です。結論から申し上げると、越境学習が離職の直接の原因となる可能性はとても低いです。

この記事では、越境学習と離職の関係性ついて、以下を中心に解説します。

  • そもそも越境学習とは?
  • 越境学習と離職の関係性
  • キャリア支援を促進させる越境学習の取り組みのポイント

この記事を読めば、越境学習の効果、成果に対する理解が深まり、自社での具体的な実施イメージを膨らませることができます。ぜひ参考にしてください。

そもそも越境学習とは?

いつもいる環境(ホーム)とアウェイを行ったり来たりするなかで、ホームでの当たり前や暗黙の了解に気づくという学習方法です。

株式会社エンファクトリーが実施した「越境学習参加者の行動・意識変化レポート~社外プロジェクト参加が促すキャリア自律意識と本業への波及の実態~」では、越境学習参加前と参加後で「95%以上の参加者が、自らのキャリア形成への関心が高まり、さらに具体的なキャリア設計について考えるきっかけとなった」と回答するなど、キャリア自律に有効な施策であることが分かりました。

※調査においては、自律とは能力や経済力などを他者に依存せず行動することであり、キャリア自律は「自らのキャリアを自ら切り開いていく」ことを指しています。キャリア自律は心理と行動の要因で構成されており、それぞれを計測する問いを設計しました。

「越境学習参加者の行動・意識変化レポート」ダウンロードはこちら

越境学習と離職の関係性

このように、越境学習はキャリア自律に有効であることが分かっています。
では、そもそも「キャリア自律」と「離職」はどのように関係しているのでしょうか?

キャリア自律は必ずしも離職につながらない

弊社もイベント等でコラボレーションしている株式会社NEWONEが2024年に実施した「キャリア自律とエンゲージメントに関する調査※2」では、「キャリア自律している層は、していない層に比べて自身の職場の推奨度が約3~4倍高い」ということが明らかになりました。

逆に、「いずれの年代もキャリア自律していない人ほど、現段階での離職傾向が高い」ことも明らかになっています。

また、パーソル総合研究所が2022年4月に発表した「従業員のキャリア自律に関する定量調査※1」では、キャリア自律と転職意向の間に直接的な関係性は見られない、ということが明らかになっています。

一方で、離職につながる要因としては、キャリア自律度だけではなく、本人が自分の市場価値(転職市場における自身の価値認識の高さ)をどう捉えているかが関係していることが分かっています。本調査では、単純に企業がキャリア自律を支援するだけではなく、今の会社で自身の望むキャリア形成ができるという展望を描くサポートをすることが大切だと示唆されています。

越境学習(社外での活動)の経験は、むしろ現職への評価を高める

越境学習(社外での活動)と離職について直接言及している研究結果もあります。

古屋星斗著「会社はあなたを育ててくれない※3」では、社外での活動有無と現職への評価について調査を行い、「社外での活動を経験した人のほうが、経験していない人よりも現職への評価が高い」ことが分かっています。

キャリア自律を促進させる越境学習の取り組みのポイント

ここまで、キャリア自律、越境学習と離職の関係性について整理してきました。
ここからは、キャリア自律を促進させる「越境学習」実施時の2つのポイントについて解説していきます。

1.新しいキャリアにチャレンジできる場としてデザインする

先述のパーソル総合研究所の調査から、企業は単純に従業員のキャリア自律を促進するのではなく「今の会社で自身の望むキャリア形成ができるという展望を描くサポートをすることが大切」ということが明らかになっています。

しかし新しいキャリアを試す場として、すぐに人事異動を行うことは現実的には難しい場合が多いのではないでしょうか。

そこで、越境学習を「社内では経験できない、新しいキャリアにチャレンジできる場としてデザインする」ことが有効です。

例えば、大日本印刷株式会社の中山さんは「自分のスキルを試してみたい」という思いで越境学習に参加し、働くモチベーションが大幅に上がったことと、「私はこれができます」と言えるようなキャリアを積む働き方を実際にするようになった、というポジティブな変化を体感しています。

複業留学体験レポート「新たなキャリアの扉を開く3ヶ月の挑戦」
https://enfactory.co.jp/blog/b8649

2.越境学習の事前と事後において、自社との関連付けを実施する

社外に行くこと自体を目的とするのではなく、事前に従業員が自身のキャリア目標を明確にすること、また、学びを自社で活かせる形で定着させるサポートを行うことが重要です。

例えば、具体的には以下のような取り組みが有効です。

  • 事前
    • 自己分析やキャリア棚卸しを行い、「越境先で何を学びたいか」「どんなスキルを得たいか」を具体的に設定する
  • 事後
    • 越境学習後に従業員が学んだことを共有する場(プレゼンテーションや報告会)を実施する
    • 社内公募制度や新規事業立案などの会社として提供できる場を用意する など

学びを自社で活かせる形で定着させることで、従業員は「自社で成長できる」と感じ、転職意向を抑制することが期待できます。

まとめ

この記事では、越境学習と離職の関係性について改めて整理を行いました。
内に囲い込んで離職を防ぐのではなく、「自らこの組織に所属していたい」と思えるような組織づくりには、越境学習はとても有効な施策の1つです。

エンファクトリーでは、越境学習を専門に、累計270社7,000名の支援を行ってきました。
ご興味のある方は情報収集だけでもぜひお気軽にお問い合わせください。

参照)

※1 パーソル総合研究所,「従業員のキャリア自律に関する定量調査」,2025年2月
https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/career_self-reliance.html

※2 株式会社NEWONE,「キャリア自律とエンゲージメントに関する調査」資料をリリースしました」,2025年2月
https://new-one.co.jp/news/16972

※3 古屋星斗,『会社はあなたを育ててくれない~「機会」と「時間」をつくり出す働きかたのデザイン』,大和書房,2024年11月
https://www.amazon.co.jp/dp/4479798129

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