リーダーシップ研修は意味がない?目的やおすすめのプログラム例、グループワーク・資料作りのポイントをご紹介

サクセッション・リーダー育成

「リーダーシップ研修を実施しても効果が見えない」
「研修プログラムの設計方法がわからない」

このような悩みを抱える人事担当者も少なくありません。

リーダーシップ研修は、企業の次世代を担う人材を育成するうえで必要不可欠な取り組みです。効果的なリーダーシップ研修を実施するためには、何を意識すればよいのでしょうか。

本記事では、リーダー育成におすすめの研修プログラム例を階層別に紹介します。研修を実施する際のポイントも解説するので、ぜひ自社の人材育成にお役立てください。

リーダーシップ研修とは?

リーダーシップ研修とは、リーダーとして組織を牽引するのに必要なスキルとマインドを磨く取り組みです。
例えば、次のような能力を磨きます。

  • 課題解決力
  • チームビルディング力
  • メンバー育成力

経営層や管理職はもちろんのこと、中堅社員や現場リーダーもリーダーシップ研修の対象です。「管理職だから対象になる」というわけではなく、リーダーシップの発揮が期待されるすべての社員が対象になることを理解しておきましょう。

なお、AIの進歩や雇用体系の変化、働き方改革などによって、リーダーに求められる要素は年々変化しています。リーダーシップ研修では、時代の変化に合わせてカリキュラムを毎年アップデートすることが重要です。

リーダーシップ研修の対象者と目的

リーダーシップ研修の対象となる階層は主に4つに分かれ、それぞれで目的は異なります。対象者と目的を整理すると、次の通りです。

対象者目的
経営幹部候補高い視座と経営視点を身につける
管理職組織の中核を担う存在へステップアップする
中堅社員リーダーとしての自覚と責任を身につける
現場リーダーリーダーとしての基礎スキルを吸収する

対象者ごとの研修目的について、詳しく見ていきましょう。

経営幹部候補:高い視座と経営視点を身につける

リーダーシップ研修の対象として、経営幹部候補が挙げられます。主に次期経営層として期待されている、部長やその一歩手前の社員です。

この層の社員にありがちな課題は、主に次の通りです。

  • 企業全体を俯瞰する視点が身についていない
  • M&Aや事業投資などの経営に関する知識が不足している

リーダーシップ研修ではこれらの課題を解決するべく、高い視座と経営の知識を習得してもらうことが重要です。例えばケーススタディやディスカッションを積極的に盛り込み、現役の経営層との対話を促すのがよいでしょう。

とはいえ、経営視点や覚悟は座学だけで身につけることは難しく、リアルな「経営の実践」の機会を設けることが有効です。

経営幹部候補を対象とした具体的な研修プログラム例は、後ほど詳しくご紹介します。

管理職:組織の中核を担う存在へステップアップする

課長層の管理職も、リーダーシップ研修の対象です。

いわゆる「プレイングマネージャー」としての立ち回りが求められるこの層は、個人の成果と組織の成果を両立する必要があります。また、経営層と現場をつなぐ存在として、企業全体のコミュニケーションの中心になるのもこの層です。

管理職を対象としたリーダーシップ研修では、組織の中核を担う人材へのステップアップが鍵となります。チームマネジメントやKPI管理のスキルを高め、20〜30名以上の組織をマネジメントできるようになることが目標です。

中堅社員:リーダーとしての自覚と責任を身につける

中堅社員向けのリーダーシップ研修では、「個人プレイヤー」から「組織のリーダー」への意識改革が最も重要なテーマとなります。

課長の一歩手前の社員は、「優秀な社員=優秀なリーダー」と誤解することがあります。特に技術職や専門職の中堅社員は、「自分の専門性を高めることだけが会社への貢献」と考えることも珍しくありません。したがって、中堅社員にはまず「なぜリーダーシップを学ぶのか?」を理解してもらうことが重要です。

年次が上がるにつれて組織からの期待役割が変化することを伝えましょう。実際にリーダーを任せてみるのも効果的です。

現場リーダー:リーダーとしての基礎スキルを吸収する

現場リーダーを対象とした研修では、リーダーとしての地盤を築くことが目的です。初めてリーダーを経験する人も多いため、まずは日常的に使える内容から教えていきます。例えば、次のような内容がおすすめです。

  • 朝礼での効果的な声かけの方法
  • 業務指示の出し方(5W1Hの活用法)
  • ミスをしたメンバーへのフィードバック方法

研修では、ロールプレイングなどを積極的に取り入れましょう。早い段階から基礎的なリーダースキルを身につけておくことで、中堅社員やそれ以降へのステップアップがスムーズになります。

リーダーシップ研修におすすめのプログラム例

ここからは、リーダーシップ研修におすすめのプログラム例を階層ごとに解説します。リーダーシップ研修の具体的なカリキュラムを考える際の参考にしてください。

経営幹部候補向けのプログラム例

経営幹部候補向けのプログラムでは、「高い視座」と「経営スキル」の2つを身につけることが大切です。次のようなプログラムが考えられます。

フェーズ期間内容
第1フェーズ2日間戦略立案プレゼンテーション
第2フェーズ2日間組織変革を学ぶワークショップ
第3フェーズ3ヶ月間コーチング・OJL(On the Job Learning)

第1フェーズの戦略立案プレゼンテーションでは、まず実際のデータを活用しながら事業戦略策定に携わります。受講者を3〜4名のチームに分け、最終日には実際の役員陣の前でプレゼンテーションを行うのもおすすめです。厳しい質疑応答を体験させ、経営層に求められる説明責任を実感してもらいましょう。

第2フェーズのワークショップでは、「全社的なDX施策の推進」といった大規模プロジェクトの実行方法を学びます。ロールプレイングなども交えながら、多くのステークホルダーを納得させる難しさを学んでもらうのがよいでしょう。

最後のコーチングとOJLのフェーズでは、実際の経営へ携わってもらいます。実際の経営の現場を体感してもらい、経営層に必要な要素を体得してもらいましょう。

ただし、日常業務の中で経営を実践するのは難しいです。経営の実践には出向や異動が効果的ですが、全員分のポストを用意するのも簡単ではありません。

そこで、ベンチャーやスタートアップなどの他社で経営を経験させる「越境学習」による経営経験アプローチが注目を浴びています。実際、経営層の育成施策の一環として、越境学習を取り入れる企業も多いです。

弊社では、越境学習の実施方法やコツをまとめたガイドブックをご用意しています。越境学習について詳しく知りたい方は、ぜひ以下からダウンロードしてください。

はじめての越境学習ガイドブック

管理職向けのプログラム例

管理職向けのプログラムでは、主に以下の内容について学んでもらいましょう。

  • リーダーシップ理論の基礎
  • チームマネジメント
  • 部下育成

おすすめのカリキュラムは次の通りです。

期間内容
リーダーシップ基礎1日間チームビルディング、ファシリテーション
部下育成とコーチング1日間1on1の実施方法、部下への声掛け方法
KPI管理と目標設定半日四半期目標の設定進捗確認の仕組み構築と実践
フォローアップ月1回 ✕ 3ヶ月成功事例の共有など

まずはチームビルディングやファシリテーションといった基礎について学んでもらい、その後はロールプレイングなどを通じて部下育成とKPI管理のスキルを身につけてもらうのが効果的です。

なお、管理職は「研修に参加する時間がない」「部下を残して研修に出るのは気が引ける」といった課題を抱えがち。前向きな姿勢を引き出すためにも、研修内容を実務と密接にリンクさせて、管理職の負担を軽減するのがポイントです。

現場リーダー・中堅社員向けのプログラム例

現場リーダーと中堅社員向けのプログラムでは、リーダーとしての基礎固めを重視しましょう。リーダーシップを実践する機会も設けつつ、座学と実践をバランスよく組み合わせることが大切です。

具体的なカリキュラム例は、次の通りです。

期間内容
基礎リーダーシップ研修2日間リーダーシップの座学リーダーシップスタイル診断
実践リーダーシップ研修1日間実際の課題を題材にしたケーススタディファシリテーションの体験
フォローアップ月1回 ✕ 3ヶ月振り返りセッション

最初は座学を中心に、リーダーシップの基礎的な概念について理解してもらいます。「リーダーシップとは特別な才能ではない」ということ納得させ、リーダーシップの習得に向けたモチベーションを醸成するのがポイントです。その後は、実際に社内で発生した課題などを題材としたケーススタディを実施します。

研修の最後には、「月に一度、チームメンバーの良い点を具体的に伝える」「小さな改善提案を月に1つ以上行う」といったネクストアクションを設定してみてください。その後のフォローアップ期間で目標達成状況を振り返ることで、実務と学びがより密接にリンクするようになります。

リーダーシップ研修を成功させるためのポイント

リーダーシップ研修を成功させるためのポイントは、以下の3つです。

  • 研修の目的を明確化する
  • 継続的にフォローアップする
  • 実践的な場を用意する

それぞれのポイントについて、詳しく解説します。

研修の目的を明確化する

リーダーシップ研修を成功させるためには、研修目的を明確に定義することが大切です。ここまでご紹介した内容を参考に、対象者に応じた研修の目的を考えてみましょう。

ありがちな失敗として、「リーダーシップのスキルを向上させる」といった抽象的な目的設定をしてしまうことが挙げられます。曖昧な目標設定だと、研修の効果測定や改善が難しくなります。

例えば「3年後に新規事業を立ち上げられる人材を目指す」「グローバルな部署を率いるリーダーを養成する」「DX推進人材を育成する」など、可能な限り具体的な人材像を描くのが大切です。管理職や経営層以上の育成では、個別の目標や研修プランを作成するのもよいでしょう。

継続的にフォローアップする

リーダーシップスキルを定着させるためには、研修後の継続的なフォローアップも重要です。
次のような方法で、定期的に研修での学びを思い出してもらいましょう。

  • 後日提出のレポート課題を用意する
  • eラーニングを併用する
  • 研修資料を配布する

レポート課題の内容としては、例えば「研修後の業務中にリーダーシップを発揮した場面を振り返ってもらう」「研修後の変化を自己評価してもらう」といったものが適しています。eラーニングや資料などのコンテンツを作成する際には、後から内容を復習しやすいものとなるように意識してみてください。

実践的な場を用意する

リーダーシップ研修を実施する際は、研修で学んだ内容を実践する場を用意しましょう。
例えば、次のような方法が考えられます。

  • プロジェクトリーダーへのアサイン
  • 部長補佐・課長補佐への抜擢
  • 越境学習

リーダーシップを発揮する場面を用意して、理論と実践をバランスよく取り入れることがポイントです。

なお、参加者ごとに実践の機会は個別に調整しましょう。例えばレベルの高い参加者にはプロジェクトリーダーなどを積極的に経験させ、苦戦している参加者にはより負担の少ないリーダーを任せて小さな成功体験を積んでもらってください。越境学習を活用して、社外でリーダーシップを発揮する場面を用意するのも手です。

リーダーシップ育成には越境学習がおすすめ

リーダーシップの実践機会を用意する際には、越境学習の活用を検討してみてはいかがでしょうか。

越境学習とは、ベンチャー企業やスタートアップ企業へ留学し、3ヶ月〜6ヶ月程度の期間をかけて研鑽を積む人材育成方法です。自社とは異なる環境で課題解決に取り組むことで、課題解決能力やコミュニケーション能力を磨くことができるメリットがあります。留学先の企業の経営に携わることで、経営のリアルを体感することも可能です。

弊社エンファクトリーでは、これまでさまざまな企業で越境学習を支援してまいりました。越境学習のポイントや実施方法をわかりやすくまとめたガイドブックもご用意しておりますので、越境学習にご興味がある方はぜひ以下のリンクからダウンロードしてください。

はじめての越境学習ガイドブック

リーダーシップ育成に越境学習を活用した事例

最後に、越境学習を活用してリーダーシップの育成に成功した事例をご紹介します。

大日本印刷株式会社の秦様は、新規事業開発のプロジェクトチームでリーダーを務めています。ベンチャー企業のスピード感を体験するとともに、自分の能力がどの程度通用するのか確かめたいという思いから、越境学習への参加を決めました。

留学先の企業では、「みんなのまちづくり」プロジェクトへ参画し、地域への移住促進や定着の支援を行っています。留学先企業の風土に触れる中で、秦様のリーダーシップは以下のように変化したそうです。

複業留学を経て、特にチームのメンバーや部下に対して、自分の想いや考えをはっきりと伝えるようになったと感じています。以前は新規事業のチームにおいて調整型のリーダーシップを優先し、部下がやりたいことやモチベーションを重視していました。しかし、今は自分の中にミッションやビジョンをしっかりと持ち、それを堂々と表現することができるようになったと思います。

普段の仕事に取り組んでいると、なかなか自分自身のリーダーシップを見つめ直す機会はありません。本事例は、越境学習で社外の環境に触れたことをきっかけにリーダーシップのスタイルが変化した成功事例です。

本事例のインタビュー全体は、以下のページからご覧いただけます。

複業留学体験レポート「異質な環境が引き出した新たなリーダーシップ」 | 越境学習のご案内 

まとめ

リーダーシップ研修について、目的や内容を階層ごとに詳しく解説しました。

リーダーシップ研修は、企業の未来を担う人材を育成する重要な取り組みです。しかし、リーダー育成には課題を抱える企業も少なくありません。理想とされるリーダーシップは時代に応じて変化するため、この点もリーダー育成の難しさに拍車をかけています。

リーダーシップ研修を実施する際は、研修の目的を明確化するとともに、リーダーシップを実践する場を用意するように心がけましょう。越境学習を活用しながら、社外での実践機会を設けるのも効果的です。

本記事が、リーダーシップ研修について理解を深める際のお役に立てれば幸いです。

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