変革型リーダーシップとは?構成要素・育成方法・事例を徹底解説

サクセッション・リーダー育成

先の見通しづらいVUCA時代において、ビジネスモデルや組織体制の変革が多くの企業に求められています。

こうした状況において求められる資質の一つが、変革型リーダーシップです。変革型リーダーシップを持った社員を育成することで、変化に強い組織を実現できます。

本記事では、変革型リーダーシップの定義や育成方法をわかりやすく解説します。企業での育成に成功した事例も紹介するので、ぜひ最後までお読みください。

変革型リーダーシップとは?

変革型リーダーシップとは、リーダーがメンバーの価値観や意識に働きかけていくスタイルのリーダーシップです。

リーダーというと、「メンバーに的確な指示を出して組織の統制を取るものだ」というイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。確かに指示を出すことはリーダーの重要な役割ですが、環境変化の激しい現代のビジネス環境では、一人のリーダーが細部にわたって現場を統制することは現実的ではありません。

そこで重要なのが、メンバー自身の内発的な動機づけを後押しすることです。メンバーの主体性が向上すれば、現場のメンバーが自分で考えて行動するようになるため、変化に対応しやすくなります。

変革型リーダーシップは、メンバーの内発的な動機づけを後押しするリーダーシップです。

具体的な行動例については、交換型リーダーシップとの違いを比較しながら後ほど紹介します。

交換型リーダーシップとの違い

変革型リーダーシップと対比される概念として、交換型リーダーシップがあります。変革型リーダーシップと交換型リーダーシップの最大の違いは、メンバーを動かす方法です。

両者の違いは、次の表の通りです。

変革型リーダーシップ交換型リーダーシップ
メンバーを動かす方法内発的な動機づけ外発的な動機づけ
具体例「この事業が成功すれば業界の常識を変えられる」「このチームで新しい価値を作ろう」「このプロジェクトが成功すれば昇進のチャンスがある」
向いている場面新規事業・組織変革定型業務

交換型リーダーシップとは、報酬や成果を提示してメンバー動かすリーダーシップのスタイルです。例えば「このプロジェクトが成功したら昇進のチャンスがある」「ルールを守らなければペナルティを課す」といった形で、外発的な動機づけによってメンバーを動かします。

一方、変革型リーダーシップでは内発的動機づけによってメンバーを動かす点が特徴です。「このプロジェクトが成功したら業界の常識を変えられる」といったように、メンバーの意識や価値観に働きかけます。

両者には多くの違いがありますが、「どちらのスタイルが優れている」というわけではありません。定型業務が中心のチームでは、具体的なリターンを提示する交換型リーダーシップが機能しやすく、新規事業や組織変革などの創造性が重視されるチームでは変革型リーダーシップが向いています。

変革型リーダーシップ研究の歴史と提唱された背景

変革型リーダーシップの起源は、1978年にアメリカの政治学者であるバーンズが発表した論文に遡ります。

バーンズは歴史上の様々なリーダーを分析し、リーダーシップのタイプを「交換型リーダーシップ」「変革型リーダーシップ」の2つに分類しました。そして、変革型リーダーシップを体現していた人物の例として、インドの独立運動を率いたマハトマ・ガンジーや、アメリカの公民権運動を率いたキング牧師を挙げています。

その後、ビジネス現場のリーダーシップに焦点を当てて研究したのが、アメリカの経営学者であるティシーやディバナです。彼らは、変革型リーダーシップを「生き残りのために企業を変化させるリーダーシップ」と定義しました。

1990年代に入ると、コッターが「マネジメント」と「リーダーシップ」を明確に区別したうえで、変革型リーダーシップを再定義しています。

特徴
1978年バーンズ・バス変革型リーダーシップの提唱
1986年ティシー・ディバナビジネス現場における変革型リーダーシップの研究
1990年コッター「マネジメント」と「リーダーシップ」の区別

ちなみに、上記で紹介したような変革型リーダーシップの研究は、主にオイルショックやニクソンショックの影響でアメリカ経済が停滞期にあった時期に行われました。アメリカ経済に閉塞感があった中、組織を大きく変革するカリスマへの期待が高まっていたのです。

成長が停滞していると言われる現代の日本において、変革型リーダーシップが注目を浴びているのは自然なことといえるでしょう。

参考:

Alternative Perspectives on Leadership: Integrating Transformational Leadership with Confucian Philosophy 

A Force for Change: How Leadership Differs from Management – Book – Faculty & Research – Harvard Business School 

変革型リーダーシップには批判もある

変革型リーダーシップは万能ではなく、次のような批判も存在します。

  • リーダー個人のカリスマ性に依存しやすい
  • 組織の安定性が損なわれる場合がある
  • 伝統的な日本企業の風土と相性が良くない場合がある

まず、変革型リーダーシップはリーダー個人のカリスマ性に依存しやすいです。強力なビジョンを持つリーダーがいなくなると、組織全体が方向性を見失うリスクがあります。

また、変革を重視するあまり、組織の安定性が損なわれる可能性もあります。必要のない改革を次々と打ち出してしまうと、現場は混乱しかねません。日本企業は安定を重視する傾向があるため、変革を行うための制度や風土が整っていない可能性もあるでしょう。

組織の変革を進める際には、バランス感覚を持って取り組みを進めることが大切です。

変革型リーダーシップを構成する4つの要素

変革型リーダーシップは、「4つのI」と呼ばれる以下の要素から構成されています。

  • 理想化する影響力(Idealized Influence)
  • 知的な刺激(Intellectual Stimulation)
  • 鼓舞する動機づけ(Inspirational Motivation)
  • 個別の配慮(Individualized Consideration)

人事担当者が変革型リーダーを育成する際には、この4つの要素を意識してみてください。360度評価の項目を設定する際など、リーダーを評価する際にもこれらの観点が役立ちます。

それぞれの要素について詳しく見ていきましょう。

理想化する影響力

「理想化する影響力」とは、リーダー自身が模範となってメンバーからの信頼を獲得する力です。この力が高いリーダーは、口先だけで指示を出すのではなく、困難な状況でも自らが率先して行動することでメンバーの共感を得ることができます。

例えば、以下のような行動が該当します。

  • クレームが発生したとき、リーダー自らが顧客のもとへ足を運ぶ
  • コスト削減時に、リーダー自身がまず自分の経費を見直す

メンバーの模範となることが、変革型のリーダーシップを発揮するうえでの第一歩です。

知的な刺激

「知的な刺激」とは、メンバーに新しい視点や発想を促す力のことです。この要素が身についているリーダーは、「今までのやり方で本当に良いのか」「もっと良い方法はないか」といった問いかけを行い、メンバーの思考を活性化させます。

また、メンバーが失敗を恐れずに挑戦できる環境を整えることも大切です。新たなアイディアを試して失敗したメンバーを責めるのではなく、「何を学んだか」「次にどう活かすか」を重視してフィードバックします。

こうした姿勢が組織の心理的安全性の向上につながり、変革が起きやすい風土の醸成につながるのです。

鼓舞する動機づけ

「鼓舞する動機づけ」とは、魅力的なビジョンを示し、メンバーのやる気を引き出す力を指します。

もちろん、単に目標を伝えるだけでは「交換型リーダーシップ」と変わりません。変革型リーダーシップで必要なのは、「その目標を達成することでどのような未来が実現するか?」を情熱を持って語り、メンバーを鼓舞することです。

例えば「売上を前年比120%にする」という目標は具体的ですが、それだけではメンバーの心は動きません。「この売上を達成できれば、来年は新しいサービスを立ち上げられる。そうすれば、今まで届けられなかった顧客層にも価値を届けられる」といった形で、メンバーの内発的な動機に働きかけることが大切です。

個別の配慮

「個別の配慮」とは、メンバーの個性やニーズに合わせた柔軟なサポートを行う力のことです。

例えば同じ若手社員でも、自信を持って発言できるタイプと、慎重に考えてから意見を述べるタイプがいます。前者には大きな裁量を与えて挑戦させる一方、後者には小さな成功体験を積ませてから徐々に責任範囲を広げる、といった対応が「個別の配慮」の一例です。

なお、こうした個別の配慮を実現するためには、メンバーとの関係構築能力や傾聴力も欠かせません。常日頃からメンバーとコミュニケーションを取り、置かれている状況や心境をうまく察知することが大切です。

変革型リーダーシップを育成する方法

変革型リーダーシップを備えた人材を、採用時に見抜くことはできるのでしょうか。

残念ながら、リーダーシップのスタイルは環境によっても変化するため、はじめから変革型リーダーシップの素養を持った人材を見抜くことは難しいです。社内に変革型リーダーを増やすためには、入社後の人材育成が鍵となります。

変革型リーダーシップを育成する手段としては、以下の3つが挙げられます。

  • 失敗を許容する組織風土を整える
  • リーダーシップ研修を受講してもらう
  • 越境学習に参加してもらう

まず、失敗を許容する組織風土を整えましょう。失敗が許されない雰囲気があると、改革のための行動を起こしづらくなります。上司が率先して挑戦するなど、失敗を許す雰囲気作りを心がけましょう。必要に応じて、評価制度の見直しなども行ってください。

次に、リーダーシップ研修を受講してもらうのも手です。社員の中には、「変革型リーダーシップ」という概念を知らない人も多いでしょう。変革型リーダーシップで何が求められるのかを理解してもらうだけでも、一定の行動変容を期待できます。

また、リーダーシップは理論を学ぶだけではなかなか身につきません。実務でリーダーシップを発揮してもらうためには、学んだ理論を実践する機会を作ることも大切です。このあと紹介する越境学習などを通じて、変革型リーダーシップを実践する機会を確保しましょう。

リーダー育成には越境学習がおすすめ

これらの育成手法の中でも、特に実践的な学びを得やすい手法として注目されているのが「越境学習」です。

越境学習とは、普段とは異なる環境で学ぶことです。法政大学の石山教授は、越境学習を次のように定義しています。

何かの境界を超えて学ぶことであり、自分の心の中のホームとアウェイの境界を行き来することで学びが得られるもの

越境学習にはさまざまな実施方法が考えられますが、中でも大企業の人材が自社を離れ、ベンチャーやスタートアップに3ヶ月〜6ヶ月ほど身を置く実施方法が注目を集めています。普段とは異なる環境で仕事をすることで、自分の強みや課題を客観的に見つめ直したり、リーダーシップの育成や価値観の転換を促したりすることが可能です。

また、ベンチャーやスタートアップでは、ゼロから新しいものを作り上げていることが多いです。組織の制度や仕組みを自分たちで作り上げているため、組織の上流で起こっていることを知ることができます。

経営層との距離が近いため、リーダーシップのある人材の価値観を間近で学べる点もメリットです。

参考:石山先生ご登壇「社員のプロアクティビティを引き出す仕組みとは? ~人を育て組織を強くする「越境学習」の始め方・広げ方~」開催レポート | 株式会社エンファクトリー 

越境学習でリーダー育成に成功した事例3選

ここからは、越境学習でリーダー育成に成功した事例3選を紹介します。

変革型リーダーシップの育成に越境学習を活用したいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。

企業と人の『志』を言語化する貴重な体験

株式会社城山の末武様は、「異業種のメンバーと課題解決する」という体験に興味を感じ、越境学習への参加を決めました。末武様が越境した企業は酒造会社で、参加当初は酒造業界に対する知識はほとんどなかったそうです。

越境学習の期間中は、ミッション・ビジョン・バリューの策定や産業観光事業のビジョン・ロードマップ策定といった課題に取り組みました。企業の根幹に関わる上流の仕事に数多く取り組んだことで、次のような価値観の変化が生じたそうです。

効率化や最適化が優先され、生産性や合理化が重視されがちな現代において、改めて「人の気持ちや幸福を仕事に込めること」の重要性を認識しました。(中略)企業活動の根底には「人の幸福」があるべきだという価値観がより強く感じられるようになりました。

このような価値観の変化は、座学の研修だけではなかなか経験できるものではありません。越境学習だったからこそ、価値観が変化する貴重な経験が出来た成功例といえます。

本事例についてさらに詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。

異なる世界への挑戦:多様な経験が自信を育む

ベンチャー企業やスタートアップで若い世代の働き方に触れたいと考えていた、大鵬薬品工業株式会社の吉澤様。当初は不安もあったそうですが、これまでの経験も活かしながら留学先企業での課題解決に取り組みました。

具体的には、売上向上に向けた施策の提案やオンライン旅行エージェントの選定などに取り組んでいただいています。留学先企業の代表や他社の社員と直接コミュニケーションを取る機会が多く、相手に合わせたコミュニケーションのスタイルが身についたそうです。

越境学習前後での変化について、インタビューでは以下のようにお答えいただいています。

複業留学を経て、私自身が少し冷静になったと感じています。以前はスピード感を重視するあまり、物事を急ぎすぎる傾向がありました。しかし、留学先での経験を通じて、じっくり考えることの重要性に気づきました。

周りの人からも「吉澤さんが冷静になった」「意見を言いやすくなった」など、ポジティブなフィードバックをもらっているようです。全く異なる世界へ飛び込むことで、コミュニケーションやスタンスに変化が生まれた事例といえます。

本事例の詳細は、次のページからご覧ください。

社員のエンゲージメントを高める越境サーキットの効果

最後に、越境学習プログラムの一つである「越境サーキット」を導入した人事部の方へのインタビューをご紹介します。

サッポロビールの間瀬様は、さまざまな社員から個人的に相談を受ける中で、シニア社員の活躍を支援する必要性を強く感じていました。そこで、新しいことに挑戦してもらう環境を整えるため、越境サーキットの導入を決めました。

越境サーキットの導入効果について、間瀬様からは次のようにお答えいただいています。

参加者からは社内での経験を通じて多くの気づきを得たという声が上がっています。これらの気づきを今後の仕事に活かしたいという意欲も感じられました。社内では、参加者同士がコミュニティを作り、感じたことや疑問を共有しながら進めています。これにより、互いに刺激を受け合い、成長を促進しています。

実際、参加者からも「新しい知識が身についた」「新しい武器を手に入れた」といった声が多く挙がっています。

さらに、異業種の方々と交流する中で、「ビジネスの幅が広がった」との声をいただいています。越境学習を通じて得られた貴重な経験が、社員の成長だけでなく貴重な人脈の形成にもつながっているようです。

人事部の間瀬様へのインタビュー全文は、以下のページからご覧いただけます。

まとめ

変革型リーダーシップとは、メンバーの価値観や意識に働きかけるリーダーシップのスタイルです。成果と報酬を交換する交換型リーダーシップとは異なり、ビジョンへの共感や内発的な動機づけを重視します。

現代の多くの日本企業は、企業風土やビジネスモデルなどの抜本的な改革が求められています。目まぐるしく変化するビジネス環境に適応するために、変革型のリーダーは必要不可欠です。

変革型のリーダーシップを育成するためには、リーダーシップに関する理論と実践を繰り返してもらう必要があります。ぜひ越境学習を通じて社外の環境に飛び込んでもらい、自社では得られない視点や価値観を獲得してもらいましょう。

ぜひこの記事を参考に、変革型のリーダー育成を成功させてください。

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