ピアラーニングとは?メリットや注意点、学び合う組織を作るためのポイントを解説

組織風土変革

ピアラーニングは、学習者同士の主体的な対話を通じた相互学習の方法です。従来の学習方法とは一線を画した取り組みで、昨今では学校教育から企業での人材育成まで幅広く活用されています。

本記事では、ピアラーニングについて詳しく解説します。ピアラーニングの定義や進め方、メリットや注意点などを知りたい方はぜひ参考にしてください。

ピアラーニングとは

ピアラーニングとは、学習者同士が対話を通じて互いに学び合う学習手法です。「ピア」とは「仲間」という意味で、文字通り読むと「仲間と学ぶ」という意味になります。

ピアラーニングの指す範囲は幅広く、仲間と対話しながら学ぶ手法はすべて「ピアラーニング」と呼ぶことができます。例えば以下のような活動は、ピアラーニングの一環です。

  • 読書感想文を書いて、互いに興味深かった部分について話し合う
  • エンジニア同士でソースコードを共有し、互いにバグの指摘や修正を行う
  • 英語を学ぶため、仲間とグループを組んでディスカッションする

学校教育か社員育成かを問わず、従来の教育は「教育者が正解を提示する」という方式が主流でした。その点、ピアラーニングは「学習者同士で学びを深め合う」という方法です。学習者の主体性を尊重する点が、従来の学習方法とは大きく異なります。

最近では、企業における人材育成にピアラーニングを取り入れる事例も増えてきています。

ピアラーニングが必要とされる背景

昨今、ピアラーニングの重要性が高まりつつあります。その理由は、主に以下の3つです。

  • 「学習する組織」の必要性が高まっている
  • 時代の変化が激しく、学習内容が日々変化する
  • 学ぶべき内容が複雑化・高度化している

終身雇用が崩壊しつつある現代社会では、「会社から与えられたキャリアを歩む」という、これまでの「当たり前」が通用しません。

また、グローバル化やIT化の進展によって、時代の変化は激しくなっています。語学研修やIT研修も、5年前や10年前の研修資料ではとても間に合いません。日々変化する最新の情報をキャッチアップするためには、メンバーが自ら能力を伸ばし続ける「学習する組織」を作ることが重要です。主体性を尊重するピアラーニングは、こうした「学習する組織」の文化を作るのにも役立ちます。

ピアラーニングのメリット

ピアラーニングには、以下のメリットがあります。

  • 主体性な学びを促せる
  • モチベーションを保ちやすい
  • 実践的な学びを得ることができる
  • 社員同士の交流を促せる

ピアラーニングをうまく取り入れることで、従来以上の学習効果を得ることができるでしょう。ピアラーニングのメリットについて詳しく解説します。

主体性な学びを促せる

ピアラーニングの最大のメリットは、社員の主体性を引き出しながら学べる点です。

従来の「講師が社員に教える」という学習方法だと、どうしても学びが受け身になってしまいます。コミュニケーションが一方的になるため、社員の集中力が落ちたり、学習効果が損なわれたりする場合も少なくありません。

一方、ピアラーニングは社員が自分自身で情報を集め、それを周囲と共有しながら学ぶ手法です。自分なりに創意工夫しながら仲間に情報を伝える必要があるので、自然と主体的な学習を促すことができます。

モチベーションを保ちやすい

モチベーションを保ちやすい点も、ピアラーニングのメリットといえます。

ピアラーニングは、積極的に周囲とコミュニケーションを取りながら学ぶ手法です。従来のように「話を聞くだけ」の研修ではないので、社員は退屈しづらいでしょう。

加えて、他の社員との交流によって、社員が刺激を受ける効果も期待できます。ピアラーニングで優秀な他の社員と交流すれば、「あの人のようになりたいな」「あの人が頑張っているなら自分も頑張らなくては」と思ってもらえるかもしれません。

実践的な学びを得ることができる

ピアラーニングで得る学びは実践的な内容が多く、すぐに実務へ役立てやすいです。

ピアラーニングでは、互いに立場の近い社員が意見交換します。例えば課長研修でピアラーニングを取り入れた場合、「部長との調整がどうも苦手」「なかなか部下が育たない」といったリアルな悩みを共有できるでしょう。こうした内容について仲間とディスカッションすると、実際に直面している問題を解決する糸口を得やすいです。

実務に役立つ内容を効率よく学べるというピアラーニングのメリットは、ぜひおさえておきましょう。

社員同士の交流を促せる

ピアラーニングには、社員同士の交流を促し、社内の風通しをよくする効果もあります。

例えば毎月1回のペースでピアラーニングを実施する場合、半年もすれば参加者同士は顔見知りになるでしょう。「あのときの研修で話した人だな」とお互いに認知できるようになれば、実務での連携もスムーズになります。

また、新入社員にピアラーニングを実施するのも、典型的な活用事例です。ピアラーニングで同期のつながりを強化できれば、新入社員が社内で孤立するのを防ぐことができます。

ピアラーニングを進める際の注意点

ピアラーニングを実践する際には、いくつか気をつけておくべき注意点が存在します。ピアラーニングを進めるときの注意点を見ていきましょう。

ともに学ぶ人によって学習効果が変わってくる

ピアラーニングにおいて最も重要なのは、学習者同士が「協働」することです。しかし、学習者に十分な協調性や貢献意識がない場合、この協働が阻まれてしまいます。

対策としては、事前にピアラーニングにおける協調性やともに学ぶ参加者への貢献の必要性について伝えることが有効です。いずれにしても、ピアラーニングを社員に丸投げせず、人事側が積極的にフォローするのが大切です。

学習内容によって向き不向きがある

ピアラーニングは、すべてのテーマを学ぶのに効果的な手法というわけではありません。テーマごとに、以下のような向き不向きがあります。

適しているテーマ語学ITスキルやプログラミングマネジメントや部下育成手法
あまり適していないテーマ「型」となる初歩的な内容理論的な内容

実践が必要な語学やITスキルは、ピアラーニングが向いています。また、マネジメントや部下育成などの実務的な内容も、ピアラーニングで各々の事例を共有するのが効果的です。

一方、誰しもが知っておくべき「型」を学ぶ際は、ピアラーニングがあまり適していません。例えば初めてビジネスマナーを学ぶ場合は、講師が基本的な礼儀作法を教えたほうが確実です。ある程度の「型」が完成してから、ピアラーニングで定着を図りましょう。

また、理論的な内容にもピアラーニングはあまり適していません。理論的な内容には明確な「答え」が存在するので、専門家から直接指導を受けたほうが効率的です。

ピアラーニングを効果的に実施するポイント

効果的にピアラーニングを実施するためのポイントは、以下の4つです。

  • ピアラーニングの目標を共有する
  • 心理的安全性を確保する
  • 学ぶときのルールを決める
  • 普段から主体性の高い社員を育成しておく

それぞれについて詳しく解説します。

ピアラーニングの目標を共有する

ピアラーニングを実施する前に、ピアラーニングの目標を全体で共有しておきましょう。

ピアラーニングは確かに社員の主体性を引き出せる学び方ですが、ゴールが曖昧だと「楽しかった」で終わりになってしまいます。あくまでも、何か一つのテーマについて学びを深めるのがピアラーニングです。

理想的にはピアラーニングの目標そのものを学習者自身に決めてもらうべきですが、最初のうちは講師や人事側から目標を共有しても問題ありません。例えばIT研修であれば、「セキュリティの重要性について、15分間でディスカッションしてください」などと指示を出してみてください。はじめはディスカッションの内容を細かく指定して、徐々に自由度の高い指示を出していくのがコツです。

心理的安全性を確保する

意見交換が重要なピアラーニングでは、心理的安全性の確保が欠かせません。

心理的安全性とは、「この組織では何を言っても受け入れてもらえる」という、個々の社員が感じる安心感のことを指します。もし組織の心理的安全性が低いと、社員は「否定されるかもしれない」「浮いてしまわないだろうか」などと不安になり、ディスカッションが停滞しがちです。

ピアラーニングの前に、組織の心理的安全性を確保しておきましょう。アイスブレイクを導入して、自己紹介や軽い雑談をしてもらうのがおすすめです。後述するように、「意見を論破しないこと」など一定のルールを設けるのもよいでしょう。

学ぶときのルールを決める

ピアラーニングを行う際は、以下のようなルールを決めるのが効果的です。

  • 相手の意見を論破しない
  • 発言は長くても1分を目安にする
  • ファシリテーターに指名された人だけが発言する

ピアラーニングでは他者との対話が重要ですが、何を言っても良いというわけではありません。また、全員が等しく議論に参加することも大切です。上記のようなルールを定めることで、ディスカッションがスムーズに進行し、全員が質の高い学びを得やすくなります。

普段から主体性の高い社員を育成しておく

ピアラーニングの学習効果を高めるためには、普段から主体性を尊重する組織風土を形成しておくことが大切です。

ピアラーニングを実施すると、社員の主体性を高めることができます。主体性の高い社員は、ピアラーニングでも深い学びを得ることができ、一層主体性が伸びるでしょう。この好循環を生み出すためには、ピアラーニング以外の場面でも社員の主体性を伸ばすことが欠かせません。

例えば、自ら手を挙げた人が参加できる「公募型研修」「越境学習」などを増やすのがおすすめです。また、社員が学びたいときにいつでも学べる環境を整えるために、オンライン学習ツールのアカウントを発行しておくなども考えられます。

「学びあう組織風土」を作りたいなら

ピアラーニングについて、メリットやポイントを詳しく解説しました。ピアラーニングは社員の主体性を引き出しながら学ぶことのできる、学習効果の高い手法です。ぜひこの記事で解説したポイントをおさえながら、効果的な学び合いを実現しましょう。

学び合う組織風土づくりには、「越境学習」の実施もおすすめです。

詳しく知りたい方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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