VUCA時代と言われて久しい昨今、人材育成の在り方は大きく変化しつつあります。そんな中、多くの企業が注目しているのが「越境学習」という新しい学習手法です。
越境学習を実施すると、チャレンジする企業風土を醸成できたり、イノベーションの好循環を生み出したりといったさまざまなメリットがあります。
本記事ではそんな越境学習について、定義や実施方法、株式会社オリエントコーポレーション、株式会社パルコ、東海東京フィナンシャル・ホールディングス株式会社、中外製薬株式会社、ハウス食品株式会社、カゴメ株式会社といった最新の企業事例などを徹底的に解説します。
目次
越境学習とは?
越境学習とは、普段と異なる環境に飛び込んで学ぶことです。ここでは、代表的な2つの定義をご紹介します。
まず法政大学教授の石山恒貴氏は、越境学習を次のように定義しています。
自分の心の中のホームとアウェイの境界を行き来することで学びが得られるもの
ここで、ホームとは「よく知った人がいて、居心地は良いが刺激がない環境」、アウェイとは「見知らぬ人がいて、居心地が悪いが刺激のある環境」のことです。ビジネスパーソンであれば、社内はホームですし、他社や外部の組織はアウェイといえます。
次に、経済産業省による越境学習の定義を見てみましょう。
越境学習とは、自分がもともと所属している組織を一時的に離れ、別の組織や地域コミュニティで実際に業務やプロジェクトに関わることで、新たな知識や視点、スキルを獲得する学習である。
(経済産業省「越境学習を支える伴走者のための実践ガイドライン」より)
どちらの定義でも、「普段とは異なる環境に一時的に身を置くこと」に重点を置いています。経済産業省は越境学習の普及にも力を入れており、これまでに越境学習用のルーブリックや伴走者向けのガイドラインなどを公開しています。
なお一言で「越境学習」といっても、その具体的な実施方法は多彩です。越境学習に詳しい井上功氏によると、越境学習には次の10種類があります。
- 個人内越境
- 企業内越境
- 企業間越境
- 職種間越境
- 業種間越境
- 産官学越境
- 労使間越境
- 世代間越境
- 地域間越境
- 国家間越境
上のものほど着手が簡単で、下のものほど着手のハードルが高いです。部署異動などを想定した「企業内越境」といった簡単なものから、海外赴任やMBA取得などを目指す「国家間越境」といったハードルの高いものまで、さまざまな実施手段があることがわかります。
参考:石山先生ご登壇「社員のプロアクティビティを引き出す仕組みとは? ~人を育て組織を強くする「越境学習」の始め方・広げ方~」開催レポート | 株式会社エンファクトリー
一番やりやすい越境学習は「Will・Can・Must」を考えること 自分の価値を発揮させる「掛け算」の思考法
越境学習が求められる背景は主に2つ
昨今、企業における人材育成方法として越境学習が注目を浴びています。この背景は、主に下記の2点です。
- 人的資本投資の重要性が増している
- 「非連続的なイノベーション」が求められている
越境学習が注目されている理由を確認していきましょう。
人的資本投資の重要性が増している
越境学習が重要視されている背景の1つめが、人的資本投資です。
人的資本投資とは、企業で働く人材を「資本」と捉える考え方のことを指します。少子高齢化によって働き手不足が進む昨今、人手不足に悩む企業は少なくありません。こうした中で企業の競争力を維持するためには、企業で働く「人材」へ積極的に投資を行うことが重要です。
しかし、日本の人的資本投資は未だ十分ではありません。例えば経済産業省が2022年に示した資料によると、日本における人材投資の額は欧米と比べて10%以下となっています(下表参照)。
| 人材投資額 | 2005年〜2009年 | 2010年〜2014年 |
| アメリカ | 2.03 | 2.08 |
| ドイツ | 1.29 | 1.2 |
| イギリス | 1.11 | 1.06 |
| 日本 | 0.15 | 0.1 |
※GDP比・OJTを除く
※経済産業省 経済産業政策局による参考資料より引用
こうした格差を埋めるため、最近は日本企業でもさまざまな形で人材投資が進んでおり、社員にさまざまな経験を積んで成長してもらおうという流れがあります。その中の一つとして注目されているのが、越境学習なのです。
終身雇用が崩壊しつつある昨今、人的資本投資の重要性はますます高まると予想されています。越境学習へ取り組む企業は、今後もさらに増えるでしょう。
「非連続的なイノベーション」が求められている
現代のビジネス環境では、既存の発想の延長線上にはない「非連続的なイノベーション」を生み出すことが重要です。越境学習は、非連続的なイノベーションを起こす企業体質の実現にもつながります。
例えば兼業や副業で身につけた技術は、社内でも活用できます。実際、三井住友海上日動株式会社では、社員のキャリア自律や共創を後押しすることを目的に、2021年に副業解禁を行いました。静岡ガス株式会社では2024年の副業解禁によって、イノベーションの創出や新しいビジネスアイディアの発掘を狙っています。このほか、外部セミナーや海外研修への参加も、社内にはない知見を持ち帰ってイノベーションにつなげるチャンスです。
なお、「イノベーション」というとどうしても大掛かりなものを想像する方もいらっしゃるかもしれません。しかし、日常業務の中で起こる小さな変化もイノベーションの起爆剤になりえます。
例えばベンチャー企業やスタートアップ企業へ留学した社員は、自社で導入していないAIツールやITツールに触れることもあるでしょう。帰任後にこれらを自分の業務に活用することもできますし、ツールの使い方を社員同士で共有すれば部署全体、さらには会社全体の業務効率化につながるかもしれません。
もちろん全体で見れば大きな変化が起こるのは一部かもしれませんが、普段から小さなイノベーションの種をまいておくことが、大きな変革を起こしやすい企業風土の醸成につながるのです。
経済産業省も積極的に越境学習を推進している
先ほど解説した背景を受け、経済産業省も積極的に越境学習を推進しています。越境学習に関連する、経済産業省の取り組みを紹介します。
「未来の教室」プロジェクトやガイドラインの公開を実施
越境学習に関する代表的な事業が、経済産業省による「未来の教室」プロジェクトです。
「未来の教室」プロジェクトでは、VUCA時代に適した人材育成の手法として越境学習が紹介されています。例えば「留職プログラム」では、3〜12か月程度の時間をかけて新興国の課題解決へ挑戦し、タフな環境の中でリーダーシップを磨くそうです。
また、2025年3月にも経済産業省は越境学習に関するレポート「越境学習を支える伴走者のための実践ガイドライン」を公開し、越境学習の重要性を次のように強調しています。
- 新規事業の創出につながる
- 働き方やコミュニケーションの改革につながる
- リーダーシップの育成につながる
人的資本投資という大きな流れがある中で、今後もこうした政府の方針は続くでしょう。
参考:経済産業省「未来の教室プロジェクト」
越境学習の成果を可視化するためのルーブリックも公開
経済産業省は、越境学習の効果を正確に測定するためのルーブリックを公開しました。
ルーブリックとは、学習の到達度を項目ごとに評価するためのツールです。項目ごとに達成基準が明確化されているので、育成の効果をひと目で把握することができます。
ルーブリックの内容は以下の通りです(一部抜粋)。
| 段階 | 評価項目 | 基準(浅い) | 〜 | 基準(深い) |
| 越境前 | 越境に対する覚悟をしている | 越境先に行くことがどこか他人事のように見受けられる | 越境は自分にとって挑戦であるため、不安を感じている | 越境という挑戦に向けて前向きに取り組むことを表明している |
| 越境中 | それぞれの強みに気づいている | 越境先と所属組織について特徴を明確に把握できていない | 越境先と所属組織にそれぞれ強みがあることは分かるが、十分に言語化できていない | 越境先と所属組織それぞれの強みを言葉で明確に言い表すことができる |
| 越境後 | 越境先での学びを伝えている | 越境先で何があったのか、公式的な報告以外では話していない | 非公式な場面でも質問されれば、越境先で体験したことを話している | 越境先で学んだことを所属組織のメンバーに伝える機会を設けている |
このルーブリックには、次のような特徴があります。
- 明確な評価基準が設定されている
- 評価項目が細かく、効果を多角的に把握できる
- 業種や業界、企業規模を問わず利用できる
越境学習の効果測定を行う際には、このルーブリックの内容が非常に参考になります。
越境学習の具体的な実施方法
越境学習の方法は多様です。外部の企業に留学するパターンもあれば、副業や兼業に取り組んだり、外部セミナーへ参加したりすることもあります。
代表的な手法とそれぞれの特徴は、次の通りです。
| 手法 | 期間 | 手軽さ | 効果 |
| 外部企業への留学 | 3〜6か月 | ◯ | ◎ |
| 副業や兼業 | 6か月〜 | △ | ◎ |
| 外部セミナー・勉強会 | 2〜3日 | ◎ | △ |
| ワーケーション | 3〜5日 | ◯ | △ |
| 社会人大学 | 2〜4年間 | △ | ◎ |
| 海外研修 | 1週間〜6か月 | △ | ◯ |
越境学習を実践するための6つの方法を詳しく解説します。
外部企業への留学
越境学習の代表的な形態の一つが、外部企業への留学です。通常3〜6か月程度の期間で、留学先企業の社員と同じ仕事にチャレンジします。
外部企業へ留学する最大のメリットは、留学先企業のカルチャーを肌で感じることができる点です。他社の業務へ深く入り込むことによって、従来の研修では起こりづらい価値観の転換やマインド面での成長を狙います。
可能な限り自社と異なる環境に身をおいてもらうため、大手企業所属の社員であれば留学先の企業にはベンチャー企業やスタートアップ企業が選ばれることが多いです。
ちなみに外部企業への留学は、副業解禁に向けたトライアルにもなります。「本格的な副業解禁の前に、社員がどのような学びを持ち帰ってくるか確かめたい」といった場合には、おすすめの手法です。
副業解禁のポイントと流れをまとめたガイドブックもご用意しているので、副業解禁を検討している方はこちらも合わせてご覧ください。
副業や兼業
副業や兼業も、近年普及している越境学習の一つ。週末や退勤後の時間を活用して、本業とは異なる仕事にチャレンジします。
副業や兼業のメリットは、次の通りです。
- 新たなスキルや知識の習得につなげやすい
- 本業で培ったスキルを客観視できる
- 業界やビジネスモデルの違いを実感できる
ただし、副業や兼業は他と比べるとややハードルの高い側面もあります。最近では社内で複数の業務を掛け持ちする「社内副業制度」を導入する企業も増えてきているので、自社にあった方法を柔軟に検討してみましょう。
なお、社内副業は通常の複業よりも導入が手軽です。社内副業制度の導入を検討している方は、以下のページからガイドブックをご覧ください。
外部のセミナーや勉強会
短期間で気軽に参加できる越境学習として、外部セミナーや勉強会も人気です。
普段は顔を合わせない他社の社員や異業種の社員と交流することで、刺激を得ることができます。副業や兼業と比べると参加のハードルも低いため、多くの社員が気軽に取り組みやすい点もメリットです。
ただし、単発のイベント参加だけだと深い学びは得づらいかもしれません。他の手法と組み合わせて運用することがおすすめです。
ワーケーション
働く場所を変えることで、新しい刺激や発想を得るワーケーション。都会から離れた自然豊かな環境で業務に取り組むことで、心身のリフレッシュを狙う方法です。
ワーケーションの実施方法は、企業によって大きく異なります。例えば日本航空株式会社の実施するワーケーションでは、各地域で農業にチャレンジするのが特徴です。実際に地域の方と農業に従事する中で、社員の課題解決力の向上や新規事業開発に向けた意識改革といった効果が出ています。
ただし、実施ハードルはやや高めかもしれません。社員のスケジュール調整だけでなく、セキュリティや通信環境といったワーケーション特有の課題もクリアする必要があります。
参考:観光庁「日本航空株式会社 社員の主体性を引き出すワーケーション」
社会人大学
最近、社会人学生が増えています。大学への進学も、越境学習を実践する方法の一つです。
具体的には、以下のようなパターンがあります。
- MBAの取得を目指す
- 法学や経営学の知識を身につける
- 理系の学部でAIなどの先端技術を学ぶ
- 大学院で研究能力を身につける
社会人大学の最大のメリットは、仕事に関連する学術的な知識を習得できる点です。普段関わることのない社会人や学生との交流も、大きな刺激になるでしょう。
唯一のデメリットは、社員の負担が大きくなりがちな点。社会人向けの夜間課程を用意している大学も多いので、これらを活用するのも手です。
海外研修
海外研修への参加も、越境学習の効果的な実践方法の一つです。文化や商慣習の違いを体験することで、グローバルな視点を養うことができます。国際的な人脈を構築できるため、将来の事業展開に向けたネットワーキングの一環としても効果的です。
なお、海外研修のネックはコストです。旅費や宿泊費といった多くの経費がかかりますし、社員も最低1週間程度の時間を確保する必要があります。海外の協力先を確保する必要もあるため、実施にはやや手間がかかるでしょう。
越境学習で社員に期待できる効果
社員が越境学習に取り組むと、次のような効果が期待できます。
- 視野が広がる
- キャリア自律が促進される
- アンラーニングにつながる
越境学習によって期待できる効果を見ていきましょう。
視野が広がる
越境学習を実施すると、社員の視野を広げることができます。
ここでいう「視野を広げる」には、以下の2つの意味があります。
- 異なる業務内容を知る
- 異なる業務の進め方を知る
前者に関しては、異なる業務に取り組むことで直接的に得られるメリットです。例えば普段はBtoC営業を行っている社員がBtoBの営業に取り組めば、BtoBならではのポイントを身につけることができます。
後者に関しては、一定期間越境を続けることで得られる副次的なメリットです。例えば越境学習の一環として、大企業の社員がスタートアップ企業で働く場合を考えましょう。この場合、以下のような変化を実感することが多いです。
- 「意思決定のスピードが自社の数倍早い」
- 「人間関係がフラットで、会議でも自由に意見しあえている」
- 「社員一人の業務範囲が自社より圧倒的に広い」
こうした刺激は、自社の業務改善につながるきっかけになります。
もちろん最適な業務の進め方は企業によって異なりますが、普段とは異なる環境に飛び込むことで、自社の「当たり前」以外の選択肢を知ることができるのです。
実際に、越境学習プログラム「複業留学」の参加前後の成長変化を比較したアンケート調査では、「自社の常識を疑い、他社の優れた点を柔軟に取り入れている」という項目に一番の伸びが見られました。
越境学習・複業留学行動・意識変化 レポートダウンロードはこちら:

キャリア自律が促進される
越境学習を実施すると、キャリア自律を促進することもできます。
キャリア自律とは、自分自身のキャリアを主体的に形成することです。雇用の流動性が高まりつつある最近の日本では、これまでのように「会社から与えられたキャリア」を歩むことが当たり前ではなくなりました。社員は、自らのキャリアを自分自身で切り開く必要があります。
そうはいっても、急に「キャリア自律をしてください」というのは無理な話です。社員の中には、自分のキャリアを主体的に考えたり、自分のスキルや可能性を客観視したりする経験が不足している人も多いでしょう。
越境学習は、このような状況で大きな効果を発揮します。普段と異なる環境に身を置けば自分のスキルや強みを客観視できるため、自分のキャリアを考える判断材料を得られるのです。
例えば「自分の力は他社でも通用するんだな」「自分の持っている〇〇のスキルは意外と市場価値が高いんだな」と実感できれば、その強みを軸にしたキャリア形成を考えられます。反対に「この能力はまだまだだな」「自社の考え方に染まっているな」といったネガティブな気づきは、キャリア形成の上での課題発見に役立てられるでしょう。
アンラーニングにつながる
アンラーニングとは、既存の知識や経験をあえて一度忘れたうえで、新しい学習に取り組むことです。越境学習は、このアンラーニングを促進することにもつながります。
英国アバディーン大学のHislop教授らの研究によると、アンラーニングには以下の2種類があるとされています。
| 種類 | 意味 | 効果 |
| Wiping | 行動的なアンラーニング | 表面的な行動変容 |
| Deep Unlearning | 認知的なアンラーニング | 価値観の行動変容 |
行動が変化しても価値観が変化していなければ意味がありませんし、その反対も同様です。効果的なアンラーニングを起こすためには、これらの両方に取り組むことが求められます。
越境学習では、この両者を効果的に進めることが可能です。
| Wiping | Deep Unlearning | |
| OJT | ◯ | ✕ |
| 座学研修 | ✕ | ◯ |
| 越境学習 | ◎ | ◎ |
越境先での仕事や学習を通じて行動的なアンラーニングが促進されますし、越境先でのコミュニケーションは認知的なアンラーニングに効果的です。
行動と価値観の双方にアプローチできるため、参加者は本当の意味で新しい学びを得ることができるでしょう。
参考:Hislop, D., Bosley, S., Coombs, C. R., and Holland, J. (2014), “The process of individual unlearning: A neglected topic in an under-researched field. Management Learning”, 45(5), pp 540-560.
越境学習による企業側のメリット
越境学習の効果は、社員個人の成長だけではありません。
企業にとっても、次のようなメリットがあります。
- チャレンジする企業風土を醸成できる
- イノベーションによって競争力を向上できる
越境学習を促進することで期待できる、企業側のメリットを確認していきましょう。
チャレンジする企業風土を醸成できる
越境学習によって期待できる1つめのメリットは、チャレンジする企業風土を生み出せる点です。
越境学習に参加した社員は、「新しいことに取り組もう」という意欲や自信を身につけて職場に戻ってきます。こうした姿勢が周囲の社員にも広がれば、組織全体にもチャレンジする文化が根付くでしょう。
実際、越境学習で触れたスタートアップ企業のチャレンジングな文化に刺激を受け、積極的に新規事業や改善提案に取り組むようになる社員も多いです。
具体的には、株式会社オリエントコーポレーションが取り組んだ、越境学習を用いたカルチャー変革の軌跡をまとめたイベントレポートがあるので、興味のある方はぜひ参考にされてみてください。
手上げが4倍に!オリコが取り組むカルチャー変革 ―プロティアン×越境事例―
イノベーションによって競争力を向上できる
越境学習によって期待できる2つめのメリットは、組織の競争力を向上できる点。イノベーションが起こりやすい企業体質を獲得できるため、時代の変化に取り残されづらくなります。
例えば、越境先で新しい業界やビジネスモデルを知る社員も多いでしょう。こうしたノウハウを自社の知識と組み合わせれば、新しい事業が生まれるかもしれません。必ずしも事業レベルではなくとも、小さな業務改善の積み重ねが競争力向上につながることもあります。
自社に合う越境学習プログラムの選び方
自社に合う越境学習を越境学習プログラムを選ぶためには、以下の3点を意識してみましょう。
- 越境学習の位置づけを明確にする
- 留学先のプログラム内容を精査する
- 他社の成功事例を参考にする
まず、越境学習の位置づけを明確にする必要があります。例えば「次世代リーダー育成」に越境学習を活用するのと、「DX・ITのリスキリング」に越境学習を活用するのとでは、適したプログラムは全く変わります。自社の人材育成全体の中で、越境学習にどのような役割を期待するのかを決めましょう。
次に、留学先のプログラムを精査することが大切です。特に、留学先と深い接点を持てるかどうかを確認してみてください。越境学習の大きな利点の一つに、社外の人と交流できる点が挙げられます。社外の人とどの程度関わるのか、異業種の人とコミュニケーションを取る機会はあるかなどをチェックしましょう。
最後に、他社の成功事例を参考にするのがおすすめです。越境学習の実施方法はケースバイケースですし、実際の事例を知ったほうがイメージが膨らみます。本記事でも、この後人材育成に越境学習を活用した事例をご紹介するので、ぜひ参考にしてください。
人材育成に越境学習を活用した企業事例3選
ここからは、越境学習を実際に導入した最新の企業事例を3つ紹介します。自社の越境学習施策を考える際には、ぜひ参考にしてください。
株式会社オリエントコーポレーション
株式会社オリエントコーポレーションの笠松様は、内部監査グループにて内部監査の企画業務を行っています。社歴が長くなる中で、「自分の考え方や行動が過去の経験にとらわれすぎている」という課題を感じていました。
そこで参加したのが、弊社エンファクトリーの実施する越境学習プログラム「複業留学」です。本事例では外部企業へ3か月間留学し、以下の3つの業務に取り組んでいただきました。
- 情報セキュリティ
- DX推進
- CX戦略推進
「自分自身のスキルや業務経験、ノウハウなどが社外でどのように評価されるかを知ることができ、この留学は有意義だった」と笠松さん。DXやCXのリアルを知ることで自分のスキルを客観視することができ、リスキリングに向けた意欲が高まったそうです。
本事例の詳細は、次のレポートから詳しくご覧いただけます。
株式会社パルコ
株式会社パルコで法務を担当している高石様。「長い間同じ部署に勤務している」ということに課題感があり、弊社エンファクトリーの実施する「複業留学」への参加を決めました。
本事例では、留学先企業の展開する商品のPR戦略立案に携わっていただいています。普段と異なる業務に取り組む中で戸惑いもありましたが、留学先の社長の持つ熱い思いに共感し、最後までやり遂げることができたそうです。
複業留学の効果について、インタビューでは以下のようにお答え頂いています。
今回の複業留学を経て、相手のことを俯瞰的に考え発言をするよう心掛けるようになり、自分の価値観や既存の方法に囚われず、この人はなぜそれがいいと思ったのか、確かにこちらの方が効率的だなどと考えるよう心掛けるようになりました。また、対話の中で自分にストレスがかからないときは、相手にストレスをかけている可能性が高いと注意するようになりました。
普段は出会えない多様なキャリアを持つ人材と交流し、コミュニケーションの変革を実現したことが本事例最大のポイントです。
詳細は、次のページからご覧ください。
東海東京フィナンシャル・ホールディングス株式会社
ここまでの2つの事例はいずれも越境学習に参加した社員ご本人からのレポートでしたが、越境学習プログラムを運用する人事部社員の声もお届けします。
東海東京フィナンシャル・ホールディングスでは、2019年4月から「人間性と専門性の追求」を掲げた人事制度の変革を実施しています。このうち、人間性向上に向けたプログラムの一つとして導入したのが、越境学習プログラム「複業留学」です。
本事例では、公募形式で複業留学への参加者を募っています。入社後10年目程度の社員からの応募が多く、2回目以降の募集では複業留学に参加した社員の部下も手を挙げ始めているそうです。
複業留学のメリットについて、人事部の沖田様は次のようにおっしゃっています。
一つ目は、「社員の『くすぶっている感』を打破する」のに、最適なことです。(中略)二つ目は、「隣の芝生は青くないと気づいてもらえる」ことです。ベンチャー企業に行くことで、今の置かれている環境が「当たり前ではない」ということを感じられます。
本事例の詳細は、次のページから詳しくご覧ください。越境学習を運用する方法や実際の効果について、詳しくお答えいただいています。
越境学習を成功させるための3つのポイント
越境学習の効果を最大化するためには、次の3点が大切です。
- 越境学習を行う目的を明確化する
- 適度なサポートを行う
- 越境学習を社内全体に広げる
越境学習を実践に向けて、ぜひおさえておきたいポイントを解説します。
越境学習を行う目的を明確化する
越境学習の導入時に欠かせないのが、目的の明確化です。何のために越境学習を実施するのか決めることで、越境学習の具体的な実施方法も見えてきます。
越境学習における目標例と、それらに適した実施形態は以下の表の通りです。
| 目的の例 | 適した実施形態 | 背景 |
| サクセッション・リーダー育成リスキリング(DX・AI)イノベーション・新規事業スキル実践機会・定着化 | 経験学習+越境学習 | 市場環境の構造変化デジタル化の進展 |
| キャリアオーナーシップエンゲージメントの向上ダイバーシティ | 越境学習 | 価値観の多様性人生100年時代の到来 |
リーダー育成やリスキリングを目的に実施するのであれば、経験学習と越境学習をブレンドするのがおすすめです。過去の成功体験が通用しない環境に身を置くことで、新しいマインドとスキルを効果的に獲得できます。
例えば株式会社カルモアでは、次世代経営者育成に向けてエンファクトリーの実施する「複業留学」を導入しました。
関西電力株式会社ではエンファクトリーの実施する「複業留学」を導入し、DX人材の育成に取り組んでいます。
また、キャリアオーナーシップの促進やエンゲージメントの向上にも、越境学習を役立てることができます。この場合は、手上げによるさまざまな機会を社員に与えることを意識しましょう。越境学習は、社員の主体性を伸ばすうえでも絶好の機会です。
なお、次世代リーダーやDX人材の育成のポイントは以下の記事でも解説しています。ご興味がある方は、こちらもぜひご覧ください。
参加する人には適度なサポートが重要
参加する人に対する適度なサポートも、越境学習を成功させるためのポイントの一つです。
越境学習では、見ず知らずの環境で多くの困難に直面することになります。これらを乗り越えるためには、越境学習の期間中に本人を支える伴走者の存在が重要です。経済産業省が公表した資料では、越境学習の伴走者の意義として以下の4つが挙げられています。
- 学習効果の最大化
- 越境先における活躍の後押し
- 中立的な立場による問題解決
- イノベーションの橋渡し
越境期間中、本人は多くのストレスに直面します。これを解消するため、留学先企業と自社の重要人物をうまくつなぎながら、業務負荷や人間関係を調整することが伴走者の主な役割です。また、伴走者は越境期間中に起きた変化や成長を客観的な視点からまとめることができるので、越境期間終了後の新規事業の企画や育成施策の改善にもつながります。後述するように伴走者自身の成長にもつながるため、伴走者の導入は非常におすすめです。
なお、伴走者は「伴走過剰」にならないように注意が必要です。越境学習では、「コミュニケーションのスタイルが普段と違う」「評価基準が噛み合わない」といった多くの葛藤が起こります。こうした葛藤は、マインドの成長を促すうえで必要不可欠なものです。
伴走者によるサポートが過剰になると、こうした葛藤が生まれず、本人の自律性が損なわれてしまう可能性があります。マイクロマネジメントにならないよう、あらかじめ伴走の範囲をすり合わせておくといった対応が必要です。
越境学習を社内全体に広げていく
越境学習の効果を高めるためには、制度を社内へ広めることが大切です。越境学習に取り組む社員が増えることで、社内にイノベーションの種が増え、組織改革を起こしやすくなります。
それでは、どのようにすれば越境学習を社内へ広めることができるのでしょうか。
その鍵となる施策が、次の2つです。
- 社内共有会や報告会
- 社員同士の口コミ
越境学習に参加する社員を増やすためには、社内共有会や報告会、口コミなどを通じて成功事例を積極的に共有してもらうことが重要です。例えば東海東京フィナンシャル・ホールディングスの事例では、越境学習に取り組んだ上司が部下へ体験を共有することで、徐々に取り組みが社内へ広がったようです。
これらに加え、エンファクトリーでは「ピアサポーター制度」の導入もおすすめしています。ピアサポーターは先ほど解説した「伴走者」にあたる存在で、越境する社員の上司や同僚に依頼することが一般的です。越境する社員のサポートになりますし、ピアサポーター自身の刺激や成長、越境学習に対する関心の強化にもつながります。
実際、弊社が実施したアンケートでは、ピアサポーターとして研修に参加した方から次のような回答をいただきました。
| 「ピアサポーターとして研修に関わってよかった」 | 約80% |
| 「自分も参加したい」 | 約40% |
| 「他の人へ勧めたい」 | 約60% |
満足度が高く、ピアサポーターの越境学習への関心も高まっていることが分かります。口コミやピアサポーターを通じて、越境学習を効果的に社内へ浸透させていきましょう。
まとめ
越境学習について、具体的な実施方法やメリット、導入企業の事例などを解説しました。
昨今、「キャリア自律」や「人的資本投資」といったキーワードが注目されています。越境学習は、こうした時代の流れと非常にマッチした新しい人材育成手法です。イノベーションや社内風土改革につなげるための一手として、ぜひ導入を検討してみてはいかがでしょうか。
弊社エンファクトリーでは、3〜6か月程度でベンチャー企業のリアルな課題解決にチャレンジする越境学習プログラム「複業留学」を提供しています。
これまで累計80社以上、300名以上を支援してまいりました。複業留学についてご興味がある方は、ぜひ以下から資料をダウンロードしてください。











