【事例7選】リーダー育成に成功した企業事例|育成のポイントや越境学習の活用法を解説

越境学習サクセッション・リーダー育成

生成AIが日常業務に入り込み、ジョブ型の人事制度が広がるなかで、リーダーに求められる役割も大きく変わりつつあります。

そのため、「これまでの育て方では次の経営を担う人材が育たない」という声が、人事担当者の方から数多く挙がっています。自社のリーダー育成は、どこから手をつけるべきなのでしょうか。

本記事では、リーダー育成に成功した企業事例を7つご紹介します(越境学習を活用した事例3選+注目のリーダー育成事例4選)。 各社の取り組みから導き出した育成のポイントも解説するので、ぜひ自社の人材戦略のヒントとしてお役立てください。

リーダー育成とは?

具体的な事例に入る前に、まずは言葉の定義をそろえておきましょう。

リーダー育成とは、チームや組織を牽引する人材を計画的に育て上げる取り組みです。組織のビジョンを描く力や、メンバーを巻き込んで成果へつなげる力を、時間をかけて鍛えていきます。

先行きの読みにくい現在、リーダーが担う守備範囲は広がる一方です。求められる力を挙げると、次のようになります。

  • 変化を捉え、課題を設定する力
  • 不確実な状況で意思決定する力
  • 周囲を巻き込み、組織を動かす力
  • 多様な価値観を持つメンバーをマネジメントする力
  • 自らの考えやビジョンを言語化する力

これらは一朝一夕に身につくものではありません。だからこそ、体系立てて自社のリーダーを育てる取り組みが、経営の重要テーマとして位置づけられています。

リーダー育成が求められている背景は主に3つある

リーダー育成の重要性は、ここ数年で一段と高まりました。その理由を、3つの角度から確認していきましょう。

生成AIの普及で管理職の役割が変わった

生成AIの急速な普及が、管理職に求められる能力を大きく塗り替えました。

総務省の「令和7年版情報通信白書」によると、生成AIを活用する方針を定めている企業の割合は、2024年度調査で49.7%となり、2023年度調査の42.7%から増加しています。

定型的な資料づくりや情報整理を機械が担うようになると、管理職の価値は「作業を差配する力」から「何に取り組むかを決める力」へと移ります。前例をなぞるだけのマネジメントでは、もはや成果につながりません。自社の「当たり前」を疑い、新しい問いを立てられるリーダーを、意図的に育てる必要があります。

参考:企業におけるAI利用の現状|令和7年版情報通信白書(総務省)

人材不足が加速している

働き手の減少により、リーダー候補を確保すること自体が難しくなっています。

厚生労働省の資料によると、2070年には日本の生産年齢人口(※)が4,535万人となり、2020年の7,509万人と比べて60.4%の水準まで減ると予測されています。

人材不足が続くなか、企業には限られた人材の中から将来のリーダー候補を見出し、計画的に育成していくことが求められています。従来のように年次や異動を重ねながら経験を積むだけでなく、意図的に挑戦機会を設計する重要性が高まっています。 

(※)生産年齢人口:15〜64歳の人口

参考:我が国の人口について|厚生労働省

働き方やキャリア観の多様化が進んでいる

転職や社内公募、副業などキャリアの選択肢が広がるなか、社員が「この会社でどのような経験を積み、成長できるのか」を重視する傾向も強まっています。そのため企業には、処遇やポストだけでなく、成長機会を提供することがこれまで以上に求められています。 

越境学習を通じてリーダー育成に成功した企業事例3選

人材育成の手法は数多く存在しますが、なかでも越境学習は、普段とは異なる環境で実践経験を積める点から、リーダー育成に活用されています。

越境学習では、ベンチャーやスタートアップへ3ヶ月〜6ヶ月の期間で留学し、留学先の一員として現実の課題解決に取り組みます。リーダー育成を目的とする場合、経営層のすぐ近くで意思決定に触れられるポジションを用意するケースが多いです。経営の上流に関われば、座学研修では届かない高い視座が身につきます。

ここからは、実際に成果を挙げた3社の事例をご覧ください。なお、リーダー育成の全体像を押さえたい方は、選抜基準から育成ステップまでを整理した下記の記事がおすすめです。

【大日本印刷株式会社】ベンチャーの風土が引き出した芯のあるリーダーシップ

新規事業開発のプロジェクトチームでリーダーを務める、大日本印刷株式会社の秦様。ゼロから一を生み出すベンチャーのスピード感を体感したいという思いから、越境学習(複業留学)への参加を決めました。

留学先は、移住者を増やして地域の活性化を目指す株式会社みんなのまちづくりです。本業との兼ね合いで使える時間は想定の半分ほどでしたが、「50点、60点だとしてもしっかりアウトプットを出す」と割り切って走り切っています。越境後の変化を、秦様は次のように語っています。

複業留学を経て、特にチームのメンバーや部下に対して、自分の想いや考えをはっきりと伝えるようになったと感じています。以前は新規事業のチームにおいて調整型のリーダーシップを優先し、部下がやりたいことやモチベーションを重視していました。しかし、今は自分の中にミッションやビジョンをしっかりと持ち、それを堂々と表現することができるようになったと思います。

自社の中だけで経験を重ねると、理想とするリーダーシップ像はどうしても自社仕様に染まります。本事例は、異質な環境が眠っていたリーダーシップを引き出した好例といえます。

インタビュー全文は、下記のページからお読みいただけます。

【帝人ファーマ株式会社】年次にとらわれない視座の獲得

帝人ファーマ株式会社の西岡孝晃様は、帝人グループの帝人訪問看護ステーション株式会社で、たった一人の人事担当として採用から労務管理までを担っています。自分の力が他社でどこまで通用するのかを確かめたいと考え、上司に自ら相談して参加を決めました。

留学先の株式会社クルージズ・テクノロジーズでは、インターン生のサポートに取り組みます。テレアポに初挑戦する学生へロールプレイを重ね、相談しやすい関係づくりに力を注ぎました。部署内で最年少という立場を、越境の経験が反転させます。

私は現在の会社で一人で人事を担当しており、部署内でも最年少です。異動も早かったため、部下を持つ経験がありませんでした。今回インターン生をサポートする立場になったことで、彼らの理解やモチベーション、成長を促すために何をすべきかを考える機会が増えました。

自分が育てた相手が成果を出す喜びを、西岡様はこのとき初めて味わいました。

年功序列の色が残る組織では、若いうちにリーダーの視座を持つ機会がなかなか巡ってきません。本事例は、社外の現場がその機会を先回りして用意した好例といえます。

ご本人のインタビューをまとめたレポートは、下記からご覧ください。

【株式会社カルモア】次期経営者を社外の武者修行で鍛える

株式会社カルモアは、創業30年にわたり自主独立経営を掲げ、アジアトップクラスの空気環境ビジネスを展開しています。同社は経営戦略から逆算して次世代経営者の育成を計画し、実力さえあれば年齢に関係なく重要なポジションを任せます。現社長も、次期幹部候補から37歳という若さで抜擢されました。

もちろん、準備なしに重責を渡しているわけではありません。同社は数ある育成施策の柱として、社外での武者修行にあたる越境学習を取り入れています。自社以外の環境を知ることで自己理解を深め、組織へ新たな視点を持ち帰ることが狙いです。

エンファクトリーでは、同社の人事担当者と越境経験者をお招きし、育成の道のりと成果を語っていただくウェビナーを開催しました。

「制度は整えたのに結果に結びつかない」という手応えのなさを抱える方にとって、突破口となる示唆が詰まっています。他社の成功プロセスや社内調整のリアルがわかるイベントレポートは、下記より無料でダウンロードいただけます(社内企画の検討資料にもご活用いただけます)。 

その他のリーダー育成の事例4選

ここからは、越境学習に限らず、独自の工夫でリーダー育成を進めてきた4社の取り組みをご紹介します。

【三井化学株式会社】キータレントマネジメントで後継者の層を厚くする

三井化学株式会社は、長期経営計画「VISION 2030」のもとで次世代リーダーの育成を戦略として組み立て、「人材版伊藤レポート2.0」にも取り上げられました。同社が「キータレントマネジメント」と呼ぶ仕組みでは、将来の経営者となり得るリーダー候補をグループ社員全体の約2%の規模で選び、特別に育てていきます。

戦略上外せないポジションと育成ポジションを合わせて120程度定め、それぞれの後継者を個別に育てる点が特徴です。取り組み8年目にあたる2024年時点で、後継者候補準備率は200%を超えました。ポジション1つに対して、2人以上の候補が育っている状態です。

エンファクトリーでは、この改革を牽引したグローバル人材部部長の小野真吾氏をお招きし、選抜と育成の設計思想を伺いました。自社のサクセッションプランを一から見直したい方に向けて、当日の要点をまとめた資料をご用意しています。

参考:「後継者候補準備率」211% 三井化学の用意周到な「サクセッションプラン」とモニタリング指標「レディネス」とは|JBpress

【アステラス製薬株式会社】本人の意思を起点にポストを任せる

アステラス製薬株式会社は、社員本人の意思を軸に据えた配置と育成を進めています。同社が期待する人材像の先頭には「変化を先取りし挑戦する人材」が掲げられ、自分で考えて動くことを良しとする社風が根づいています。

象徴的な仕組みが、公募制による選抜です。ポストに空きが出ると社内へ公募が出され、立候補した候補者に対して直属の上司とそのさらに上位者などが複数回の面談を行い、適任者を決めます。過去の人事評価だけに縛られず、経験やポテンシャルまで含めて総合的に見極める設計です。

この運用によって、「望んでいないのに管理職になってしまった」というミスマッチを防いでいます。適切な人材がポストに就いているという納得感が、マネジメント層への信頼をも支えています。

参考:実践事例 変化する時代のキャリア開発の取組み|厚生労働省

【オムロン株式会社】リーダーに求める力を言語化する

オムロン株式会社は、リーダーに求める要素を明文化し、社内へはっきりと示しました。同社が軸に据える要素は、次の3つです。

  • Lead the Self(自分をリードする力)
  • Deliver Higher Results(成果を創出する力)
  • Lead People & Organization(人と組織をリードする力)

行動評価も人材配置も、この3つを基準に運用します。判断のものさしが社内で共通化されることで公平感が生まれ、社員は目指すポストに向けて何を伸ばすべきかを描けるようになりました。

さらに同社は、昇格における在籍年数の要件を撤廃しています。昇格試験では論文と面接を通じて、昇格後にどのような業務へ挑みたいかという意志と覚悟を問います。30代前半で管理職を務める社員も生まれ、主体性のあるリーダーが育つ土壌ができあがりました。

参考:実践事例 変化する時代のキャリア開発の取組み|厚生労働省

【株式会社神戸製鋼所】二段構えで効率よくリーダーを育てる

株式会社神戸製鋼所は、全社員に開かれた学びと、絞り込んだ選抜研修を併用することで、育成の効率を高めています。

前者では、時間や場所を問わず学べる動画型の教材を用意し、個人の成長課題に合わせた学習ができるよう工夫しました。導入以降、2,600名以上が何らかの学びに取り組んでおり、自ら学ぶ姿勢が組織へ着実に広がっています。

後者では、将来のリーダー候補に対して、社外講師を招いた経営力養成プログラムを6ヶ月の期間で実施しています。2014年以降の参加者数は200名に達し、体系立てたマネジメントスキルの習得が進みました。

門戸を広げて意欲をすくい上げながら、見込みのある人材には濃い経験を届けています。この二段構えが、限られた人員での育成を成り立たせています。

参考:実践事例 変化する時代のキャリア開発の取組み|厚生労働省

事例から紐解くリーダー育成のポイント

7社の取り組みを紐解くと、リーダー育成を成功させるための参考となる3つのポイントが見えてきます。自社の育成施策を点検するチェックリストとして活用してください。 

【ポイント1】自社のリーダーに求める要素を明確化する

リーダー育成の出発点は、どのようなリーダーを求めるのかを自社の言葉で定義することです。

オムロン株式会社が3つの要素を掲げ、三井化学株式会社が戦略重要ポジションを特定していたように、成果を挙げている企業は例外なく自社なりの「ものさし」を持っています。

リーダー像を描くときは、自社のミッション・ビジョン・バリューから逆算しましょう。「この目的地へたどり着くために、各階層のリーダーは何を担うべきなのか」と問い直すことで、必要な要素が輪郭を持ちはじめます。

定義が曖昧なままでは、選抜も評価も担当者の勘に委ねられてしまいます。まずは言語化から着手してください。

【ポイント2】本物の責任と権限を伴う場を用意する

座学やケーススタディだけでは、真のリーダーシップは身につきません。

従来型の研修では、どれだけ失敗しても実際の事業に傷はつきません。一方、大日本印刷株式会社や帝人ファーマ株式会社が取り組んだ越境学習では、留学先が現在進行形で抱えるプロジェクトに加わるため、本人の判断が事業成果へ直接跳ね返ります。

この緊張感こそが、リーダーとしての自覚を呼び起こします。知識のインプットも欠かせませんが、それを試す場を必ずセットで用意してください。

【ポイント3】普段と異なるタフな環境で経験を積んでもらう

リーダーとして伸びるためには、普段の業務では味わえない困難に直面することが必要です。

課題解決力や判断力、曖昧な状況でも前に進む力は、適度に負荷のかかる環境でこそ鍛えられます。特に大企業では、前例やマニュアルに沿って業務を進める場面が多くなりがちです。しかし、リーダーを任される人材は、前例のない場面で腹をくくらなければなりません。

あえて困難な経験を積んでもらう育成手法は、タフアサインメントと呼ばれています。機会のつくり方や、社員をパニック状態へ追い込まないための勘どころは、下記の記事で詳しく解説しています。

リーダー育成には越境学習の活用がおすすめ

数あるリーダー育成の打ち手の中でも、特に越境学習の活用をおすすめします。越境学習には、ここまで紹介した「リーダー育成の3つのポイント」を実践の中で経験できるという特徴があるためです。 

異質な環境に身を置くことで自社に必要なリーダー像や自身の課題が明確化され(ポイント1)、留学先で当事者として意思決定やプロジェクト推進の責任を負い(ポイント2)、前例のないアウェイな現場でタフアサインメントを経験できる(ポイント3)点が越境学習の大きな強みです。 

越境学習では、伴走支援が成果を大きく左右します。送り出す前の目的合わせ、留学中の内省支援、帰任後に学びを試す場の用意まで、一連の流れを意図的にデザインしてください。

エンファクトリーは、累計400社、12,000名以上の越境学習を支援してきました。次世代リーダーの育成に特化した「リーダー留学」の全体像は、下記のページからご確認ください。

自社に合ったプログラムの選び方や社内提案のステップを網羅した『はじめての越境学習ガイドブック』を無料でプレゼントしています。企画書の作成や社内での説得資料として、ぜひお役立てください。 

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