262の法則とは?マネジメントや職場風土改革における活かし方を解説

組織風土変革

「262の法則」や「2:6:2の法則」といった言葉を聞いたことがあるでしょうか。262の法則は、効果的な組織開発を行うためにぜひ知っておきたい概念です。

この記事では、262の法則の概要や他の類似法則との違い、そして組織づくりに活用するための方法についてわかりやすく解説します。実際に262の法則の考え方を取り入れながら企業風土の改善を行った企業事例も紹介するので、ぜひ最後までお読みください。

262の法則とは?

262の法則とは、組織内の人材のパフォーマンスは「上位2割、中位6割、下位2割」の割合で分布するという法則のことです。ハチやアリの集団でも同様の傾向が見られることから、「働きアリの法則」と呼ばれることもあります。

それぞれの層は、以下のような名前がつけられることが多いです。

名前組織内の割合パフォーマンス
ハイパフォーマー20%高い
ミドルパフォーマー60%平均的
ローパフォーマー20%低い

262の法則を理解すると、それぞれの層の特徴を踏まえたアプローチができるようになるため、人材育成が効果的に進みます。

なお、262の法則は「母集団の規模に関係なく成立する」という意味において、「スケールフリー」の性質が成立すると言われています。

つまり、仮に下位2割を組織から切り捨てたとしても、残った集団のメンバーのパフォーマンスは再び2:6:2の割合に分かれるのです。組織のメンバーが変わったとしても、全体で見れば2:6:2のバランスは保たれることを理解しておきましょう。

262の法則と、パレートの法則や343の法則との違い

組織内の分布には、262の法則以外にもいくつかの法則が存在します。ここでは、よく混同されやすい「パレートの法則」と「343の法則」との違いについて解説します。

パレートの法則との違い

パレートの法則は、「全体の成果の80%は、全体の20%から生み出される」という考え方です。「80:20の法則」とも呼ばれることがあります。「パレート最適」や「パレート効率性」といった言葉にも名を残している、イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートによって提唱されました。

人材育成や組織開発の文脈では、「会社の利益の80%は社員の20%から生み出される」といった解釈がされることが多いです。

262の法則とパレートの法則はどちらも組織開発における重要な法則ですが、主張の内容は大きく異なります。262の法則の特徴は、組織全体を3段階に分割した上で、中間層のボリュームが厚いことを主張している点です。一方、パレートの法則では組織全体を上位と下位の2段階に分けた上で、パフォーマンスの大きな偏りが生じることを主張しています。

343の法則との違い

343の法則は、組織内の人材を「上位3割・中位4割・下位3割」に分類する考え方です。

262の法則と概ね同じ考え方ですが、343の法則のほうが組織内の実力分布をなだらかに捉えています。両者の違いをまとめると、以下の通りです。

法則262の法則343の法則
分布上位2割・中位6割・下位2割上位3割・中位4割・下位3割
パフォーマンスの分散比較的小さい比較的大きい

なお、どちらの法則も絶対的な割合を示しているわけではありません。組織内における実際のパフォーマンス分布は、メンバー構成や業務内容の専門性、パフォーマンスの測定方法などによって異なります。

どちらも、組織全体のパフォーマンスがある程度山なりになることを主張する法則として理解しておきましょう。

262の法則をどう組織づくりに役立てるか?

262の法則を組織づくりに活用するためには、上位・中位・下位のそれぞれに対して適切なアプローチを行うことが重要です。ここからは、各層に対する効果的なアプローチ方法を中心に、262の法則を活用した組織づくりの方法を解説します。

上位2割へのアプローチ方法

上位2割のハイパフォーマーは、組織の成長を牽引する重要な存在です。ハイパフォーマー向けの施策では、評価制度やタフアサインメントなどを駆使しながら、彼らのモチベーションを保つように意識してみてください。

公平で透明性の高い評価制度を導入する

ハイパフォーマーのモチベーションを保つためには、公平な評価制度を導入することが重要です。個人のスキルや成果が正当に評価される制度を整えましょう。

例えば、仕事の成果に応じたインセンティブを導入したり、365度評価を導入したりすることがおすすめです。「自分の頑張りが組織から正当に評価されている」と感じてもらうことで、ハイパフォーマーのモチベーションを高め、組織からの離脱を防ぐことができます。

タフアサインメントを行う

上位2割の人材には、難易度の高い業務に取り組んでもらう「タフアサインメント」を積極的に実施するべきです。

タフアサインメントの具体例としては、以下が挙げられます。

  • 新規プロジェクトのリード
  • グローバル部門への配置転換
  • 難易度が高いプロジェクトへのアサイン

組織内で上位に位置する社員は、「自社だと実力を持て余しているな」といった感じる場面も少なくありません。上記のようなタフアサインメントは、こうした不満をおさえるとともに、成長実感を与えてモチベーションを引き出す絶好の機会です。

タフアサインメントの具体的な方法やポイントは、以下の記事で詳しく解説しています。
https://enfactory.co.jp/ekkyo-gakushu/?p=9921

マネジメント力を向上させる

上位2割の社員は、将来的に会社の中核的な人材になるでしょう。将来の活躍を見越して、早い段階からマネジメント力を高めてもらうことがおすすめです。

以下の施策を検討してみてください。

  • 小さなプロジェクトのリーダーを任せる
  • マネジメント研修を受講してもらう
  • 課長補佐やサブリーダーなどのポジションへ抜擢する
  • 越境学習などの機会提供を行う

上位2割の社員は優れたプレイヤーであることは間違いありませんが、必ずしもリーダーとして優秀とは限りません。個人の力で仕事を進めるだけでなく、チーム全体の生産性を高める視点を身につけてもらうことが重要です。

中位6割へのアプローチ方法

中位6割は、最もボリュームが厚い層です。中位6割の能力を向上させられるかどうかが、組織全体のパフォーマンスを大きく左右します。

この層の社員は「なんとなく課題感はあるが、行動はできない」「周りに合わせる」といった点が特徴です。中位6割の社員には、こうした傾向を踏まえた施策を講じる必要があります。

課題解決に向けた道筋を明確に示す

中位層の社員には、課題解決に向けた具体的な方法を提示しましょう。

中位層の社員は、目標達成のための具体的な方法がわからないことが多いです。例えば「グローバルなキャリアを構築したい」といった思いはあっても、何から始めればよいのかわからずに行動できていないといったケースが少なくありません。

具体的なアクションを提示することで、中位層の社員の行動を促しやすくなります。

以下のような場を活用しましょう。

  • 上司との1on1ミーティング
  • eラーニングの導入
  • 公募型研修の実施

先ほどの例であれば、1on1ミーティングで上司が将来のキャリアプランを聞いてみたり、英語などを学べるeラーニングのアカウントを発行したりするのがおすすめです。

中間層だけでチームを編成する

中位層同士で課題に取り組む機会を設けると、中位層の社員は大きく成長します。

中位層の社員は、普段の業務で「リーダーに素直に従う」「言われたことを無理なくこなす」といった振る舞いをする傾向があります。そのため、社員同士でチームを組んでも、全体の舵取りは上位2割が担うことが多いです。

チームを中位層だけで編成することで、普段上位層が担っているリーダー役を中位層にも経験させることができます。普段とは違うリーダーとしての立ち回りを経験することで、主体性や責任感を伸ばすことが可能です。

上司や周囲がフォローする

中位層には、周囲からのフォローを手厚くしましょう。

中位層の社員は、「課題の解決方法がいまいちピンとこない」「積極性が足りず、課題解決に向けた行動ができない」といった状態に陥りがちです。上司や先輩社員が積極的にアドバイスすることで、こうした状態を解消できます。

単に上司の心構えを変えるだけでなく、メンタリングやコーチング、OJTなど、周囲がフォローするための「仕組み」をつくることが重要です。中位層の成長を組織全体で支援する文化を醸成し、課題解決をサポートしましょう。

下位2割へのアプローチ方法

下位2割への対応では、個別のフォローが課題解決の糸口となります。まずは現状把握から始め、一つずつ課題をすくい上げていきましょう。劣等感からモチベーションが低下してしまっているケースも多いため、心理面でのケアも必要です。

課題の把握から始める

下位層の社員は、まず課題の把握するところから始めましょう。

下位層の社員が低パフォーマンスになる原因は様々です。単純なスキル不足以外にも、適性の問題やモチベーションの低下など、個人によってさまざまな課題が考えられます。まずは上司が丁寧にフォローして、どこに課題があるのか特定することが大切です。

考えられる原因と、それぞれの対応策をまとめました。

考えられる原因対応策
スキルが足りないフォロー研修やOJTの実施
適性がない配置転換、役割の見直し
モチベーションが低下している個別面談の実施
心身の健康に問題があるカウンセリングや産業医との連携

場合によってはメンタルケアが必要になる場合もあるため、必要に応じて産業医などと連携しながら対策を進めていきましょう。

モチベーションを引き出す

下位層の社員は自信を失っていることも多いため、モチベーションが低下しがちです。自己肯定感を高めてもらうためにも、モチベーションの向上に取り組みましょう。

具体的な方法としては、達成可能な短期目標を設定し、小さな成功体験を積み重ねることがおすすめです。例えば「今月中に1件の商談をまとめる」といった、具体的で達成しやすい目標を設定してみてください。達成できた場合には、必ず褒めることが大切です。

また、上司や周囲からポジティブな声掛けも行いましょう。「〇〇さんのおかげで助かりました」「この部分が特に良かったです」といったように、具体的な良い点を積極的に伝えることが、下位層の社員のモチベーションを引き出す第一歩となります。

組織風土を変える「越境学習」というアプローチ

越境学習とは、ベンチャー企業やスタートアップ企業へ3ヶ月〜6ヶ月程度留学してもらう人材育成の手法です。参加した社員は普段と異なる業務に取り組むため、視野が広がったり、新しいキャリアの可能性に気づいたりすることができます。

ここまでさまざまな施策を紹介しましたが、実は越境学習も262の法則を踏まえた効果的な施策の一つです。ここからは、人材育成に越境学習を取り入れる方法を解説します。

組織風土改革には中間層である6割への働きかけが重要

組織風土改革を成功させるためには、組織の中間層にあたる6割の社員への働きかけが非常に重要です。

中間層への働きかけが重要な理由は、単純に数が多いというだけではありません。すでに実力が十分な上位層、伸び悩んでいる下位層に比べ、中位層は成長に向けたポテンシャルが最も高い層です。教育の費用対効果が最も大きい中間層へアプローチすることで、組織全体のパフォーマンス向上を期待できます。

それでは、どのようにして中間層の実力を向上させればよいのでしょうか。

先ほども解説したとおり、中間層には次の傾向があります。

  • 周りに同調し、変化にはとりあえず様子見する
  • なんとなく課題感はあっても、課題解決に向けた一歩が踏み出せない
  • リーダー役は上位2割の社員に任せる

越境学習は、こうした中間層の課題を一気に解決するのにうってつけの手法です。ベンチャー企業やスタートアップ企業での実践的な経験によって、「変化は怖くない」「自分にはこんなことができたんだ」といった気づきを促すことができますし、ベンチャーでの新規事業立案へ参画すればリーダーシップを養うこともできます。

中間層を伸ばすためには、越境学習がおすすめです。

参考:瀬戸口航・著『「越境企業」のはじめ方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン社出版)

越境学習で風土改革に成功した事例

越境学習が組織風土の改革に貢献した事例をご紹介します。

株式会社オリエントコーポレーションでは「自律的キャリア形成支援体制」を掲げ、社員の自律的なキャリア形成を積極的にサポートしています。その一環として、弊社エンファクトリーの実施する「越境サーキット」を導入していただきました。

もともとは「社内に同じような社員が多い」という課題を感じていましたが、越境サーキットへの参加を通じて、社外の人と関わる重要性を認識してもらうことに成功したそうです。人事・総務グループの相原様からは、越境学習の効果について以下のようにお答え頂きました。

他の企業の方と交流しながら、同じ目標に向けてさまざまなアプローチをしていく経験が非常に有意義だったという声が、ほとんどの参加者から上がっています。さらに、自社の考え方や視点で物事を考えてしまうと、それが正しいと思い込んでしまうこともあります。越境サーキットを通じて、外に目を向けることの重要性を改めて認識できたという声もあります。

なお、越境学習に誰が参加しているのか全社員にわかるようにするなど、社内に取り組みを浸透させるための工夫も数多く行っています。

本事例について詳しく知りたい方は、以下のインタビューをご覧ください。

導入企業インタビュー「越境サーキット」導入の背景と期待:オリエントコーポレーションの挑戦 | 越境学習のご案内 

まとめ

本記事では、262の法則や262の法則を踏まえた人事施策について詳しく解説しました。

262の法則はほとんどの組織に当てはまる法則であるため、人材育成を考えるときには、この法則を踏まえたアプローチが重要です。それぞれの層には異なる特徴があるため、全社員向けの施策以外にも、各社員に実力に応じた細やかなフォローを行いましょう。

また、組織の風土改革を行うためには、組織の中間層である「6割」への働きかけが非常に重要です。ぜひ今回解説した越境学習を積極的に取り入れながら、変革が進みやすい組織風土を整えてみてください。

越境学習プログラムを専門に提供する株式会社エンファクトリーでは、これまで累計250社7,000名の人材育成を支援してまいりました。導入のしやすさ・効果の実感のしやすさから、はじめて越境学習を導入する企業に広く活用いただいています。

「中位6割」へのアプローチはもちろん、上位2割や全社員を対象とした導入にも柔軟に対応させていただきます。ぜひお気軽にお問い合わせください。

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