【AI時代の組織論】職種の壁が溶ける今、組織を変革する「越境 in the loop」とは?

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急速に進化する生成AI。これまで当たり前だった「職種」や「役割」の壁が、今まさに溶け始めています。

メンバーの主体的な「越境」を一時的なブームで終わらせず、組織のDNAへと組み込むにはどうすればいいのか?

今回はエンファクトリーの島崎が、先進企業の事例と、個人の学びを組織の成長へと還流させる多層システム「越境 in the loop」について解説します。

生成AI技術の急速な進化により、これまで専門的とされてきた特定のスキルが陳腐化するスピードが早まっています。

その結果、従来の職種や部門、さらには企業間といった壁を飛び越えて活躍する「越境」にあらためて注目が集まっています。

AI時代を勝ち抜くためには、個人の努力に頼るだけではなく、企業としてこの「越境」を組織づくりや事業づくりに戦略的に織り込んでいくことが不可欠です。

今回は、先進企業の事例を交えながら、越境の経験を組織の力に変える「越境 in the loop」の概要とその取り組み方について解説します。

※参考:NewsPicks特集「AIが人事をぶっ壊す」

先進企業が直面する職種の壁の融解と「越境」

すでに先進的な企業では、AIを起点とした「越境」が日常的に起きています。

【Sansan】「ソリューションビルダー」に見る職種の融解 

名刺管理サービスを展開するSansanでは、AIの活用によって職種や役割の壁が溶け始めています。
例えば、非エンジニアのビジネス職がAIを用いてコーディングを行い、独自の社内システムを構築するといった事例が生まれています。

同社は非エンジニアがAIを活用してソリューションを提供する「ソリューションビルダー」という新職種を新設し、事業成長のレバレッジにしようとしています。

また、AIで審査業務の大半が自動化された法務担当者が、その知見を活かして顧客向けのAI導入コンサルタントへと「越境」するようなキャリアパスも描かれています。

【メルカリ】「AI-Native」な組織が起こす日常的な越境 

一方、メルカリでも「AI-Native」な組織づくりを進める中で、エンジニアがデザインやプロジェクトマネジメントまでこなすといった越境が発生しています。

コーポレート部門の非エンジニアも、「AI Agent Day」を通じて自らの業務を代替するAIエージェントを作成し、チーム内でシェアする動きが生まれています。

従来のジョブ定義が抱える課題

両社に共通しているのは、従来のジョブ型や役割定義だけでは、こうした越境人材の活躍を評価しきれなくなっているという課題感です。

個人の学びを組織に還流する「越境 in the loop」とは?

越境がもたらす「アンラーニング」と「行きっぱなし」の罠 

社員が部門外や社外などのアウェイ環境に飛び込む「越境」は、既存の成功体験や思考を壊す「アンラーニング」を強烈に引き起こします。

しかし、単に社員を外部へ送り出すだけでは「行きっぱなし(Out of loop)」になり、得られた知見が組織に還元されず、最悪の場合は孤立や離職を招く罠に陥ります。

この欠陥を克服し、個人の変容を日常的な組織の成長サイクルに組み込む多層的な還流システムが「越境 in the loop」です。

 組織の成長サイクルを回す「4Iフレームワーク」の4ステップ 

具体的には、以下の4つのステップで構成されます。
※「4Iフレームワーク」を基盤としています

  • 直感(Intuiting):アウェイ環境での奮闘を通じ、個人が潜在的な気づきや「アハ体験」を得る。
  • 解釈(Interpreting):持ち帰った気づきを、1on1などを通じて組織の言語に翻訳して周囲へ伝える。
  • 統合(Integrating):翻訳された知見をもとに、新規プロジェクトの立ち上げやチームの共同行動へと定着させる。
  • 制度化(Institutionalizing):アップデートされた個人のスキルを、評価制度や人事異動などの公式な仕組みに組み込み、新たな組織のDNAとする。

「越境 in the loop」を機能させるための取り組み方

では、企業はどのように「越境 in the loop」を組織に実装すればよいのでしょうか。

具体的なアクションとして下記3点が挙げられます。

1. 組織側の「被越境学習」を促す

越境から帰還した社員は、自社の旧態依然とした慣行に対して「なぜこれを続けているのか?」という違和感を抱きます。

この時、周囲がそれを排除するのではなく、対話を通じて受け止めることが不可欠です。

帰任者の視点から自社の無意識の前提に気づき、業務プロセスなどをアップデートする「被越境学習(越境者からの学び)」が、組織全体の間接的な自己改革を促します。

2. 外部人材による「内なるアウェイ」の創出

自社社員を外に出すだけでなく、外部のプロ人材や「複業留学の受け入れ」などを通じて異質な知見を社内に呼び込むことも有効です。

外部人材が組織の「免疫系」に健全な揺さぶりをかけることで、社内に「内なるアウェイ(外圧)」が生まれ、前例踏襲の文化を打ち破る強力な触媒となります。

3. 越境を促進する評価制度への刷新

Sansanやメルカリの事例からもわかるように、職種の壁を越えた働き方を正当に評価する仕組みへのアップデートは急務です。

失敗を許容しない減点主義から脱却し、自己評価と対話を軸とした多面的な評価制度へと刷新することが、越境を「一時的なプロジェクト」から「日常の習慣」へと昇華させます。

AIが業務を代替し、特定のスキルが陳腐化していくこれからの時代。

変化を拒むのではなく、組織を半透過性の膜とし、社内外の異質な知を絶えず巡らせる「ループ」を構築し続けることこそが企業の生存戦略となります。

ぜひ、貴社の組織づくりにおいても「越境 in the loop」の視点を取り入れ、変化に強い組織づくりを進めてみてはいかがでしょうか。

◆執筆者プロフィール

島崎 由真(株式会社エンファクトリー ライフデザインユニット 副ユニット長) 

企業の自律型人材育成のための越境型研修サービスの「複業留学」「越境サーキット」「リーダー留学」など、社外への越境を通して、人・組織が変わるきっかけを創出する「場のデザイン」を提案・支援する越境コンサルタントとして活動。また、人事・HR事業者による1500名のコミュニティ「One HR」の共同代表も務める。 

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エンファクトリーでは、他社での実践を通じて自立型人材を育てる「複業留学」や、職種の壁を越えて変革を起こすリーダーを育成する「リーダー留学」を提供しています。

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