ビジネス環境の変化が激しさを増す昨今、越境学習に注目する企業が増えてきています。
越境学習とは、自社と異なる環境で多様な経験を積む人材育成手法のこと。VUCA時代に適した育成手法として徐々に浸透しつつあるものの、「具体的な実施方法がピンとこない」という人事担当者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、越境学習に成功した企業事例12選をご紹介します。施策を成功させるためのポイントも探求しつつ、越境学習に対する理解を深めていきましょう。
目次
越境学習とは?
越境学習とは、所属している企業とは異なる環境で経験を積む人材育成手法のことです。
例えば、大企業に所属する社員がベンチャー企業やスタートアップへ越境する実施方法があります。この場合は3〜6ヶ月間の時間をかけて、越境先の企業の一員として課題解決に挑むのが特徴です。ほかにもNPOへ留学する「プロボノ」や、観光地などでリフレッシュしながら働く「ワーケーション」も注目されています。
越境学習が注目されている背景
越境学習が注目されている主な背景は、イノベーションに対するニーズの高まりです。
同じ会社で長く働く社員同士は、どうしても考え方や発想が似てきてしまいます。同質性の高い環境は居心地が良いですが、イノベーションにつながる画期的な発想は生まれません。そこで、あえて社員に社外へ飛び出してもらうことで、自社とは異なる価値観に触れてもらおうとする企業が増えてきています。
越境学習で知識や価値観をアップデートすれば、新規事業の創出や日々の業務改善につながるアイディアを得ることができるかもしれません。越境学習によって小さなイノベーションの種をまいておくことが、組織の閉塞感の打破や競争力向上につながるのです。
経済産業省も越境学習を推進している
越境学習は、経済産業省も注目している取り組みです。
経済産業省は2018年から「未来の教室」実証事業を実施したほか、2022年3月には『越境学習をイノベーション創出につなげるために』、2025年3月には『越境学習を支える伴走者のための実践ガイドライン』などの資料を順次公開し、越境学習の周知・普及を行っています。
これらの資料でも言及されている通り、越境学習はイノベーションの創出にぴったりの育成手法です。ビジネス環境の変化が激しさを増している中、越境学習は今後もますます普及していくでしょう。
【導入企業】越境学習を導入した企業事例
ここからは越境学習の導入に成功した企業事例を見ていきましょう。いずれもエンファクトリーが支援した事例です。
なお、エンファクトリーが提供する越境学習プログラムには、大きく分けて「複業留学」と「越境サーキット」の2種類があります。「複業留学」は、社員が一定期間(週1回・3か月間)ベンチャー企業やスタートアップの一員として実際の業務に携わる留学型のプログラムです。一方「越境サーキット」は、他社の社員とチームを組み、スタートアップが抱えるリアルな課題解決に対話・提案を通じて取り組む、プロジェクト型のプログラムです。
※本記事に掲載している導入数値やご担当者様の役職・情報は、取材当時の情報に基づいています。
まずは、越境学習を導入した企業担当者の方のインタビューです。
株式会社オリエントコーポレーション
株式会社オリエントコーポレーションでは、2022年9月から越境学習プログラム「複業留学」を導入しています。
複業留学では、週1回の頻度で3ヶ月間、ベンチャー企業やスタートアップへ留学します。同社では参加者を公募制で決めており、2022年度の参加人数は15名にのぼりました。
同社の東様は、越境学習の成果について次のように言及されています。
複業留学で体感した意思決定スピードやコミュニケーション手法を本業で導入・実践していきたいという声はよく聞きます。また、新たな人財戦略の求める人材像でも掲げているのですが、スタートアップで働く経験をすることで、「主体性」「分析思考」が身につく傾向にあると感じています。
導入後は越境経験者が自身の経験を周囲へ共有するようになり、徐々に社内全体に越境学習が浸透しているそうです。
株式会社オリエントコーポレーションにおける越境学習の事例は、次のページからさらに詳しくご覧いただけます。
エンファクトリーでは、株式会社オリエントコーポレーションの中期経営計画や人財戦略、自律的キャリア形成支援戦略を詳しく紐解くイベントも開催しました。イベントレポートは下記のページからダウンロードできるので、同社の人材戦略について詳しく知りたい方はぜひご覧ください。
SMBCコンシューマーファイナンス株式会社
金融業界が激しく変化する中、SMBCコンシューマーファイナンスでは「自ら殻を破って成長できる」人材を育成したいと考えていました。
そこで、2021年から公募制で越境学習プログラム「複業留学」を運用中。同社では、越境学習を通じて社員の視野が広がっていることを実感しているそうです。例えばECサイトのマーケティングを経験した留学生は、越境学習を通じて本人のキャリアについて見つめ直す機会を得ることができました。
同社の濱様からは、越境学習の効果について次のようにお答えいただいています。
社外の第三者に評価をしてもらえる機会は貴重です。自分のキャリアを見つめなおすきっかけになると思います。また、「組織」という観点では、「複業留学」によって自発的に行動できる人を増やし、さらに本人の行動を組織に波及していくというところに役立てていけると感じます。
SMBCコンシューマーファイナンスにおける越境学習の導入事例は、以下のページから詳しくご覧ください。
株式会社パルコ
株式会社パルコでは、社員の「経験価値」を最大化するために越境学習を導入しました。同社では、以下の2点を決め手に複業留学の導入へ踏み切っています。
- 個人の学びを組織に浸透できる点
- どんな人にとっても新しい経験になる点
越境学習に参加した社員は、スタートアップ企業との文化の違いに戸惑いつつも、関係構築力やコミュニケーション力を活用しながら課題解決に取り組みました。社外と触れ合う経験を通じて、同社の社員が持つ強みを再発見するとともに、企業全体の強みを客観視することに成功した事例です。
同社の事例は、以下のページから詳しくご覧いただけます。
中部電力株式会社
中部電力株式会社では、さまざまな業種の人と交流してイノベーティブな発想を養うことを目的に、越境学習プログラム「越境サーキット」の導入を決めました。越境サーキットでは3ヶ月を1タームとして、スタートアップの抱えるリアルな課題解決に取り組みます。
参加した社員には、「視野」において参加前と参加後で大きな違いが見られました。人事部のS様からは、越境学習の効果について次のようにお答え頂いています。
参加者が自分の強みや弱みを理解できるようになったことは、大きな成果だと考えています。変身資産アセスメントを受けることで自己理解が深まり、異業種のチームメンバーからフィードバックを得ることができたことで、 自分自身の能力を客観的に把握する良い機会になったのではないかと思います。
同社では越境学習の効果も定量的に測定しており、参加前後のアンケートからは挑戦意欲などにも前向きな変化が見られたそうです。
同社での越境学習の事例は、次のページから詳しくご覧いただけます。
株式会社明治
株式会社明治では社員のキャリア自律を進めたい一方で、社員がなかなかそのための行動を起こしてくれないという課題がありました。
そこで導入したのが、越境サーキットです。越境サーキットでは多様な企業が多岐にわたるテーマを提示しているため、外部の人材と交流することで新しい視点を獲得することが期待できます。
導入初期の段階では具体的な成果が出るのはこれからという側面もありましたが、 同社では越境サーキットで得た経験を自身の行動へ移してもらうとともに、それが周囲へ好影響を与えることを期待しているそうです。実際、参加した社員からはポジティブな意見が寄せられました。
同社では「キャリアデザインシート」という独自の制度を導入するなど、越境学習と並行しながらキャリア自律に向けた取り組みを複数進めているのも特徴です。本事例の詳細は、次のページからご覧ください。
サッポロビール株式会社
大手ビールメーカーのサッポロビール株式会社。入社から定年まで務めることが一般的な同社の社風の中、人事部の間瀬様は「居心地の良い環境から一歩踏み出す経験」の必要性を強く感じていました。
そんな同社では、社員の越境を支援することを目的に越境サーキットを導入しています。
本事例の特徴は、45歳以上の社員を対象としている点。多くの企業が若手・中堅社員を中心に導入する中、同社ではミドルシニア層以上の活躍を推進するために越境学習を導入しました。
導入後の効果について、間瀬様からは次のようにお答えいただいています。
実際に、参加者からは社外での経験を通じて多くの気づきを得たという声が上がっています。これらの気づきを今後の仕事に活かしたいという意欲も感じられました。社内では、参加者同士がコミュニティを作り、感じたことや疑問を共有しながら進めています。これにより、互いに刺激を受け合い、成長を促進しています。
今後は参加者同士のコミュニティの活動をさらに進めたり、若い層の社員へ取り組みを広げたりすることで、越境学習のさらなる普及を図るそうです。
本事例の詳細は、次のページからご覧いただけます。
【越境経験者】越境学習を経験した方の事例
越境学習に関する取り組みを紹介しましたが、越境学習を実際に経験した方にはどのような変化があったのでしょうか。
ここからは、越境学習を経験した方へのインタビューをお届けします。越境学習参加者の「リアル」を知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
越境学習で自己理解とスキルの成長を実現
関西電力のIT戦略室に所属する松本様。「今後のキャリアで自分が何を成し遂げたいのか明確でない」という課題意識から、越境学習プログラム「複業留学」への参加を決めました。
普段はITガバナンスの全体統括を担当する松本様ですが、越境学習中にはアスリート業界の抱える課題の分析や支援サービスに関する提言に取り組みました。留学中は主体性を持つことを意識しつつ、代表とも議論を重ねて提案をブラッシュアップしたそうです。
参加後のインタビューでは、次のようにお答え頂いています。
何が得られるかは人それぞれですが、興味を持って手を挙げたのであれば必ず何か得られると思います。 最も重要なのは留学先のミッションを自分事化して主体的に取り組むことであり、それさえできれば必ず良い経験になると思います。
越境学習を通して、主体性の大切さを実感することができた成功事例です。本事例の詳細は、次のページからご覧ください。
初心に返って新たな視点から自分を見つめ直す
帝人ファーマの田上様は、「これまでのキャリアが自社に限定されているな」という課題感がありました。
そこで、他社や異業種のリアルを知ることを目的に、越境学習へ参加。毎週月曜日を越境学習の時間にあて、売上向上のためのマーケティングなどに取り組みました。留学先は社内ベンチャーという位置づけで予算が限られていましたが、工夫を重ねながら未開拓の顧客へのアプローチを進めたそうです。
インタビューでは以下のようにお答え頂いており、越境学習が本業へ良い影響を与えていることが伺えます。
複業留学での経験を活かしながら、本業で提案をしていくことで、施策に反映させることができています。こうした進展は、自分自身の成長を実感する良い機会になっています。
留学先によって、マインド面に良い変化が生まれた事例です。
本事例の詳細は、次のページからご覧いただけます。
外部の視点がもたらす変化を実感
炭素繊維の製造技術の開発に取り組む帝人株式会社の中村様。入社以来16年間同じ業務に携わる中で、「他の企業はどのような仕組みで業務を進めているのだろうか」という疑問が湧き、越境学習への参加を決めました。
留学中には、以下のような学びがあったそうです。
あえて批判的な意見を打ち合わせの際に述べることの重要性を感じました。(中略)また、AIが進化する中で、チームとして結果を出すためには人間が関与する部分がまだまだ重要であると感じました。チームビルディングやプロジェクトマネジメントのスキルをさらに伸ばす必要があると考えています。
社外での経験を通じて、自身の成長に必要な要素を自覚することに成功しています。また、自社のスタンスや特徴も客観視できたそうです。
本事例についてさらに詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。
越境で新たな自己の可能性を認識できるように
株式会社オリエントコーポレーションの樋口様は、「自分のスキルが社外でも通用するか知りたい」という思いから、越境学習への参加を決めました。また、「変化の激しい時代に合わせた変革マインドが機能しているか確認したい」という思いも、越境学習への参加を後押ししたようです。
本事例では酒造会社へ留学して頂き、チームを組んで課題解決に取り組んでいます。チームにはさまざまな年代の方がいましたが、最初に「フラットに意見を言い合おう」と決めたことがうまく機能し、チームの提案の優勝につながったそうです。
留学後には、以下のような学びが得られました。
自分の強みは新たな視点や気づきを見つけ出すことだと理解を深めました。チームの皆さんから私の長所として、情報収集や分析力、自分の意見がしっかりしている点を評価してもらいました。
留学後には家族がボランティア活動へ興味を持ったり、周囲の同僚が本業以外の何かへ挑戦しようとしたりするなど、周囲にもさまざまな好影響が広がっています。
本事例の詳細は、以下のページからご覧ください。
異業種交流から得た貴重な気づき
サッポロビール株式会社の水谷様は、上司から越境学習をおすすめされたことをきっかけに越境サーキットへの参加を決めました。
参加する前は不安もあったそうですが、「少しの勇気で一歩踏み出すことの重要性に気づけた」と水谷様。「自信がなくてもまずは行動を起こす」という重要性に気がついたほか、留学先の業界に対する理解も深まるなど数多くの学びがあったそうです。
越境学習後には仕事の進め方や価値観も変わるなど、マインド面にも多くの変化がありました。本事例について詳しく知りたい方は、ぜひ以下のページをご覧ください。
多様な業界との出会いがもたらす学び
株式会社オリエントコーポレーションの藤井様は、当時の支店長の方の影響を受けて越境学習への参加を決めました。3ヶ月間で異業種・異職種のメンバーとチームを編成し、留学先企業の課題解決に挑戦しています。
越境サーキットでは、さまざまな業界や職種の方と出会えたことが刺激につながったそうです。セキュリティ意識や上司との距離感など、多くの場面で企業カルチャーの差を実感したことが新鮮な体験につながりました。
越境学習の効果について、インタビューでは次のようにお答えいただいています。
以前と比較して自己理解が深まったと感じています。特に、チームメンバーからのフィードバックや、発表後の振り返りの時間を通じて、自分の強みや性格のタイプについて明確になったと思います。また、ワークショップを通じて、「心のアクセル」や「心のブレーキ」を理解することで、自己理解がさらに深まりました。
本事例の詳細は、次のページからご覧ください。
越境学習を成功させるためのポイント
ここまで、越境学習のさまざまな成功事例を見ていきました。どの企業も、それぞれの方法で越境学習をうまく人材育成に組み込んでいます。
それでは、越境学習が成功している企業にはどういった特徴があるのでしょうか。
事例を見ると、越境学習を成功させるためのポイントは下記の3つです。
- 越境学習の目的を明確にする
- はじめは推薦から始めてみる
- 越境学習を組織の学びに変える
ここからは、越境学習を成功させる秘訣を紐解いていきましょう。
なお、これらのポイントはすべて以下の「はじめての越境学習ガイドブック」の中で詳しく解説しています。越境学習時のポイントをわかりやすく解説しているので、詳細を知りたい方はぜひ以下の資料をダウンロードしてください。
越境学習の目的を明確にする
越境学習を成功させるためには、越境学習の目的を明確化することが何より大切です。
ここまでの事例で見てきた通り、越境学習にはさまざまな活用方法があります。若手社員が自身のキャリアの幅を広げるために用いることもできますし、シニア層の活躍を促す手段として使うことも有効です。
ただし、目的が不明確だと「なんとなく楽しかった」で終わってしまう可能性があります。
例えばリーダー育成が目的であればベンチャー企業の経営プロジェクトへ越境する、イノベーションの創出が目的なら他社での事業立ち上げプロジェクトに越境するなど、人材育成の目的にあった越境学習プログラムを選択することが大切です。
はじめは推薦から始めてみる
越境学習にはじめて取り組む際は、推薦から始めるのも一つの手です。
一言で「推薦」といっても、以下のようにさまざまな方法が考えられます。
- 所属部署の上司による推薦
- 公募型研修の参加者からの推薦
- 異動から時間が経った人の推薦
なお、推薦で参加してもらう場合には、越境学習の意図や目的をしっかりと説明することが大切です。会社からの期待感を示すことで、社員は越境学習のイメージが湧きやすくなります。
越境学習を組織の学びに変える
越境学習を成功させるためには、取り組みを社内で浸透させ、組織全体へと学びを波及させていくことも大切です。
越境学習では普段と異なる環境に身を置く必要がありますが、新しい環境に飛び込むことに抵抗を感じる人も少なくありません。取り組みを広めるためには、越境学習のメリットが社内で伝わる仕組みを作ることが大切です。
次のような施策が考えられます。
- 活動レポートの作成
- 活動共有会の実施
- 越境者本人による波及
また、エンファクトリーでは越境学習中に伴走する「ピアサポーター」の導入もおすすめしています。ピアサポーターは、越境学習中のサポートを行う存在です。越境者本人の上司や同僚に頼むことが多いですが、サポートさえ担当できれば誰でも問題ありません。
ピアサポーターがいることで参加者の悩みや不安を解消できますし、ピアサポーター自身が「次は自分も参加してみよう」と考えるきっかけにもなります。
弊社では、ピアサポーターを担当した社員に対してアンケートを実施しました。以下のように、多くの方がピアサポーターをきっかけに越境学習へ興味を持っています。
| アンケート項目 | 肯定的な回答の割合 |
| 「ピアサポーターとして研修に関わってよかった」 | 約80% |
| 「自分も参加したい」 | 約40% |
| 「他の人へ勧めたい」 | 約60% |
レポートやピアサポーターの導入などを通じて、組織全体へと越境学習を浸透させてみてください。
越境学習ならエンファクトリーにお任せください
越境学習の事例や成功ポイントについて、ご理解いただけたでしょうか。
越境学習にはさまざまな活用方法があるため、自社の人材育成の目的に合わせたプログラム・対象者を選定することが大切です。ぜひこの記事で解説した事例を参考に、自社に最適な実施形態を考えてみてください。
この記事で紹介したように、エンファクトリーではさまざまな企業で越境学習を支援してまいりました。導入のしやすさ・効果の実感のしやすさから、はじめて越境学習を導入する企業に広く活用いただいています。
越境学習について少しでもご興味がある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。















