エンファクトリーは、東京都の令和7年度「大企業と連携した中小企業・スタートアップの成長促進に向けた人材交流支援事業」に運営協力として携わっています。本事業は、人材育成を進めたい大企業と、事業を加速させたい中小企業・スタートアップの双方に対し、人材交流を通じた双方の成長を促すための取り組みです。
▶本事業の詳細: https://jinzai-kouryu.metro.tokyo.lg.jp/
2026年5月にはこれまでの成果を共有する中間報告会が開催され、成果報告や基調講演、パネルディスカッションなどの多彩なプログラムが展開されました。本連載では全4回にわたって、当日の内容を詳しくご紹介いたします。
▶中間報告会の詳細: https://jinzai-kouryu.metro.tokyo.lg.jp/interimreport/
第1回となる本記事のテーマは、越境学習の効果です。
『越境学習入門 組織を強くする「冒険人材」の育て方』の共著者であり、組織行動論や心理学を研究されている株式会社ビジネスリサーチラボ代表取締役の伊達洋駆様による基調講演の内容をもとに、越境学習が持つ双方向的なメリットに迫ります。
目次
越境学習が必要とされる背景
長年同じ企業で働いていると、いつの間にか社員の思考が似通ってきます。
既存の業務を着実に回す力は磨かれますが、新しい発想が求められる場面では、これまでのやり方が通用しなくなることも少なくありません。
世の中が大きく変わる中、単に新しい事業を立ち上げるだけでなく、組織の硬直化を防ぎながら、自社を支える「既存事業そのもの」をいかに変革・持続させるか、そして既存事業と新規事業をどう両立させるかが多くの企業で問われています。
この難しさを乗り越えるための効果的な手段が「越境学習」です。
伊達様は、帰任を前提に普段の職場をいったん離れる体験こそが、新たな視点を得るきっかけになると語りました。
慣れ親しんだ環境を一度離れることで、これまで見えていなかった自社や自分自身の姿が浮き彫りになり、これまでの常識にとらわれない自由な発想ができるようになるのです。
アウェイの環境でこそ求められる力がある
越境先となるスタートアップや中小企業は、参加者にとって完全な「アウェイ」です。肩書や会社の看板が通用しない環境では、必ずしも誰かが明確に指示を与えてくれるわけではありません。自分自身で課題を設定し、自走しながら周囲と協働してスピーディに動く力が求められます。
伊達様は、このようなアウェイで直面する葛藤こそが、成長の源泉になると指摘します。
越境学習の期間中には、日々の業務とは勝手の違う場で試行錯誤を重ねるうちに、思い通りにいかない場面にも数多く直面するものです。その葛藤の中で「自社のやり方だけが正解ではない」と気づくと、参加者の視点は大きく広がります。そして帰任後には、広い視点から自社を客観的に見つめ直す力が身につくのです。
受入企業側が得られる価値
越境学習は、送り出す大企業だけでなく、受け入れるスタートアップ・中小企業にとっても大きな価値があります。
まず、自社の常識にとらわれない視点からの「なぜ」です。異なる背景を持った人材が加わることで、これまで当たり前とされてきた前提に、素朴かつフラットな問いが投げかけられます。
社内の人間だけでは気づきにくい視点だからこそ、こうした意見が自社を見直すきっかけになり、思わぬ角度から事業成長を加速させます。
次に、大企業勤務の社員ならではの良さを享受できる点です。大企業には、以下のような強みがあります。
- 品質管理の高さ
- リスクや法令順守への意識
- 人を育てるノウハウ
「ルールづくりがこれから」という成長中のスタートアップにとって、こうしたノウハウに直接触れることは組織の土台を作る絶好のチャンスです。
そして最後に、メンバーのモチベーションへの好影響です。
大企業から来た人材が自社の取り組みを認めてくれることは、現場に自信や活力をもたらします。手探りで業務に取り組む機会も多いスタートアップの社員にとって、外部からのポジティブな評価は何よりの励みになるのです。
まとめ:越境学習の本質は双方向の価値にある
基調講演で伊達様が最後に言及したのは、「越境学習は単なる労働力の提供やスキルアップにとどまらない」という点です。異なる知見と価値観が交わり、組織全体の力へと変わっていくという「双方向の価値」こそが、越境学習の本質的な意義だといえます。
送り出す側にとっては、社員にチャレンジングな成長機会を用意できるとともに、自社にはないノウハウを取り込む機会になるというメリットがあります。受入企業は、即戦力の人材による事業の加速や組織基盤の強化、ネットワークの拡大といった効果を得られます。越境学習の本質的な意義は、送り出す側と受け入れる側という双方の組織に成長を促す点にあるといえるでしょう。
今回は、越境学習の持つ意義についてお届けしました。次回は、実際に越境学習へ参加した方の発表内容をもとに、プログラムがもたらした参加者の成長や意識の変化についてご紹介します。
▼本事業関連プレスリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000348.000025659.html
▼登壇者関連情報「伊達氏登壇 キャリア自律はなぜ必要?|イベントレポート」
https://enfactory.co.jp/ekkyo-gakushu/report/1874/
▼越境学習の背景・効果に関する解説記事
https://enfactory.co.jp/ekkyo-gakushu/column/9594/
