【徹底解説】経験学習とは?人材育成に活かす4つのステップ、PDCAとの違いや企業事例を解説

越境学習サクセッション・リーダー育成

「研修を実施しても現場の行動が変わらない」
「研修直後は意識が高まっていたのに、気がつくと元のやり方に戻ってしまっている」

こうした悩みをお持ちの人事担当者や人材開発担当者の方も多いのではないでしょうか。こうした課題を解決するヒントになるのが、「経験学習」という考え方です。

経験学習を正しく理解し、育成の仕組みに組み込むと、日々の業務や研修を長期的な成長の機会に変えることができます。

本記事では、経験学習の基本定義や経験学習サイクルの4段階、PDCAや体験学習との違い、効果的な内省(リフレクション)のポイント、企業での実践事例までわかりやすく解説します。

経験学習とは?

自分の経験を振り返って教訓を引き出し、それを次の行動に活かすという学習の考え方です。

経験学習の考え方は、デイヴィッド・コルブ(David A. Kolb)が1984年に体系化した「経験学習モデル」によって広く知られるようになりました。日本では、経営学者の松尾睦氏などによって、職場における経験学習の研究が進められています。

経験学習では後述する4つのステップを繰り返すことで、「単に仕事をこなす」のではなく「経験を再現性のある学びに変える」ことを重視します。OJTや研修はもちろん、日頃の業務における人材育成でも極めて有効なフレームワークです。

PDCA・体験学習との違い

経験学習と混同されやすい概念に「PDCA」や「体験学習」があります。それぞれの定義や重点を置く目的の違いを整理すると、下表のようになります。 

比較項目経験学習PDCA体験学習
主な目的人の学び・成長と能力の再現性獲得 業務・プロセスの改善と成果向上 体験を通じた気づき・実感が得られること 
重点を置くプロセス経験の振り返り(内省)と概念化(教訓化) 計画(Plan)と評価・改善(Check/Action) 「やってみる(体験)」こと自体 
得られる成果汎用的な教訓・スキル・マインド変容 業務成果・効率化・品質向上 体験による感情的理解・新鮮な気づき 

PDCAとの違い

PDCAは業務改善や品質管理を主目的とする手法です。一方、経験学習は「人がその経験から何を学び、どう成長したか」という人間の成長に重点を置きます。どちらもサイクルを循環させる点は共通していますが、育成の文脈では経験学習の視点が不可欠です。 

体験学習との違い

「経験学習」と「体験学習」は、文献や用いられる場面によって明確に区別されないこともあります。どちらも体験・経験から学ぶという点では共通していますが、本記事では、経験を振り返り、そこから教訓を導き出し、次の行動で試すという一連のサイクルを「経験学習」として捉えています。 

経験学習における4つの段階

経験学習には、次の4つのステップがあります。これらが一連のサイクルを描いて循環することから「経験学習サイクル」と呼ばれます。

  1. 具体的経験
  2. 内省的観察
  3. 抽象的概念化
  4. 能動的実験

各段階の役割と、実践における問いかけのポイントを確認していきましょう。

経験学習サイクル①|具体的経験

最初の段階は、学習者が新しい状況や課題に直面する「具体的経験」です。

日常業務も経験学習の重要な材料になります。一方で、これまでのやり方が通用しない場面や、新しい役割への挑戦など、適度な負荷(ストレッチ)のある経験は、自身の前提や行動パターンを見直すきっかけになりやすいと考えられます。 

  • 問いかけ例: 「今回のプロジェクトで、最も予想と異なった出来事は何か?」

経験学習サイクル②|内省的観察

2つ目の段階は、経験を一歩離れた場所から多角的に振り返る「内省的観察(リフレクション)」です。

起きた出来事に対して「なぜそうなったのか」「自分のどの行動が影響したのか」を客観的に見つめ直します。すぐに答えを出そうとせず、事実と感情を丁寧に紐解く姿勢が求められます。

  • 問いかけ例: 「うまくいった(あるいは失敗した)真の原因はどこにあったのか?」「その時、自分はどのような前提で判断していたか?」

経験学習サイクル③|抽象的概念化

3つ目の段階は、内省で得た気づきを「他でも応用できるルールや持論」へ昇華させる「抽象的概念化」です。

個別の出来事に対する感想で終わらせず、「今回の経験から、ほかの場面にも応用できることは何か」を考え、自分なりの仮説や教訓として整理します。 

  • 問いかけ例: 「今回の経験から得た学びを、別の業務や他のメンバーに伝えるとしたらどのようなルールになるか?」

経験学習サイクル④|能動的実験

4つ目の段階は、導き出した教訓や持論を、実際の新しい場面で試してみる「能動的実験」です。

頭の中で組み立てた仮説は、試してみなければ真の有効性が分かりません。実際の業務で実践し、その反応や結果を確認します。この実験自体が新たな「具体的経験」を生み出し、次のサイクルへと繋がっていきます。

  • 問いかけ例: 「今回つかんだ教訓を、来週の新規提案でどのように試してみるか?」

経験学習を人材育成に取り入れる5つのポイント

経験学習サイクルを効果的に回し、人材育成に活かすためには、以下の5つのポイントを押さえることが重要です。 

1.  ストレッチ経験を意図的に設計する

本人の現在の能力に対して少し背伸びが必要な業務機会(タフアサインメント)を用意します。簡単すぎる業務では深い内省が生まれないため、新しい役割や難易度の高い課題に挑戦させ、適度な壁にぶつかる機会を意図的に作ることが大切です。 

2. 経験の前に目的・目標を明確に共有する

業務に取りかかる前に「この経験から何を学んでほしいか」「どんな観点で振り返るか」をすり合わせておきます。あらかじめ目的・目標を言語化しておくことで、振り返りの際の焦点が定まり、深い気づきに繋がります。 

3. 定期的な振り返り・1on1を設ける 

経験学習は単発ではなく継続して回すサイクルです。定期的な面談や1on1の場を活用し、自分の言葉で内省・言語化する機会を継続的に設定します。「事実」と「気づき・教訓」を切り分けて整理させる指導も効果的です。 

4. 第三者からのフィードバックを取り入れる 

一人だけの内省では自身のバイアスや固定観念から抜け出せなくなります。上司や先輩、メンター、ピアサポーターなど第三者からの客観的な視点やフィードバックを取り入れることで、新たな気づきや学びが得られます。 

5. 失敗から学べる心理的安全性をつくる 

失敗を責められる環境では自己保身が働き、正しい振り返りができません。「挑戦に伴う失敗は成長のためのデータである」という認識を共有し、葛藤や失敗をオープンに自己開示できる心理的安全性を確保することが重要です。

経験学習モデルを、人材育成に取り入れるときのポイント

経験学習を社内の育成制度として定着させる際には、以下のポイントを意識してください。 

定期的かつ継続的に振り返りの機会をつくる

経験学習は単発のイベントではなく、継続して回し続けるサイクルです。

一回の研修で終わらせず、月1回の面談や隔週の進捗報告など、定期的・継続的に振り返りを行うタイミングを設定してください。回数を重ねることで、社員自身が意識せずとも日常的に「経験から学ぶ習慣」が身についていきます。

エンファクトリーが提供する越境学習プログラムにおいても、定期的な内省をサポートする「ピアサポーター制度」を導入し、参加者が自然とサイクルを回せる伴走体制を整えています。

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1on1や対話の場を活用して言語化を促す

頭の中だけで考えている気づきは曖昧になりがちです。1on1や対話の場を通じて、自分の言葉で話してもらう(言語化する)機会をつくりましょう。

「あの時、具体的にどう判断したのか?」「次回同じ場面になったらどう動くか?」といった問いかけを通じて対話を重ねることで、ぼんやりしていた経験が明確な「教訓」として整理されていきます。

「具体的事実」と「気づき・教訓」を分けて整理する

内省を行う際、「事実」と「個人の解釈(感情や思い込み)」が混ざってしまうことがよくあります。

例えば「商談がうまく進まなかった」というのは解釈です。「顧客から価格設定についての質問が3回出たが、明確に答えられなかった」というのが事実です。

まずは客観的な「具体的事実」のみを書き出し、その後に「なぜそうなったのか」「そこから何が言えるか」という解釈や教訓を切り分けて整理させる指導を行ってください。

第三者の視点を取り入れて視野を広げる

社内や自部署の中に閉じこもっていると、組織固有の「当たり前」に染まり、自らの行動パターンを疑うことが難しくなります。

内省の質を一段高くするためには、社外の異なる価値観やアウェイ環境に身を置く「越境学習」などの機会を取り入れることが非常に効果的です。異質な環境で葛藤を経験することで、従来のやり方を手放す「アンラーニング」が促され、より視野の広い教訓が得られます。

経験学習の実践事例

ここからは、エンファクトリーが支援する越境学習プログラムを通じて、経験学習サイクルを回し飛躍的な成長を遂げた企業の実践事例を3つ紹介します。 

未経験分野での実践がリスキリング意欲を高めた事例

株式会社オリエントコーポレーションの笠松様は、視野を広げ他社の風土を体感するため、エンファクトリーの「複業留学」に参加されました。

留学先では、未経験領域である「DX戦略の策定」「市場調査」といった実務に挑戦されました【具体的経験】。その中で「知っているつもりでも、実務では十分に活用できていない」という自身の知識不足や課題を深く認識します【内省的観察】。

この気づきから「今後の業務では、AI・DXの知識を実践で使えるレベルまで高める必要がある」という学びを整理し【抽象的概念化】、帰任後も継続的なリスキリングに主体的に取り組むという行動につながっています【能動的実験】。

詳細は下記のページからご覧いただけます。

社内にない機会を社外で得た事例

コニカミノルタ株式会社の京極様は、「自社内だけでは事業立ち上げのノウハウが得られない」という課題感から、スタートアップ企業への複業留学を決意されました。

留学先ではオンライン診療事業の競合分析からサービスリリースまでの一連のプロセスを当事者として経験【具体的経験】。「まずは迅速に行動し検証する」というベンチャーならではのスピード感を肌で学びました【内省的観察】。

この体験から「事業推進には、まず自ら動くことが不可欠である」という教訓を得て【抽象的概念化】、自社に戻った後も「まず行動し検証する」という姿勢を実践されています【能動的実験】。

本事例の詳細は、下記の記事で紹介しています。

自分の強みを再確認し自信を得たケース

株式会社DNPデジタルソリューションズの藤村様は、「アウェイな環境で自分の実力がどこまで通用するか確かめたい」という想いから越境学習に参加されました。

留学先での事業計画策定というタフなミッションに直面する中で【具体的経験】、これまでの自身のエンジニア経験や論理的思考力が他社でも十分に通用することを実感します【内省的観察】。

「環境が変わっても自分の強みを活かせば乗り越えられる」という確固たる持論を獲得したことで【抽象的概念化】、自身のキャリアに対する自信と高い主体性を手に入れ、次の業務へと活かしています【能動的実験】。

本事例の詳細は、下記のページからご覧いただけます。

エンファクトリーが手がける人材育成のご案内

経験学習を機能させるには、「質の高い具体的経験」と「深い内省」の掛け合わせが不可欠です。しかし、日常の固定化した業務の中だけでこの2つの条件を揃えるのは容易ではありません。

エンファクトリーの「複業留学」は、本業を維持しながらベンチャー企業の実情課題に挑む越境学習プログラムです。社外での実務という「ストレッチ経験」と、ピアサポートなどを通じた「内省の機会」を組み合わせることで、経験を学びに変え、職場での次の行動につなげることを支援します。 

自社の研修効果を高め、行動変容を起こす人材育成を実現したい方は、下記よりお気軽にご相談ください。

越境型研修サービス「複業留学」 | 越境学習で変化に強い組織へ 

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