【企業事例あり】他流試合とは?人材育成でのメリット・研修のポイント・注意点を徹底解説

越境学習サクセッション・リーダー育成

ビジネス環境が変化の激しい現代において、自社の常識だけにとらわれず、変化に柔軟に対応できる人材の育成が強く求められています。そうした中で、多くの企業から注目を集めているのが「他流試合」という人材育成アプローチです。

「自社の中だけでは視野が狭くなってしまう」「指示待ちの姿勢から抜け出し、主体的に動くリーダーを育てたい」といった課題に対し、他流試合型の研修は非常に効果的です。社員の視野を広げ、組織に新しい風やイノベーションをもたらすきっかけとなります。

本記事では、他流試合の意味や目的、導入メリット、研修を成功させるポイントや注意点について詳しく解説します。実際に効果を上げている企業の実践事例もご紹介しますので、ぜひ自社の人材育成施策の参考にしてください。

目次

他流試合とは?

業種や会社の垣根を超えて他社の人材と交流し、ともに刺激を受け合いながら学び合う人材育成の手法です。

近年では「他流試合型の研修」「他流試合型のワークショップ」といった形で、多くの企業が人材育成プログラムに取り入れています。普段は接点のない異業種のビジネスパーソンと対等に議論を交わすことで、自社や自分一人では得られない新しい視点・発想を獲得できる点が大きな特徴です。
さらに、自社の「当たり前」が社外ではそのまま通用しない場面に直面し、「自分の本当の強みとは何か?」と一度立ち止まって問い直すきっかけが生まれます。この試行錯誤や自己対話のプロセス(アンラーニング)を経てこそ、一歩深い成長へと繋がっていきます。

他流試合の具体的な実践方法としては、主に次のようなものが挙げられます。

  • 外部研修・異業種交流セミナー 
  • 越境学習(他社プロジェクトへの参画など) 
  • 社外勉強会やプロボノ活動

「他流試合」といってもその実施手法や期間はさまざまなため、自社が目指す育成ゴールに合わせて最適な手法を選択することが重要です。

なお、一般的には社外の人材と交流することを「他流試合」と呼びますが、大企業などでは組織の縦割りを打ち破る目的で、部門を超えた社内交流を「社内他流試合」と呼ぶこともあります。

他流試合の意味と由来

「他流試合」という言葉は、もともと武術の世界で使われてきた表現です。 

「他流」とは自分以外の流派を意味します。同じ流派の中だけで稽古を重ねていると、お互いの手の内や動きの癖が分かり、ある程度の予測が立つようになります。しかし、全く異なる流派との試合では思いもよらない技や動きに直面するため、これまでのやり方がそのまま通用しない場面が出てきます。その予想外の試練と向き合い、自らの実力を磨く稽古こそが、武術における「他流試合」です。

ビジネスの世界においても、「アウェイな環境で多様な価値観を持つ相手と向き合うことで、真の人間力やビジネススキルが磨かれる」という考え方が応用され、人材育成のキーワードとして広がっています。

ビジネスにおける「他流試合」の目的

ビジネスにおける他流試合の主な目的は、下記3点です。

  • 自社の「当たり前」を相対化する
  • 次世代リーダー・経営人材を育成する
  • イノベーション創出に必要な多様な視点を獲得する

それぞれの目的について詳しく確認していきましょう。

自社の「当たり前」を相対化する

他流試合の大きな目的の一つは、自社の中で作られた「当たり前」や固定観念を客観視(相対化)することです。

同じ会社や同じ部署で長く働いていると、自社のルールや業務プロセス、判断基準が唯一の正解のように思えてしまいがちです。しかし、他社の人材と深く関わることで、意思決定のスピードや課題解決のアプローチ、仕事の優先順位が企業ごとに大きく異なる事実に気づかされます。

自社の常識を解きほぐし、「本当にこのやり方が最善なのだろうか?」と問い直すプロセスは、既存の業務改善や組織改革を進める強力なエンジンとなります。

次世代リーダー・経営人材を育成する

他流試合は、将来の組織を引っ張る次世代リーダーや経営人材の育成にも効果を発揮します。

社内業務では、共通の言語や文脈を持つメンバーと仕事を進めることが多く、阿吽の呼吸で物事が進む場面も少なくありません。一方、他流試合ではバックグラウンドも価値観も全く異なる相手と議論し、目標に向けて合意形成を図る必要があります。

自分の指示や論理がそのままでは通じないアウェイな環境で、周囲を巻き込み成果を出す経験は、真のリーダーシップを鍛える絶好の機会です。こうしたタフな経験を経て、変化に強いリーダーシップが磨かれていきます。

イノベーション創出に必要な多様な視点を獲得する

他流試合は、既存の発想を破るイノベーションの芽を育てる手段としても有効です。

新しいアイデアや事業機会は、既存の知識の単なる延長ではなく、「異なる知見や視点の掛け合わせ」から生まれることが多くあります。他流試合を通じて異業種の人材と対話することで、自社にはない課題意識やテクノロジーの活用法、顧客へのアプローチ方法に触れることができます。

他社の先進的な取り組みや思考パターンを持ち帰り、自社の事業と掛け合わせることで、組織に新しいイノベーションを巻き起こす土壌が醸成されます。

他流試合のメリット、得られる効果

他流試合を導入することで、社員個人だけでなく組織全体にも良い変化が生まれます。ここでは代表的な4つのメリットを解説します。 

視野の拡大と価値観の転換が起きる

他流試合の最も大きな効果は、社員の視野が飛躍的に広がり、価値観の転換(マインドセットの変容)が起きることです。

日常の業務から離れ、異なる業界・カルチャーの環境に身を置くことで、物事に対する見方や捉え方が変化します。単に「知識が増える」だけでなく、仕事への臨み方やスピード感の差を肌で感じる経験が大きな刺激となります。

例えば、歴史ある大企業の社員がスタートアップとの交流やプロジェクトに参画すると、「意思決定の圧倒的な速さ」や「失敗を恐れず試行錯誤する姿勢」に直面し、これまでの自分の働き方を見直す大きなきっかけとなります。

自社や自分の強み・課題を客観視できる

他流試合の場では、自分の経験やスキルが「社外でどこまで通用するのか」を客観的に試すことができます。

「自社で培ってきた企画力や知識は他社でも高く評価された」と大きな自信につながることもあれば、「社内の看板を外すと、自分の強みが何か分からない」「専門知識がまだ足りない」と自身の課題に気づくこともあります。

同時に、外の目線を持つことで「自社が持っている技術力や顧客基盤のすごさ」といった自社の強みにも改めて気づくことができ、エンゲージメントの向上にもつながります。

社外の人脈・ネットワークを構築できる

他流試合を通じて、社外に質の高い人脈を形成できることもメリットです。

業種や職種を超えた社外ネットワークは、日常業務の枠を超えた最新情報や業界動向を交換する貴重な資産となります。また、将来的なオープンイノベーションや企業間の協業(コラボレーション)へと発展するケースも珍しくありません。

社外で刺激し合える仲間やロールモデルに出会うことで、自らのキャリアを主体的に捉え直す「キャリア自律」の促進にも貢献します。

当事者意識や主体性が向上する

他流試合は、社員の当事者意識や主体性を格段に高めます。

他流試合の現場では、会社の役職や「〇〇会社の社員」という看板は通用せず、一人のビジネスパーソンとしての実力が問われます。誰も手取り足取り教えてくれない環境下で、「自分が動かなければ何も始まらない」という状況に置かれるため、自ら課題を発見し行動する主体性が自然と身につきます。

アウェイでの修羅場体験を乗り越えた社員は、本業に戻ってからも指示待ちにならず、自発的に提案や挑戦を行う姿勢へと変化していきます。

他流試合型の研修を成功させるポイント

他流試合には多くのメリットがありますが、単に「外の研修に行かせる」「異業種交流会に参加させる」だけでは十分な効果は得られません。研修の効果を最大限に高めるために押さえておくべき4つのポイントを解説します。 

1.  目的を明確にしてから参加者を選定する

まずは「なぜ今、我が社で他流試合を行うのか」という目的を明確に定義することが最優先です。

「次世代リーダー候補の視座を高めたいのか」「若手社員の主体性とキャリア自律を促したいのか」「新規事業の種を探したいのか」によって、適したプログラムや派遣すべき人材のターゲットは大きく変わります。

目的があいまいなまま選定してしまうと、受講自体が目的化してしまい期待した成果が得られません。プログラムの詳細を決める前に、達成したいゴールを言語化しておきましょう。

2. 事前研修で参加者の目的意識を高める

派遣前に、参加社員の目的意識を十分に引き出す機会を作ることが大切です。

準備不足のまま参加すると、単なる「イベント参加」で終わってしまったり、環境の違いに圧倒されて受身のまま終了してしまったりするリスクがあります。

事前研修や面談を実施し、「この他流試合で何を学びたいのか」「持ち帰りたい成果は何か」を本人と上司で擦り合わせ、個人の育成目標を設定した上で送り出すことが成功のカギとなります。

3. 内省(リフレクション)と振り返りの場を意図的に設計する

他流試合で得た刺激や気づきを確かな「学び」として定着させるには、内省(リフレクション)の時間を設計することが不可欠です。

非日常の体験から得た経験を言葉にし、客観的に整理することで初めて、今後の行動変容につながる深い学びへと昇華します。

具体的には以下のような振り返りの場を設けるのが効果的です。

  • 上司やメンターとの定期的な1on1ミーティング 
  • 外部コーチや専門家によるリフレクションセッション 
  • 参加者同士で気づきや葛藤を打ち明け合うピアラーニングの実施

経験しっぱなしにせず、丁寧に振り返る伴走体制を用意しましょう。

4. 学びを組織に還元する仕組みをつくる

個人の成長にとどめず、得られた知見や刺激を組織全体へ波及させる仕組みを作りましょう。

参加者ひとりの成長で終わらせてしまっては、組織全体の変化にはつながりません。他流試合で得た失敗談や学び、最新の視点を社内に共有してもらうことで、周囲の社員にも良い刺激を与え、イノベーションが生まれやすい組織風土を作ることができます。

還元方法の例:

  • 全社や部門向けの実践報告会・社内セミナーの開催 
  • 社内報や社内イントラでのインタビュー記事掲載 
  • 帰任後の新規プロジェクトや業務改善タスクへのアサイン

他流試合型の研修を導入する際の注意点と対策

他流試合型の研修を導入する際には、事前に知っておくべき注意点やリスクもあります。対策と合わせて確認しておきましょう。 

短期間の実施では効果が限定的になりやすい

単発(数時間〜1日程度)の異業種交流会や講座形式のセミナーでは、一時的な刺激にはなっても、根本的な意識変容やスキル定着にまでは至りにくい傾向があります。

なぜなら、自身の行動パターンや考え方を根本から見直すには、アウェイな環境で試行錯誤を繰り返し、成功や失敗を体験する「時間と実践のプロセス」が不可欠だからです。

マインドセットの変容や当事者意識の向上を目指す場合は、ある程度まとまった期間(数か月程度)にわたり、実際にプロジェクトを動かすような実践型のプログラムを検討することが望ましいでしょう。

参加者の心理的負担やモチベーションへの配慮が必要

他流試合は、見知らぬ他者と協働するアウェイな環境であるため、参加者にとっては想像以上のプレッシャーやストレスがかかります。

「自社の代表として失敗できない」「周囲のレベルが高く感じる」といった不安からモチベーションが低下してしまうケースもあります。

事前に対話の機会を作り、失敗を恐れずチャレンジすることを後押しする文化を伝えるとともに、期間中も心理的安全性を確保する相談窓口やフォロー体制を整えておくことが大切です。

学びが個人にとどまる(帰任後のギャップ)リスクがある

他流試合では、せっかく得た学びや気づきが個人の中だけにとどまってしまい、組織全体へ波及しないリスクがあります。

参加した社員がどれだけ大きく成長しても、その体験や知見が社内で共有されなければ、施策としての効果は限定的なものになってしまいます。また、視野を広げて帰ってきた社員に対し、周囲の理解が得られず「社外で得た新しい知見が受け入れられない」「自社のやり方に引き戻される」といった、いわゆる「帰任後のギャップ」に直面してモチベーションを落としてしまうケースも珍しくありません。

これらを防ぎ、個人の学びを組織の成果につなげるためには、以下の2つの取り組みが必要です。

  • 学びを社内に還元・共有する仕組みづくり 
  • 帰任した社員を理解し、受け入れる組織側の体制整備

参加者個人に任せるのではなく、周囲の上司や同僚が「他流試合でどんな気づきがあったのか」興味を持って問いかけることや、持ち帰ったアイデアを実際の業務へ積極的に取り入れてみる姿勢が不可欠です。参加者本人だけでなく、社員を迎える職場の雰囲気が、他流試合型の研修の効果を大きく左右します。

企業における他流試合の実践事例3選

ここからは、他流試合型の研修(越境学習プログラム)を導入し、人材育成や組織活性化に成功した企業の実践事例を3つご紹介します。

(※いずれも株式会社エンファクトリーが提供する異業種混合型の越境学習プログラム「越境サーキット」の導入事例です)

越境サーキット|異業種混合チームでスタートアップの課題解決にチャレンジ 

事例1:中部電力株式会社|異業種交流が生んだ視野拡大とチャレンジ精神

中部電力株式会社では、「自己変革に挑戦する社員への機会と支援」を人財戦略に掲げ、多様な育成施策を推進しています。その一環として、スタートアップ企業のリアルな課題解決に異業種チームで挑む「越境サーキット」を導入しました。

導入後の成果について、人事部のご担当者は次のように語っています。

参加者が自分の強みや弱みを客観的に理解できるようになったことが、大きな成果だと感じています。アセスメントによる自己理解に加え、異業種のチームメンバーからのフィードバックを得られたことで、社外での自分の立ち位置や能力を把握する貴重な機会になりました。 

受講後アンケートでも参加者の挑戦意欲が明確に向上しており、他流試合を通じて広い視野とチャレンジ精神を醸成できた好例です。 

本事例の詳細は、次のページからご覧いただけます。

事例2:株式会社アイシン|越境学習が生んだ自発的な行動変化

自動車業界の大きな変革期の中で、株式会社アイシンでは、自ら課題を発見して行動できる「プロ人材」の育成を目指しています。その実現に向け、「外を知り視点を変える」機会として他流試合型の越境学習を導入しました。

導入後の変化について、人材開発グループのご担当者からは次のような声が挙がっています。

参加前後の自己評価を比較したところ、特に『他者の意見を積極的につ聴くこと』や『試行錯誤しながら自分の意見を発言すること』において、明確な行動変化が見られました。

参加者の上司からも「自分から主体的に動くようになった」「専門外の相手にもわかりやすく伝えようと工夫するようになった」といった評価が集まっています。現在では現場社員からリーダー層、管理職へと対象を広げ、組織全体への波及に成功しています。 

詳細は、次のページからご覧いただけます。

事例3:サッポロビール株式会社|社員のエンゲージメントを高める越境サーキットの効果

サッポロビール株式会社では、居心地の良い環境から一歩踏み出し、ミドル・シニア層を含む社員のさらなる活躍とキャリア自律を支援する目的で越境学習を導入しました。

参加者からは「新しい知識や刺激を大量に吸収し、実際に現場で使うことで新しい武器を手に入れることができた」といった手応えが寄せられています。他流試合での経験をきっかけに副業や新しい社内プロジェクトに挑戦する社員も現れるなど、社員のエンゲージメント向上とキャリア自律の推進に大きな成果を上げています。

本事例の詳細は、次のページからご確認ください。

本格的な他流試合・越境学習ならエンファクトリーにお任せください

他流試合は、自社の常識を超えて他社人材と学び合うことで、社員の視野を広げ、変化に強い組織を作る有効な人材育成手法です。

施策を成功に導くためには、目的設定から事前のマインドセット、期間中の伴走支援、そして帰任後の内省と組織還元のデザインまで、全体を通じた設計がポイントとなります。

株式会社エンファクトリーでは、累計250社・7,000名以上の支援実績をもとに、異業種混合チームでスタートアップの課題解決に挑む「越境サーキット」をはじめ、貴社の課題に合わせた他流試合・越境学習プログラムを提供しています。効果測定(アセスメント)や伴走フォローも標準で備えているため、初めて他流試合を導入する企業様でも安心してご活用いただけます。

「社員の主体性を引き出したい」「次世代リーダーにアウェイの経験を積ませたい」とお考えの人事・人材開発担当者様は、ぜひお気軽にお問い合わせ・ご相談ください。

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