先日、子どもたちと一緒に映画『えんとつ町のプペル』を観たのですが、劇中で描かれる「信じ抜く力」に胸を打たれ、子ども以上に私が号泣してしまいました(笑)。
実は、あの映画に登場する「誰も見たことがない煙の上の星を信じて突き進む熱量」は、VUCAの時代において新規事業や組織変革という「正解のない闇」に挑むビジネスリーダーの姿と、まったく同じなんですよね。
こんにちは!エンファクトリーの島崎(越境しまじろー)です。
私は普段、営業の責任者として「売上の最大化・目標必達」をミッションに掲げ、マーケ・IS(インサイドセールス)・セールスの連動といった「仕組みづくり」による組織ケイパビリティ(事業遂行能力)の最大化に挑んでいます。
一方でプライベートに目を向ければ、3人(長男・長女・次女)の子どもたちにデレデレの「子煩悩パパ」でもあります。
息子のドラム体験や空手の応援、長女のピアノ発表会(奇しくも、演奏曲は『えんとつ町のプペル』でした!)、天球館での星空観測と、とにかく全力で遊び、ルックバック展やヨシタケシンスケ展に足を運んではクリエイターの圧倒的な熱量に刺激を受ける……そんなフットワークの軽さとエンタメ大好きな好奇心を原動力に生きています。
そんな私ですが、最近、多くの経営者や人事、そして現場マネージャーの皆様とお話しする中で、共通する深いお悩みをよく耳にします。
「やれAIだ」「やれ1on1だ」「次は心理的安全性だ」……。次々と降ってくる新しいスキルや手法の習得、いわば「アプリの追加(水平的成長)」に追われ、息苦しさを感じているリーダーが非常に多いのです。
もちろん、これらはすべて大切な学びです。しかし、どれだけ優秀なアプリをインストールしても、それを動かすリーダー自身の「OS(物の見方や人間性の器)」が古いままでは、多様な部下を活かし、正解のない不確実な時代を勝ち抜くことはできません。
今回は、一人のビジネスパーソンとして、そして一人の親として、リーダーに今こそ必要な「OSアップデート(垂直的成長)」と、それを引き起こす「社外越境」のプロセスについてお話しします。
目次
「アプリの追加(水平的成長)」と「OSのアップデート(垂直的成長)」の違い
成人発達理論において、大人の成長は「横軸(水平的成長)」と「縦軸(垂直的成長)」の2つのアプローチで捉えられます。
- 水平的成長(アプリの追加): 新しい知識、資格、専門スキルなどを増やしていくこと。
- 垂直的成長(OSのアップデート): 物事の捉え方や認識の枠組み(パラダイム)、人間としての器そのものを広げること。
これ、子育てに例えるとすごく分かりやすいんです。子どもに「片付けなさい!」とやり方(アプリ)だけをガミガミ指示しても、本人が「なぜ片付けるのか」を理解して自発的に動くマインド(OS)が育っていなければ、結局また散らかりますよね(笑)。
ビジネスも同じで、表面的な「1on1のテクニック」というアプリを入れるだけでは、本質的なリーダーシップは発揮されません。
| 成長のタイプ | たとえ | 得られるもの | 求められるリーダー像 |
| 水平的成長 | アプリの追加 | 専門スキル、知識、1on1などの手法 | 従来の「一人の優秀なリーダーが正しい答えを示す」トップダウン型 |
| 垂直的成長 | OSのアップデート | 物の見方、人間性の器、異なる価値観の受容力 | 異質な価値観を掛け合わせ、チームで解を生み出す「インクルーシブリーダー」 |
これまでのビジネス環境では、リーダー自身がスキルを磨いて自ら正解を導き、チームを力強く引っ張る「トップダウン型」が主流でした。しかし、顧客ニーズが細分化し、誰も正解を知らない現代において、そのスタイルは限界を迎えています。
今、私たちに求められているのは、メンバー一人ひとりの「多様性」を尊重し、その強みを引き出して組織の力に変えられる「インクルーシブリーダー」へのOSアップデートなのです。
多様性を活かす「インクルーシブリーダー」に欠かせない3つの要素
単に「多様なメンバーをチームに集める」だけでは、多様性は活きません。大事なのは、「その違いを活かしきる土壌(心理的安全性など)を作れるか」にあります。真のインクルーシブリーダーは、次の3つの要素を備えています。
① 自己認識の深さ
自分自身の中にある偏見や思い込み(アンコンシャス・バイアス)、自分にとっての「当たり前」を客観的に自覚していること。
② 異質なものへの受容力
自分と異なる意見や価値観を排除するのではなく、むしろ「面白がり」、その違いを認められる姿勢。
③ 心理的安全性をつくる力
メンバーが萎縮することなく、安心して新しいアイデアを出したり、あえて異なる意見(異論)を唱えたりできる環境を整えられる力。
これらは座学やスキルの習得だけで身につくものではありません。ものの見方や人間の器そのものを広げる「垂直的成長」を遂げて初めて、体現できるようになります。
私自身、かつては「自分がすべて試行錯誤して成果を見せ、チームを引っ張る」というトップダウン型の気質が強かったのですが、最近ではアイデアを形にする中で「周囲の強みを適切に頼り、巻き込む」というインクルーシブな姿勢の大切さを、身をもって実感しています。
ホーム(自社)では成長できない? 「社外越境」で味わう「1度目の死」
では、どうすればリーダーのOSをアップデートできるのでしょうか? 成人発達理論の段階を上げるためには、「今の自分のスタイル(認識の枠組み)では通用しない環境」に身を置くことが必要だと言われています。
普段の「ホーム(自社)」にいると、長年培った業務プロセス、阿吽の呼吸で通じる人間関係、そして「〇〇部長」「営業のエース」といった看板や肩書きに無意識のうちに守られてしまいます。そのため、自分を大きく揺さぶるようなストレッチ体験を得ることは容易ではありません。
そこで有効なのが、自社を飛び出し、全く異なる環境(アウェイ)に身を置く「社外越境」です。
【社外越境による自己解体と再構築のプロセス】
私自身、アート展(ルックバック展など)でクリエイターの狂気的なメモの細かさや熱量に圧倒されたり、社外の異業種コミュニティ(宮崎でのフリーランスイベントや薩摩会議などの大型カンファレンス)に飛び込んだりするたびに、「自分なんてまだまだだ」と良い意味での衝撃を受けます。これと同じような「メッキが剥がれ落ちる体験」が、アウェイの環境で起こります。
- 普段の「ホーム(自社)」
- 自社の看板や肩書き、慣れ親しんだルールに無意識に守られている状態
- 異なる環境「アウェイ(スタートアップ等)」へ飛び込む
- ルールもスピード感も全く異なる、未知の環境への挑戦
- 「これまでのやり方や肩書き」が通用せず、メッキが剥がれる(★1度目の死)
- 自社の看板を外され、これまでのマネジメントスタイルが通用しない洗礼を受ける
- 健全な危機意識や自己否定を経て、自分を「解体」する
- 「今のままではダメだ」と自分自身の思い込み(バイアス)や限界を認めるプロセス
- 等身大の「アイ(I)メッセージ(自分の言葉)」で発信し、周囲を巻き込み「再構築」する
- 「私はこうしたい」「助けてほしい」と等身大の自分(アイメッセージ)で発信し、周囲と繋がり直す
- 垂直的成長(OSアップデート)の実現
- 多様性を受容し、自律的に変革をリードする「インクルーシブリーダー」へと進化する
アウェイであるスタートアップ等に入ると、意思決定のスピード感や承認プロセスが自社とはまったく異なります。そこでこれまでのマネジメントスタイルが通用せず、プライドやメッキが剥がれ落ちる経験をします。これが越境学習における「1度目の死」です。
しかし、ここで終わりではありません。 「自分を語る社長」や、自分よりはるかに若いメンバーが堂々と意見を発信している姿を目の当たりにすることで、健全な危機意識(自己否定)が芽生えます。
その後、自社の看板を外した「等身大の自分」として、「私はこうしたい」「力を貸してほしい(アスキング)」という自分自身のメッセージ(アイメッセージ)を必死に発信し始めます。この「崩壊と再構築」を乗り越えて蘇ったとき、リーダーのOSは劇的にアップデートされていくのです。
帰任後に待ち受ける「2度目の死」を乗り越える「接続の場づくり」
社外越境を経て、視野を広げ、新しい価値観や高いモチベーションを胸に「息巻いて」帰ってきたリーダーたち。しかし、そこで待っているのが「2度目の死」と呼ばれる高い壁です。
「こんなことを実現したい!」「会議のあり方を変えよう!」と提案しても、自社の同僚や古い組織風土から「戻ってきたら急に意識高いことを言い出した」「うちのやり方には合わない」と一蹴され、孤立してしまう状態です。
営業の世界で、マーケティングからインサイドセールス、フィールドセールス、そしてカスタマーサクセスへと「パイプラインを構築して連動させる」仕組みが必要なように、越境学習も「ただ行って終わり」にせず、組織の成長へと「接続」する緻密な仕組みづくりが極めて重要です。この「2度目の死」を防ぐために、受け入れ側は以下の仕組みを整えるべきです。
① 人事による伴走フォロー
帰任1ヶ月後に面談を設定して現状の壁をヒアリングしたり、同時期に越境にチャレンジした仲間を集めて実践状況を共有・ケアし合える場を人事側で用意します。
② 現場の上司による「引き算(関心を持ちつつ介入はしない)」の関わり
上司が関与しすぎると、せっかくの越境者の変化を潰してしまいます。 「そういえば、越境先でどんな壁にぶつかったの?」「向こうの経験を経て、うちの職場はどう見える?」といった、日常の何気ない問いかけを通じて関心を示し、見守ることが大切です。
③ プロセスを可視化し、フォロワーを増やす
エンファクトリーでは、社内SNS(Teamlancer)などのツールを活用し、越境期間中にもがいている様子や気づきをリアルタイムに社内へ投稿することを推奨しています。
リーダーがアウェイで「悪戦苦闘し、弱みを開示しながら泥臭く頑張っている姿」を見せることで、自社のメンバーは「うちのリーダー、応援したいな」というフォロワーシップを持つようになります。これが、帰任後のスムーズな受け入れの土壌となります。
「行ってこい」から「共に変わろう」へ。組織を動かす「We」のメッセージ
「社外に出て変わってこい」と、ただ個人を送り出すだけの人事施策では組織は変わりません。
最も大切なのは、「私たちが変わる(変革に挑む)ために、まずあなたが外に挑戦しに行ってほしい。そして、あなたが持ち帰る変化を見届け、受け止めるために、私たち組織も変わる覚悟で待っている」 という、「We(私たち)のメッセージ」を組織として語れるかどうかにあります。
そして、社外越境を経験した変革のリーダー同士を社内で繋ぎ、点から面へと広げていく。会社の中に、自律的に動く「変革者の星座(コミュニティ)」を人事が仕掛けていくのです。
この星座が社内に構築されると、DXや新規事業など、会社が新しい施策を走らせる際に率先して動いてくれる、非常に心強い「変革のコア(仲間)」となってくれます。
「忙しいから」と新しいスキル(アプリ)を慌てて詰め込む前に、一歩外へ踏み出し、新しい景色を見に行く冒険(社外越境)へ出かけてみませんか?
私も一人の親として、そして「営業を起点にしたサービスプロデューサー」や「事業ケイパビリティ・マネジメント」を追求するビジネスパーソンとして、皆さんと一緒に組織の未来(ケイパビリティ)を考えていきたいと思っています。
映画「えんとつ町のプペル」のラストシーンは、煙だらけで夜空が見えない町に満天の星が輝き、街の人たちを魅了します。越境のチャレンジを通してリーダーが持つ星を磨き、社内で結びつけることで、変革の意義を灯した星座が浮かび上がるのではと思っています。
あなたと、あなたの組織の「OSアップデート」の旅を、私たちは全力で支援します。Have a Great Journey!
◆ 執筆者プロフィール
島崎 由真(株式会社エンファクトリー ライフデザインユニット 副ユニット長)

企業の自律型人材育成のための越境型研修サービスの「複業留学」「越境サーキット」「リーダー留学」など、社外への越境を通して、人・組織が変わるきっかけを創出する「場のデザイン」を提案・支援する越境コンサルタントとして活動。また、人事・HR事業者による1500名のコミュニティ「One HR」の共同代表も務める。
経営課題を解決する「自律型人材」の育成に向けて
エンファクトリーでは、変化の激しい時代において社員一人ひとりが自律的に動き、社内外で新たな価値や共創を生み出す各種「越境研修プログラム」を提供しています。
「自律型人材を育てたい」「事業戦略と連動した人材育成を実現したい」とお悩みの経営者・人事担当者の皆様、ぜひお気軽にご相談ください。貴社の課題に応じた最適なプログラムをご提案します。
