参加者の心を動かす「賞賛」の力~企業とともに考える最終プレゼンが、次の挑戦を生み出す~

越境学習キャリア自律越境デザイナーブログ

みなさん、こんにちは。 エンファクトリーで、越境学習プログラム「越境サーキット」の企画・営業・運営を担当している長南です。

実は最近、数字のプレッシャーで口角炎がずっと治りません。ビタミン剤を飲んでも、リップクリームを塗っても効果なし。もちろん、参加者の皆さんから「やってよかったです」と言ってもらえる瞬間は、何にも代えがたいご褒美です。ただ、口角炎そのものが一番早く治るのは、実はその手前、越境サーキット参加の申込が入った瞬間です。ほっと胸を撫で下ろしたり、ふっと症状が和らいだりします。すみません、運営者でもあり、セールス担当でもあるので。

苦労の種類は違うけれど、どちらも「頑張りが報われた・認めてもらえた」という実感には変わりありません。今日は、そんな「賞賛」の力についてお話しします。

越境サーキットにて各参加者チームから課題提示企業に提案を行う、「最終プレゼン」の日は、毎回、課題提示企業側の反応を観察してしまいます。 参加チームの発表を聞いていただきながら、画面越しでも分かるくらい表情が動く瞬間があるんです。正直、私が一番ドキドキしているかもしれません。 

「最終プレゼンは5分です」 と参加者に伝えると、「たった5分ですか」と驚かれることがあります。

ですが、その5分のために、参加者は約3か月間、チームで議論を重ねています。 会社も、職種も、年代も異なるメンバーと意見を交わし、課題提示企業への質問や情報収集を通じて仮説を立て、提案を何度も見直していく。 最終プレゼンは、その集大成の場なんです。

完成度だけでなく、挑戦の過程を認める

ある最終プレゼンで、課題提示企業から率直な指摘がありました。

「この部分は、現実的には実行が難しいかもしれません」

決して、すべてを肯定するだけのフィードバックではありません。 でも、その後に続いた言葉が、参加者の表情を大きく変えました。

「でも、この視点は私たちにはありませんでした」
「ここまで本気で考えてくださったことが、本当にうれしいです」

課題提示企業が認めていたのは、提案の完成度だけではありません。 そこに至るまでの思考や試行錯誤、正解のない課題に向き合い続けた姿勢そのものでした。

プレゼン後、参加者からはこんな声が聞かれました。 

「自分たちの提案が、企業の役に立てるかもしれないと思えた」
「正解ではなかったかもしれないけれど、考えてきたことに意味があったと感じた」
「また新しいことに挑戦してみたい」

人は、「正解だった」と評価されたときだけに変わるわけではありません。 自分の挑戦を受け止めてもらえたと感じたときにこそ、次の一歩を踏み出す力が生まれるのだと思います。

「賞賛」は、単に褒めることではない

ここでいう賞賛とは、結果を無条件に褒めることではありません。 「あなたたちの挑戦には価値があった」「私たちも、皆さんから学んだ」。そうしたメッセージを、具体的な言葉で伝えることです。

心理学者のエドワード・デシとリチャード・ライアンが提唱した「自己決定理論」では、人が自ら考え行動し続けるために、「自律性」「有能感」「関係性」という三つの感覚が重要だとされています。

越境サーキットでは、参加者自身が所属する会社を離れ「自律性」を持って問いを立て、チームで議論し、提案をつくります。企業から「その視点は参考になった」と伝えられることで「有能感」が生まれ、評価する側・される側ではなく、ともに課題を考えた仲間として言葉を交わすことで「関係性」も生まれる。 その経験が、「次も、自分で考えて行動してみよう」という意欲につながっていくのです。

AI時代に求められる「課題発見力」

越境サーキットの課題提示企業には、スタートアップや成長企業が多く参画しています。彼ら自身も、正解のないテーマに向き合いながら事業をつくっている最中です。

最終プレゼンでは、こんな問いが投げかけられます。

「なぜ、この顧客を対象にしたのですか」
「その人がどのような状態になれば、このサービスがあってよかったと思えるのでしょうか」

これは、提案を否定するための質問ではありません。「誰の、どのような課題を解決しようとしているのか」という、課題の捉え方そのものを、もう一段深めるための問いです。

ある課題提示企業からは、こんな言葉もありました。 

「これからの時代に大切なのは、課題解決能力だけでなく課題発見能力である。AIが解決策を導き出せるようになっても、『本当に向き合うべき課題は何か』を見つけることは、人にしかできない価値だ」と。

賞賛と率直な指摘は、相反するものではありません。 挑戦の価値を認めたうえで、さらに考えるべき視点を示す。その両方があるからこそ、参加者は指摘を否定ではなく、成長につながる言葉として受け取れるのです。

学んでいるのは、参加者だけではない

越境学習によって変化するのは、参加者だけではありません。 課題提示企業からも、 「社外の人だからこその視点に気づかされた」 「自社では当たり前になっていた考え方を見直すきっかけになった」 「参加者からの問いによって、自分たちの課題が整理された」 という声をいただきます。

越境学習は、一方が教え、一方が学ぶ関係ではありません。 参加者は、企業の現実の課題から学ぶ。課題提示企業は、参加者の多様な経験や視点、問いから学ぶ。 互いに学び合う関係が生まれるからこそ、それまでになかった気づきや、新しい価値が生まれていくのです。

最終プレゼンは、終わりではなく始まり

人的資本経営の視点で考えると、研修の成果は「プレゼンの出来が良かったか」だけでは測れません。 本当に重要なのは、その経験が職場へ戻った後の行動につながることです。

「もっと社外の情報を集めてみよう」 「自分の意見を、まずは口に出してみよう」

こうした小さな行動の変化が積み重なり、やがて組織の変化へとつながっていきます。

課題提示企業から届けられる言葉は、参加者への評価にとどまりません。 「これからも挑戦していい」 「次は、この問いをさらに深めてほしい」 そう背中を押す、次の行動へのメッセージでもあります。

最終プレゼンは、約3か月間の活動の終着点です。 しかし参加者にとっては、自分の可能性に気づき、新しい問いを持って職場へ戻る、新たなスタート地点でもあるのです。

これからも、「末っ子・長南」は、参加者と企業、双方の挑戦を見守っていければと思っています。

◆執筆者プロフィール

長南 あゆみ(株式会社エンファクトリー/越境デザイナー・越境サーキット運営責任者)

株式会社エンファクトリーで「越境サーキット」の企画・営業・運営を担う越境デザイナー。パティシエ、営業、人材マッチングを経て越境研修事業へ。異業種・異職種の実践型学習を設計し、参加者の行動変容と組織への還元を支援している。

「越境学習」を、一過性の体験で終わらせないために

【越境サーキットとは?】

異業種の参加者がチームを組み、スタートアップや地域企業の実際の経営課題に約3か月間取り組む、実践型の越境学習プログラムです。「越境サーキット」の詳細はこちら

名刺交換で終わる「点」の交流ではなく、共通のゴールに向かって協働する「線」の交流を通じて、参加者の行動変容と組織への還元を支援します。

初めての異業種交流に「越境サーキット」をおすすめする3つの理由

  1. 「名刺交換」で終わらない、深い関係性が自然に築ける
  2. 自分の「当たり前」が、社外では「強み」だと気づける
  3. 利害関係のない「社外の同期」ができる
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