研修生との対話の作法〜脳に汗をかく「あがき」を引き出す、見守り力・後押し力・抱擁力〜

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人事のみなさま、こんにちは!

越境研修プログラムの設計・高度化に日々向き合っている「越境デザイナー」の藤生朋子(通称「もこ」)です。

「越境研修に送り出したものの、研修生が慣れ親しんだ枠組みから一歩踏み出しきれていない気がする…」
「せっかくのアウェイ環境なのに、現業と同じ慣れた姿勢のまま終わってしまってはもったいない…」

そんなもどかしさを感じたことはありませんか?

※藤生朋子による過去2回の連載コラムはこちらから

第3弾となる今回は、ノウハウや仕組みの裏側にある「研修生との生々しい対話の作法」がテーマです。 研修生が脳に汗をかき、泥臭く「あがく」ことでしか得られない成長の原体験。それを引き出すために、越境デザイナーが現場で実践している「見守り力」「後押し力」「抱擁力」のリアルなエピソードをお届けします!

【見守り力】越境前の個別面談:安全圏を飛び越える「本当の目的」を引き出す対話術

越境学習が成功するかどうかは、実は「研修前」の対話で8割が決まると言っても過言ではありません。

大手企業から参加される優秀な社員の方ほど、最初はどこか「研修としての正解」を探そうとしがちです。「会社の期待に応えるため」「スキルの幅を広げるため」といった綺麗な言葉が並びます。しかし、それだけではアウェイの荒波を乗り越えるエネルギーにはなりません。

綺麗な「建前」の奥にある、本人の「不格好な本音」に光を当てる

個別面談で私が意識しているのは、「研修の目標」ではなく「あなた自身のモヤモヤや衝動」を引き出すことです。
面談では、例えば次のような問いを重ねていきます。

  • 「本当は、普段の日常業務で自分のやり方が通用しなくなっている焦りはありませんか?」
  • 「『今の立ち位置のままでいいのか』という違和感はありませんか?」

問いかけを重ねる中で、ふと「実は、自分でゼロから意思決定した経験がなくて…」「指示通り動く自分から脱却したいんです」といった不格好な本音がこぼれ落ちます。

この「自分自身のリアルな課題感(=越境する本当の目的)」に腹落ちしてはじめて、参加者は自ら安全圏の扉を開き、アウェイの地へと足を踏み出すことができるのです。

【背中押し力】越境中の中間面談:あえて揺さぶり、「脳に汗をかく経験」を促す

いざ研修が始まると、受講者はカルチャーもリソースも異なる受入企業で、容赦のない「アウェイの洗礼」を受けます。

特に大企業ではなかなか味わえない「正解がない状態での修羅場経験」や「自分の肩書が一切通用しない環境での実践」。これこそが、脳に汗をかく最大の成長機会です。

「評論家」や「観光客」で終わらせない。中間面談での「発破」

しかし、真面目で器用な受講者ほど、アウェイの違和感に直面した際、無意識に「防衛的なルーティン(自分を無意識に守る回避行動)」へ逃げ込んでしまうことがあります。

自社の基準で相手を批判・アドバイスして優位に立とうとする「評論家」の罠。 あるいは、「いい経験になった」と客観的な観察者・見学者の立場に留まる「観光客」の罠です。

そんな時、中間面談で次のような問いを行います。

「いまの動き、自社の物差しでアドバイスする『評論家』や、一歩引いて観察する『観光客』になっていませんか?」

「受入企業の社長が求めているのは、綺麗なお手伝いではありません。未完成な学習者として自ら現場に飛び込み、自らリスクを取って当事者として動く『境界人』としての覚悟です」

ハッと息を呑む受講者。「あ、自分は無意識にリスクを取らない安全な立ち位置(観光客)に逃げていたかもしれない」と気づき、そこから本当の「あがき」が始まります。

自社のローカルルール(既存のOS)を手放し、未完成な自分を受け入れて主体的に汗をかく。この厳しい「あがき」のプロセスを通るからこそ、自社では得られない「実践的な原体験」が骨身に染み込むのです。

【抱擁力】研修後の振り返り面談:変化を受け止め、次の一歩を承認する

泥臭いアウェイでの挑戦を終えた研修生を待っているのは、越境後のリフレクション(振り返り)と、自社(ホーム)への帰還です。

ここで大切なのは、成果だけを褒めちぎることではありません。アウェイで限界まであがき切った研修生のプロセス全体をしっかり受け止める「抱擁力」と「見守り力」です。

成果の裏にある「葛藤」と「変容」を言語化する

終了後の対話では、あえて「変わったこと」と「変わらなかったこと(変われなかったこと)」の両方をフラットに問いかけます。

  • 変わったこと: 「意思決定のスピードが変わった」「周囲を巻き込む泥臭さが身についた」
  • 変わらなかったこと: 「自社に戻ると、やっぱり慎重になりすぎてしまう自分もいる」

完璧な変化など存在しません。「変われなかった部分」や「自社に戻った時のギャップ」も含めて一緒に言語化し、「それも今のあなたの現在地だね」と丸ごと受け止める(抱擁する)。

その安心感があるからこそ、研修生は自分の変化を素直に受け入れ、「自社に戻ってからどう行動変容を起こすか」という次のステップへ前向きに踏み出せるのです。

おわりに:葛藤を「一生モノの原体験」に変えるために

研修生を「越境」というアウェイの地に送り出すのは、人事のみなさまにとっても勇気がいることです。

しかし、ただ研修プログラムを提供するだけでなく、

  • 引き出す(渡航前)
  • けしかける・背中を押す(越境中)
  • 見守り、包み込む(越境後)

という対話のプロセスを設計し、伴走することで、研修生の葛藤は必ず「実践的な原体験」へと変わります。そしてその原体験こそが、自社の現場を動かす次世代の経営・リーダー層への変貌を促し、そのプールを厚くする確かな力となります。

「自社の受講者がなかなか殻を破れない」「越境中の伴走や対話のやり方に悩んでいる」という人事の方は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。一緒に真摯に、人の覚醒に向き合っていきましょう!

◆執筆者プロフィール
藤生 朋子(株式会社エンファクトリー ライフデザインユニット 越境デザイナー リーダー)

Webデザイナーとして15年のキャリアを積んだ後、2021年より越境研修サービス「複業留学」の立ち上げに参画。過去5年間で300名以上の研修生支援を担当。複業活動として、東京都中野区の子育てボランティア団体運営、デザイナーとして地元群馬県桐生市支援を行う。

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