モヤモヤは、成長の入り口になる~チームの熱量の差と向き合う経験が、行動変容を生む~

越境学習キャリア自律越境デザイナーブログ

みなさん、こんにちは。エンファクトリーで、越境学習プログラム「越境サーキット」の企画・営業・運営を担当している長南です。

先月から、越境サーキットは複数のプログラムが同時に進行する怒涛の日々です。そんな中、先日まさかの出来事がありました。来日中の推しのイベント会場に、偶然出くわしたのです。

推しが姿を見せた瞬間、周りからは桁違いの悲鳴が上がりました。ところが私はというと、その渦の中で意外なほど冷静でした。呆気に取られて叫ぶタイミングを完全に逃した、とも言います。それでもエネルギーはしっかりチャージできたので、怒涛の秋もなんとか走り切れそうです。

周りの熱量があまりに高いと、人はかえって一歩引いて、全体を眺める側に回るものなのかもしれません。

実はこれ、越境サーキットのチーム活動でも起こることです。誰かが熱量高く引っ張るほど、ほかのメンバーは一歩引いてしまう。そんな熱量の差が、活動後のモヤモヤにつながることがあります。

活動終了後のアンケートを読んでいると、たまにドキッとする一文に出会います。「楽しかったです」の後に、そっと添えられた「ただ、少しモヤモヤも残りました」という一言です。

「思うように議論が進まなかった」「メンバーによって、関わり方に差があった」。越境を終えた参加者が持ち帰るのは、達成感や楽しい思い出だけではありません。

■頑張った人ほど、割り切れない思いを抱える

責任感の強い人ほど、自分が中心となってタスクを整理し、議論を進め、提案をまとめます。その結果、最終プレゼンは無事に終えられても、「会社でいつもと同じ役割を担ってしまった」「自分ばかりが頑張っていた気がする」という悔しさが残ることがあります。

限られた期間でチームを前へ進めようとした行動には、大きな価値があります。メンバーの状況によっては、一人の働きかけだけでは変えられないこともあるでしょう。そのうえで、振り返りのときには、もう一つの問いを持ってほしいと思います。

「ほかのメンバーの強みや考えを引き出すために、自分はどのような働きかけをしただろうか」
「自分が引き受ける以外に、チームを前へ進める方法はなかっただろうか」
「発言が少ない人に、安心して話してもらうための問いを投げかけただろうか」

悲鳴を上げなかった私が、推しに無関心だったわけではありません(むしろ熱狂的なファンです)。同じように、静かに見えることと熱量がないことは、イコールではないのです。周りの勢いに押されて、言葉にできていないだけかもしれません。

活動が進まなかった原因を、すべて自分の責任として抱え込む必要はありません。一方で、「メンバーが動かなかったから仕方がない」で終わらせてしまえば、自分の行動を見直す機会も失われます。「自分が変えられることは何だったのか。」その問いを持てたとき、モヤモヤは次の成長につながる学びへと変わります。

■「次は、あえて難しいチームで挑戦したい」

なかには、モヤモヤを避けるどころか、自分から取りにいこうとした参加者もいます。

ある参加者は、越境サーキットを終えた後、上司にこう報告したそうです。
「チームメンバーが本当に良かった。もう一度、越境サーキットを経験したい」

メンバー同士の関係が良く、それぞれが意欲的に取り組んだ、充実した活動だったそうです。ところが、続く言葉は少し意外なものでした。

 「次に参加するなら、今度はモチベーションに波のあるメンバーがいるチームを経験してみたい」

理由は、自社に戻ったときのマネジメントの練習になるから。実際の職場でも、一緒に働くメンバーを自由に選べるとは限りません。新しい仕事に前向きな人もいれば、不安で動けない人もいる。自分から意見を出す人もいれば、考えがあってもなかなか言葉にできない人もいる。そうしたメンバーとともに成果を出すには、

「なぜ、本人は動けないのだろう」
「どう関われば、その人の力を引き出せるだろう」
「相手が変わるのを待つのではなく、自分の行動をどう変えればよいだろう」

と考える必要があります。

こうした、知識やノウハウだけでは解決できず、関わる人の価値観や行動、関係性そのものを変えていく必要がある課題を「適応課題」と呼びます。ハーバード大学のロナルド・ハイフェッツ氏が提唱した考え方で、正解ややり方が明確な「技術的問題」と対比されます。適応課題に向き合うときに問われるのは、相手をどう変えるかよりも、自分の見方や関わり方を変えられるかどうかです。

「大変そうだけれど、それができたら楽しそうです」

この参加者が求めていたのは、前回の楽しさの再現ではなく、熱量や考え方の異なる人と向き合い、自分の関わり方を試す場でした。充実した越境を経験したからこそ「おかわり」を希望し、しかも難易度を自ら上げようとする。

これはまさに、適応課題に対峙するマインドセットが育った証だと感じています。思うようにいかない状況を避けるのではなく、自分を変える機会として引き受けようとする。越境で得た手応えが、次の困難へ向かう意欲に変わっていたのです。その姿勢に、運営側の私のほうが背筋が伸びました。

■課題提示企業に向き合う時間が、自社と自分への問いに変わる

越境サーキットで参加者が向き合うのは、課題提示企業が実際に抱える経営課題や事業課題です。新規事業の立ち上げ、ブランディング、営業・マーケティング、組織づくり、人材育成など、テーマはさまざま。どれも正解が一つではない、リアルな課題です。

提案を考え続けるうちに、参加者の問いは少しずつ変わっていきます。
「この課題は、自社にも通じるのではないか」
「私たちの組織なら、どう向き合うだろう」
「自分なら、職場で何を実践できるだろう」

他社の課題を考えていたはずが、いつの間にか自社と自分自身を見つめ直している。

この視点の転換は、越境学習ならではの価値の一つです。

実は、多くの経営課題もまた、知識やノウハウだけでは解決できない適応課題です。そして、チーム内の熱量の差にどう向き合うかも、その一つ。他社の課題に挑みながら、チームの中で自分の関わり方を問い直す。この二重の経験があるからこそ、越境先で抱えたモヤモヤは、本業での行動変容へとつながっていくのです。 

「末っ子・長南」は、参加者一人ひとりの見えにくい熱量やモヤモヤも、次の一歩も、そばで見守っていきます。

◆執筆者プロフィール
長南 あゆみ(株式会社エンファクトリー/越境デザイナー・越境サーキット運営責任者)

株式会社エンファクトリーで「越境サーキット」の企画・営業・運営を担う越境デザイナー。パティシエ、営業、人材マッチングを経て越境研修事業へ。異業種・異職種の実践型学習を設計し、参加者の行動変容と組織への還元を支援している。

「越境学習」を、一過性の体験で終わらせないために

【越境サーキットとは?】

異業種の参加者がチームを組み、スタートアップや地域企業の実際の経営課題に約3か月間取り組む、実践型の越境学習プログラムです。「越境サーキット」の詳細はこちら

名刺交換で終わる「点」の交流ではなく、共通のゴールに向かって協働する「線」の交流を通じて、参加者の行動変容と組織への還元を支援します。

初めての異業種交流に「越境サーキット」をおすすめする3つの理由

  1. 「名刺交換」で終わらない、深い関係性が自然に築ける
  2. 自分の「当たり前」が、社外では「強み」だと気づける
  3. 利害関係のない「社外の同期」ができる
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