【企業事例あり】次世代リーダー育成を成功させるには?選抜方法や育成の流れ、求められる資質を徹底解説

サクセッション・リーダー育成

会社の舵取り役を育てる次世代リーダー育成は、企業の競争力を維持するうえで欠かせません。実際、多くの企業が早期から次世代のリーダーを選抜し、時間をかけて未来の経営層を育成しています。

しかし、次世代リーダー育成には困難が多いのも事実です。VUCAの時代を勝ち抜く経営人材を育成するためには、何が必要なのでしょうか。

この記事では、次世代リーダーの定義や育成方法、次世代リーダー育成に成功した企業事例を詳しく解説します。ぜひ最後までお読み頂き、会社の未来を担うリーダーの育成を成功させましょう。

次世代リーダーとは?

次世代リーダー育成について解説する前に、まずは次世代リーダーの定義を確認します。

次世代リーダーとは、将来的に会社の経営層として活躍することが期待される人材のことです。一般的には、部長や課長など一定のマネジメント経験を持つ社員から、経営層にふさわしい素質を備えた人材が次世代リーダーとして選抜されます。

経営層として活躍するためには、経営戦略やアカウンティングなどの広範な知識が必要です。次世代リーダーは、経営層に必要なスキルや資質を早期から身につけ、経営層の器を持った人材へと育つことが期待されています。

次世代リーダー育成とは?

次世代リーダー育成とは、次世代リーダーを育成する一連の取り組みのことです。

次世代リーダー育成は、主に経営層へ着任する2〜3階層前の一部の優秀な社員を対象とすることが多いです。一般的には、選抜研修よりも早い時期から実施されます。

なお、企業によっては選抜研修と次世代リーダー育成の境目が曖昧だったり、どちらか一方しか実施していなかったりすることも多いです。

これからの次世代リーダーに必要な5つの資質・スキルとは?

ビジネス環境の競争が激化している昨今、次世代リーダーにはどのような資質・スキルが求められているのでしょうか。

次世代リーダーに必要な資質・スキルは、主に以下の5つです。

  • ビジョンを描き、実行する力
  • 難局を乗り切る判断力と実行力
  • 最新の知識をキャッチアップする情報感度
  • 常に学習を続ける向上心
  • 人と組織を正しく管理する力

ここからは、次世代リーダーが備えるべき資質を解説します。

ビジョンを描き、実行する力

VUCA時代の経営者には、先の見通しづらい状況でも企業の明確なビジョンを描く力が必要です。リーダーが明確なビジョンを描くことで、社員は一丸となって一つの方向へ向かっていくことができます。

なお、ビジョンを絵に描いた餅で終わらせないためには、高い実行力も必要です。具体的には、以下のような力が求められます。

  • 周りを巻き込む力
  • 人間力
  • 調整力
  • コミュニケーション力

次世代リーダーは、これらを駆使しながらビジョンを組織へ浸透させ、社員の理解や共感を得る必要があるのです。

難局を乗り切る判断力・決断力

経営層は、どんなに難しい状況であっても、会社の経営方針を決める必要があります。判断力や決断力は、次世代リーダーが持つべき重要な資質です。

判断力や決断力を磨くためには、常に視野を広く保ち続ける必要があります。加えて、リーダーとしての明確な行動指針やモットーなどを持っておくことも有効です。

最新の動向をキャッチアップする情報感度

次世代リーダーは、常に時代の最先端をキャッチアップする情報感度が必要です。具体的には、以下のようなテーマについて、常に新しい情報を得る必要があります。

  • ビジネス環境・ビジネスモデル
  • 世界情勢
  • 政府の動き
  • デジタル技術 など

また、現代社会では国境を超えてヒト・カネ・モノが動きます。遠く離れた国で発生した紛争や感染症などが、自社のビジネスへ思わぬ影響を与えることも珍しくありません。素早く正しい意思決定を行うためには、常に高い情報感度を維持する必要があるのです。

常に学習を続ける向上心

先ほど解説した情報感度とも関連しますが、次世代リーダーには向上心も必要です。

例えばChatGPTをはじめとしたAIは、今後も多くのビジネスに計り知れない影響を与えるでしょう。また、RPAなどのITツールを用いた業務の自動化も、まだまだ進展途中です。時代に取り残されないためには、日々進化するテクノロジーについて学び続ける必要があります。

人と組織を正しく管理する力

人や組織を正しく管理するマネジメント力も、次世代リーダーに必要な資質の一つです。

次世代リーダーは、常に組織が最高のパフォーマンスを出せるよう、メンバーをありとあらゆる角度からサポートする必要があります。離職率や生産性といった足元の課題を解決するのも大切ですが、長期的なチームのパフォーマンスに寄与することもリーダーの仕事です。具体的には、以下が主な論点になるでしょう。

  • 企業内での人材育成
  • 社員のエンゲージメントの向上
  • 企業風土の形成と維持

次世代リーダーの段階から経営層並みの管理能力を身につける必要はありませんが、管理職の段階である程度の土台を作っておくことは大切です。早い段階からマネジメントを伸ばし、徐々に経営層の視座へとステップアップしていきましょう。

次世代リーダー育成でありがちな課題とその解決手順

次世代リーダー育成は、なかなか一筋縄ではいきません。次世代リーダー育成における主な課題は、以下の3つです。

  • 候補となる人材の選抜方法がわからない
  • 体系的な育成プログラムが確立していない
  • 次世代リーダーの器を持つ人材を現場が手放さない

次世代リーダー育成でありがちな課題について、解決策も交えながら解説します。

候補となる人材の選抜方法がわからない

次世代リーダー育成では、候補となる人材を選抜する必要があります。しかし、この選抜に際して、「どのような基準で選抜すればよいのかわからない」という課題がよく聞かれます。曖昧な基準で選抜すると、本人のキャリアプランとのミスマッチも起こりかねません。

次世代リーダーの選抜を行う際は、事前に明確な基準を定めるのが大切です。参考までに、次世代リーダーの選抜基準の例を紹介します。

項目基準
ビジョンの設定力明確で魅力的なビジョンを描くことができるか?
判断力・決断力難しい状況でも正しい判断を下せるか?
曖昧な態度を取らないか?
向上心常に学び続ける意欲や情報感度があるか?
マネジメント力組織全体を見渡し、正しく管理できるか?
人間力周囲の人が「ついていきたい」と思えるような人材か?

実際には、これらの観点に対してそれぞれ何段階かの評価基準を設けて運用するとよいでしょう。

また、三井化学株式会社では、長期経営計画「VISION 2030」にもとづき後継者候補を戦略的に推し進め、人的資本経営の優れた事例として「人材版伊藤レポート2.0」にもピックアップされ、注目を集めています。

特に同社の取り組みの核となるのは、次世代の経営者となり得るリーダー候補を戦略的に育成する「キータレントマネジメント」です。8年目を迎えた2024年現在、その成果として「後継者候補準備率」は200%を超えています(戦略重要ポジション1つに対し、2人以上の後継者候補が育成できている状態)。

グローバル人材部部長の小野真吾氏により、次期経営者候補の戦略と組織・体制作りのポイントをお話しいただいたレポートがあるので、「後継者育成の戦略・選抜・育成における成功事例を知りたい」「後継者育成を実施しているが、なかなか成果が出ない」という方はぜひご覧ください。

>ダウンロードはこちら

体系的な育成プログラムが確立していない

体系的な育成プログラムが確立できておらず、次世代リーダー育成が実質的に「経営層の補助」となっているケースも少なくありません。OJT形式で学ぶのも有効ですが、課長層や部長層の社員はまだ経営戦略やアカウンティングの知識が確立していません。こうした状態で、いきなり経営層の仕事に挑戦するのは非効率です。

次世代リーダー育成を行う際は現場任せにせず、できるだけプログラムを体系化することを心がけてください。その際には、現在の経営層とコミュニケーションを取り、将来の経営層に必要なスキルやマインドについてすり合わせるのがおすすめです。

次世代リーダー育成の流れや方法はこの後詳しく解説するので、そちらもあわせて参考にしてください。

次世代リーダーの器を持つ人材を現場が手放さない

次世代リーダー育成の対象者は、現場で中核的な役割を担っている優秀な人材が中心です。そのため、次世代リーダーの候補を募集すると、現場がこうした優秀な人材を抱え込んでしまうことがあります。次世代リーダー候補の人材には部署異動や出向を経験させることも多いため、現場の上長が「手放したくない」と考えるのも無理からぬことでしょう。

解決策としては、以下が挙げられます。

  • 次世代リーダー育成の重要性を社内周知する
  • 早い段階から事業部や上長の協力を得ておく
  • 次世代リーダーとして抜けた人材の分を補填する
  • 経営層自身が旗振りを行い施策を進める

いずれにせよ、一方的に現場へ負担を押し付けないようにするのが大切です。経営層からのバックアップを得ることで、次世代リーダー育成の重要性がより伝わりやすくなります。

次世代リーダーを育成する流れ・方法

ここからは、次世代リーダー育成の流れを解説します。次世代リーダー育成のプログラムを考える際は、ぜひ参考にしてください。

次世代リーダー育成の基本となる6つのステップ

次世代リーダー育成は、以下の6つのステップで進めましょう。

  1. 次世代リーダーの理想像を描く
  2. 選抜基準を決める
  3. 具体的な育成プログラムを決める
  4. 育成対象者を選抜する
  5. 次世代リーダー育成を実行する
  6. 育成成果を分析し、PDCAサイクルを回す

肝心なのが、最初の「次世代リーダーの理想像を描く」という段階です。ここがあやふやだと、体系的な次世代リーダーの育成ができません。スキルマップやルーブリックを活用しながら、次世代リーダーに求める要件を構造的に書き出すことが大切です。

その後は、選抜基準や育成プログラムを決めて、育成を実行に移していきます。プログラム開始から3ヶ月や6ヶ月といったタイミングで振り返りの機会を設け、PDCAサイクルを回しましょう。

次世代リーダー育成の方法は主に5つ

次世代リーダーの育成の流れについて解説しましたが、次世代リーダー育成の具体的なプログラムとはどのようなものなのでしょうか。

次世代リーダー育成の代表的な手法を表形式でまとめました。

育成方法実施タイミング実施期間体系的なスキルセットの獲得リーダーとしてのマインド醸成
集合研修随時1日〜1ヶ月
OJT育成期間の終盤1〜2年
部署異動・出向育成期間の中盤〜終盤1〜2年
外部セミナーへの参加育成期間の序盤1日〜1ヶ月
越境学習育成期間の中盤〜終盤※座学研修との組み合わせがおすすめ3~6ヶ月

それぞれの手法に一長一短があるため、どれか一つの育成方法に頼るのではなく、これら5つの手法をうまく組み合わせるのが大切です。

次世代リーダー育成には越境学習が特におすすめ

近年では、経営塾などの座学研修に組み合わせ、出稽古・武者修行の場として「越境学習」を導入し、社外で経営層の近くで実践を行う企業が増えてきています。

越境学習とは、ベンチャー企業やスタートアップ企業、NPO法人などへ社員を派遣する育成方法です。

「なぜ次世代リーダー育成には越境学習が有効なのか?」と疑問に思われる方も多いでしょう。ここからは「カッツモデル」を元に、越境学習の有効性について紐解いていきます。

カッツモデルによると、リーダーには以下の3つのスキルが求められるとされています。

  • コンセプチュアルスキル⋯⋯複雑な事象を概念化する力
  • ヒューマンスキル⋯⋯周囲と良好な関係を築く力
  • テクニカルスキル⋯⋯知識や技術を向上し、業務を的確に遂行する力

経営層や次世代リーダーは、コンセプチュアルスキルに重点を置きつつも、これら3つのスキルをバランスよく身につけることが重要です。

越境学習ではこれらの3つのスキルに対し、それぞれ以下のようにアプローチできます。

越境学習で得られる機会
コンセプチュアルスキル新しい環境や文化に適応する適応する中で、物音の本質を見極め、概念化する
ヒューマンスキル異なる文化や背景を持つ人々と交流する異なる価値観やコミュニケーションスタイルを理解する
テクニカルスキル異なる環境で新しい知識や技術を習得する他社の文化におけるアプローチやベストプラクティスを理解する

以上のように、越境学習はカッツモデルで提示されている3つのスキルを獲得できるチャンスが豊富です。

また大企業ほど、次世代リーダーに必要な経営に触れる機会を用意することは難しいでしょう。スピード感を持って優秀な人材にポジションを設けることで、次世代リーダー育成を早期に進めることが可能です。

次世代リーダー育成を企画する際には、ぜひ積極的に越境学習を盛り込んで、実践的な環境で経験を積んでもらうとよいでしょう。

越境学習で次世代リーダーの育成に成功した企業事例

株式会社エンファクトリーでは、越境学習を通じてこれまでに多くの次世代リーダーの育成を支援してまいりました。ここからは、越境学習によって次世代リーダーの育成に成功した企業事例を厳選して紹介します。

異なる環境で新しいリーダーシップの獲得に成功した事例

大日本印刷株式会社の秦様は、自社の新規事業開発へ携わる中で、ベンチャー企業の活動についてもっと知りたいと考えるようになりました。そこで、弊社エンファクトリーの実施する越境型研修サービス「複業留学」への参加を決めています。

越境学習では、「みんなのまちづくり」と呼ばれるベンチャー企業に携わり、地域の活性化に向けたさまざまな活動に取り組んでいます。複業留学後を通じて得た経験について、インタビューでは以下のようにお答えいただきました。

複業留学を経て、特にチームのメンバーや部下に対して、自分の想いや考えをはっきりと伝えるようになったと感じています。以前は新規事業のチームにおいて調整型のリーダーシップを優先し、部下がやりたいことやモチベーションを重視していました。

しかし、今は自分の中にミッションやビジョンをしっかりと持ち、それを堂々と表現することができるようになったと思います。唐突にアイデアを出すことも増え、そうしたアプローチが許されることに気づきました。

次世代リーダーに必要な決断力やコミュニケーション力について、越境学習を通じて効果的に伸ばした事例です。リーダーとしての立ち振る舞いにも変化が生まれるなど、キャリアの可能性を広げることに成功しています。

本事例の詳細は、以下のインタビューからご覧いただけます。

複業留学体験レポート「異質な環境が引き出した新たなリーダーシップ」 | 株式会社エンファクトリー 

複業留学で人事制度改革へ向けた第一歩を踏み出した事例

帝人訪問介護ステーション株式会社で人事担当を務めている西岡様は、自分の能力が他社でどれほど通用するのか知りたいという思いから、越境型研修サービス「複業留学」への参加を決めました。

複業留学中では、主に以下の3つの業務に取り組んでいます。

  • 訪問介護ステーションのスタッフの顧客理解を深めること
  • インターン生のサポート
  • お客様向け資料作成のサポート

西岡様は、特にこの中でもインターン生のサポートが印象に残ったそうです。インタビューでは、複業留学で得た経験について以下のようにお答えいただきました。

今回インターン生をサポートする立場になったことで、彼らの理解やモチベーション、成長を促すために何をすべきかを考える機会が増えました。自分が直接成果を出すことはもちろん嬉しいですが、 自分の指導を受けた後輩や部下が頑張って成果を出したときの喜びはそれ以上でした。これは、複業留学を経験していなければ感じることのなかった感情だと思います。

大企業の年功序列によりマネジメントや管理職にすぐになるのは難しいですが、今回の経験を通じて、マネジメントに興味を持つようになりました。

会社の規模や組織体制によっては、なかなか若手のうちから上司の視点を得ることが難しいこともあるでしょう。また、昨今の若手社員は「なかなか管理職になりたがらない」と言われることも多いです。

本事例では、越境学習を通じて実際のリーダー業務へ挑戦してもらうことで、こうした課題の解決に成功しています。早い段階から高い視座を身につけてもらった、次世代リーダー育成の一例です。

本事例は、以下のインタビューからより詳しくご覧いただけます。

複業留学体験レポート「複業留学で得た視野 :人事制度改革への新たな一歩」 | 株式会社エンファクトリー

株式会社カルモアでの実践事例

創業30年自主独立経営を掲げ、アジアトップクラスで「空気環境ビジネス」を展開する株式会社カルモアでは、経営戦略を逆算して次世代経営者育成を計画。

なんと、現在の社長も次期幹部候補から37歳という若さで社長に抜擢されています。

施策の1つとして取り組むのが、社外での武者修行体験「越境学習」。自社以外の環境を知ることで自己理解を深め、社内に新たな視点をもたらすことを目的にしています。

そんな同社の人事担当者、越境者をお招きし、次世代経営者育成のリアルな道のり、成果をお話しいただきました。

詳しくはこちらをご覧ください。

まとめ

次世代リーダーの定義や育成方法、ありがちな課題について解説しました。

VUCA時代を勝ち抜くためには、高い判断力と人間力、ビジョン策定力を持った優秀な経営人材が必要不可欠です。経営人材の育成には年単位の時間がかかるため、早期から優秀な人材を次世代リーダーとして選抜し、体系的な育成を実施する必要があります。

そのためには、この記事で解説したように集合研修やOJT、出向などの機会を積極的に与えるのがよいでしょう。他社へ派遣して新しい経験を得てもらう越境学習も、次世代リーダーに必要なスキルやマインドを伸ばす有効な手段です。

越境学習に特化してプログラム提供を行い累計80社7,000名以上の支援を行ってきた株式会社エンファクトリーでは、企業の目的に合わせた越境学習プログラムを展開しています。

はじめて越境学習を導入する企業にも効果を実感いただけるプログラム設計となっているので、ぜひ興味のある方はお気軽にお問い合わせください

タイトルとURLをコピーしました