これまでの人材育成はOJTを代表に自社の領域内で実施するケースが多く、越境学習のようなケースはあまり見られませんでした。
しかし、VUCAと呼ばれる今日では、これまでの自社にない発想が求められ、そのため、自社の枠を超えた知識・経験が身につく学習法が注目されています。
また、この越境学習は、次世代リーダーやイノベーション人材の育成に有効なことも注目されている要因の1つです。
そこでこの記事では、越境学習とはどういったものなのか、どのように進めていけば良いのかを導入ステップも交えてご紹介します。
越境学習とは?
越境学習とは、自社の枠を超えた領域で人材育成を行う学習法で、通常勤務している職場を離れ、まったく異なる環境で活動する体験から新たな視点などを得る学習法のことです。例えば、副業やボランティア活動、在籍留学などが挙げられます。
この越境学習は、制度と研修に区分されます。
制度では、副業・兼業や社内副業などがあります。
研修では、外部セミナーやプロボノ、在籍留学などがあります。
どの施策も通常の職場を離れたアウェイの環境で刺激を受けることにより、これまでのスキルの応用・転用への気づきを促したり、新しい発想が出せる思考になったりします。
越境学習が求められる背景
IT技術の発展やグローバル化、少子高齢化、労働人口の減少、市場ニーズや価値観の多様化・複雑化など市場環境が大きく変わり、これまでの価値観やビジネススタイルが通用しない時代となりました。
現在は、「変動性」「不確実性」「複雑性」「曖昧性」などが増している中、企業は自社の枠を超えた発想や取り組みが求められます。
また、人生100年時代と言われる現在、長く働けるためのスキルやキャリアを積む必要があります。なぜなら、現在の職場だけで活かせる限定されたスキルやキャリアでは、リストラや定年で現在の職場を離れた場合、働く武器を失い、そして、働く場を失うからです。
シニア世代でも働き続けられる状況や武器を手に入れるために、ミドル世代やその前段階から新しい目標や変化に対応できるなど、キャリアの自律を意識し、取り組む必要があります。
このように、企業、従業員の双方に自分たちの枠を超えた学びや意識の切替えが必要とされています。
越境学習の効果(メリット・デメリット)
越境学習のメリットとして、下記が挙げられます。
①これまでにない人材育成ができる
これまで人事部の人材育成領域外での活動のため、新しい気づきや経験を得ることができます。
②優秀人材の離職防止につながる
優秀人材は、業務をこなせるようになるとマンネリを感じてしまい、転職してしまう可能性があるので、転職防止の効果が得られます。
③社外ノウハウを取り込める
社外の実務経験によりノウハウを蓄積し、それを社内にて展開し業務改善につなげることが期待できます。
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一方、デメリットとして、下記が挙げられます。
①実現可能性の不公平感
一定期間に越境学習を受けられる人数が限られているため、参加できなかった従業員から不平不満の声があがる。
②コスト増加
越境学習の期間中は、交代要員の確保や参加者の心理的ケアが必要なため、これまでの教育施策と比べコスト増加となります。
③時間がかかる
外部経験を積ませるために一定期間必要とすることや、そのような経験を複数名に実施するために思った以上に時間がかかります。
そのため、自社の課題解決に合わせて、何を優先すべきか整理し施策を検討・実施する必要があります。
越境学習の種類と導入ステップ
越境学習の種類には、副業・兼業や社内副業、プロボノ、在籍留学などがあります。
何を実現したいのか目的に応じて使い分けていくことが重要です。
また、越境学習を導入する時には、下記の点に留意することも重要です。
①越境学習参加に従業員は納得しているか
②越境学習受入れ企業と目的を共有できているか
③従業員の参加理由は、企業目的を合致しているか
④社外で得たノウハウを社内で受入れる体制が整っているか(越境学習者を迫害しない)
なお、越境学習を会社施策として導入する前に、人事担当者が越境学習をすることをおすすめします。
なぜなら、越境学習のメリット・デメリットや、本業との両立の難しさを知ることにより対象者の物理的・心理的ケアの必要性が実感できるからです。
越境学習は、アウェイでの業務経験から気づきを得る学習法のため、身体的・精神的負荷が通常業務以上にかかる可能性があります。
そのため、参加する従業員のケア施策も含めて検討し、企業・従業員の双方にとって意義のある取り組みにしていきましょう!