エンファクトリーが提供する越境型研修サービス「複業留学」は、大手企業の従業員がベンチャー企業で実務を行う「越境研修」です。 今回は実際に研修に取り組んでいただいた大日本印刷株式会社 渡邉様に、複業留学についてインタビューいたしました。
──本業での仕事内容を改めて教えてください。
クライアントに対してアプローチするテーマづくりからプラニングし、組織の壁を超えた多くのパートナーとの連携を深めて価値創造に取り組んでいます。
──複業留学に参加を決めた理由を教えてください。
DNPで培ってきたスキルや経験値を異なる環境で試してみたかったからです。この環境だから通用しているのではないか、客観視する楽しみと不安がありました。
──複業留学先での活動内容を教えてください。また、どんなスキル、能力、ノウハウが活かせたと思いますか?
これまで廃棄されてきた泡盛の粕を活用して、DHAを豊富に含有するだけではなく「旨味」が豊富な美味しい藻「うま藻」(https://umamo.jp/)という植物性の旨味食材におけるBtoB開拓です。マーケティングプランを策定し、3か月間で16社26人に提案活動を実施しました。課題解決や価値創出のために、手段にとらわれず、積極的に行動するスピード感を活かせたかと思います。
いろいろな方と話をする中で、この「うま藻」を社食で使うアイデアが出て、形にしていきました。DNPの社食導入は、実績として提案活動にも活きるので、まずは自社で取り入れるのが最初だなと思いました。社食は全16ヶ所で提供する予定です。
──複業留学で困ったことは何ですか? またどのように乗り越えましたか?
業務上関わりのない人を巻き込む難しさを痛感しました。エンファクトリー伴走者の藤生さんからの「仕事におけるメリットとセットで、相手の立場に立ったメリットを伝えると主体的な協力が引き出しやすくなりますよ」というアドバイスがありがたかったですね。
相手のメリットを考えて協力を得やすいタイミングで要点を簡潔にまとめて連絡するようになりました。
複業留学は、3ヶ月という期間がありましたが、「うま藻」の美味しさや機能性はもちろん、ストーリーとしても優れた食材なので「どこか決まるだろう」と、当初は少したかを括っていました。しかし、BtoB開拓でのリードタイムを考慮すると、まずは食材の価値を知ってもらう活動が重要だと考え、商品開発の手前における体験づくり、イベントの提案などにシフトをしました。
こうして柔軟に提案活動を変えていけたのも、 複業留学先がPDCAを高速に回しているのに触れ、臨機応変に変えていかないと現状維持は退化だと気づいたからです。変化・進化し続けないと成長はありません。
──留学先で一番驚いたこと、違いを感じたことは何ですか?
成果にこだわり早く結果を出すこと、優先順位をシビアに管理されているという印象を受けました。正直、大きな組織にいると、ここまで意識することなかったので、改めて大事だと認識しました。リソースが限られていて、全部はできないなら、こう舵を切ろうと判断の仕方やスピードの違いを感じました。
──複業留学の前後で変わったことありますか? あと周りの人への影響あれば教えてください。
優先順位付けとも関連しますが、 アウトプットを考慮した価値の出し方やコストパフォーマンスへの意識が変わりました。
例えば、1日30万円のイベントに出展するとします。費用で見ると、30万円でのイベントはコスパが良く見えるのですが、30万円を払って得られる売上はどれほどか考えます。また、得られる成果に対して、人件費やエネルギーを投下する必要性があるのかを考えるようになりました。自分を安売りし、自己満足に留まるのではなく、相手が喜ぶ、納得していただける費用対効果のある働き方をしていきたいと思うようになりました。
また、周りへの影響ですが、「複業留学に行ってほしいな」と思う後輩がいるので、その方に話をしました。また、複業留学の同期から「影響を受けました」と言われたのは嬉しかったです。
──第三者からの評価を受けて、どう感じましたか?
複業留学先の期待を失望させず、期待を超える働きができたてよかったです。 自分の自信になりました。そして今後この経験をどう活かすかが大事なので、組織に還元していきたいです。
自分はキャリアやスキルを棚卸し、見つめ直すことを定期的にするタイプではありませんでした。やりたいこと、やらないといけないことをがむしゃらにやった結果、後ろに道ができてきたようなイメージです。このことから、他社の方から行動を通して評価していただけたのは、すごくありがたかったです。 外でも通用する自分の強みがわかりました。
──複業留学での経験を今後どのように活かしていきたいですか?
改めてDNPの「一人ひとりが強みを伸ばし、社内・社外で活躍できる人材として育ってもらいたい」という思いと、「社員を大切にして、社員が企業を成長させて、その社員が社会をより豊かにしていく」という信念を感じました。
DNPのように、人材育成を目的とした研修が受けられることは当たり前のことではないと思うんですよね。これまで会社が人へ投資していることをそこまで意識したことはありませんでしたが、複業留学を通じて気づくことができました。これは外に出てみないとわからないことだと思います。
このような恵まれた環境の大企業にいる人が、熱量とスピード感を持って取り組めば、スタートアップにも負けない新たな事業を生み出せるはずです。熱量、スピード感、行動力と強みの掛け算で、組織に「新しい価値」を還元できるようにやっていきます。そして、自分だけではなく同じ考えをもった仲間を増やしていきたいです。
──ほかのメンバーに複業留学をおすすめするとしたら、どんな言葉をかけますか?
今いる部署でも、新しいチャレンジはあると思います。しかし、やはり部署や会社の中といった限られたものになります。スタートアップという組織、文化や風土、仕事の進め方、スピード感などが違う、また自分のことを知られていない中での活動は、大きな刺激と学びがありました。DNPという場所に籍を置いたまま、外の世界に触れることができる制度を活用しない理由はないですよね。世の中は広いので、違う世界にチャレンジするのも悪くないと思います。