■導入企業
企業名:株式会社エクサ( https://www.exa-corp.co.jp/ )
業種:IT・システムインテグレーション
従業員数:1,311名(2026年4月1日時点)
スタート時期:2025年~
対象者:若手から中堅社員
人選方法:手挙げや公募
人数:若干名
■インタビュー
株式会社エクサ
人材戦略推進部 上原 恵 様
株式会社エクサ(以下、エクサ)は以前より、中期経営計画において「共創型サービスインテグレーター」への転換を掲げ、現在は、従来の受託開発モデルから、顧客と共に価値を創出するビジネスモデルへの変革を目指しています。
その戦略的な一手として導入されたのが、エンジニアが「完全アウェイ」の環境に身を置く越境学習プログラム「複業留学」でした。本記事では、1期生(小岩氏・佐藤氏)の挑戦から得られた具体的な成果と、その学びを現在進行形で組織へと還流させていく「ピアサポーター制度」の構築プロセスについて、同社の人材戦略推進部に所属し、自らもSEとして10年のキャリアを持つ上原氏に詳しくお話を伺いました。
【課題と導入背景】「要件を待つ」受託体質からの脱却――現場を離れ「顧客視点」を体感する必要性
エンファクトリー:まず、今回のプログラム導入に至った背景や、当時の課題意識について教えてください。
エクサ上原様(以下、上原): 弊社は現在の中期経営計画において「従来の受託開発モデルから、顧客と共に価値を創出するビジネスモデルへの変革」 を目指しています。これまでの受託開発で培った確かな技術力は弊社の強みですが、一方で現場には「要件はお客様が出すもの」という意識が根強くありました。決められた仕様に応えるスタイルから、自ら問いを立て顧客と共に価値を創出するスタイルへの切り替えには、マインドセットの変革が必要だと感じていました。
エンファクトリー:知識としての理解(Off-JT)だけでは、その深いマインドセットを動かすのは難しかったのでしょうか。
上原: その通りです。座学での学びには限界があります。 本当に行動変容を促すためには、お客様の立場に立って共感し、自分事として深く考え抜くような経験が必要だと思っています。
今回、あえて農業という異業種の現場を越境先に選んだのは、参加した小岩本人の希望によるものですが、我々としても「IT提供側の立場ではなく、お客様(事業者側)の立場に立ってその課題やスピード感を体感してきてほしい」という明確な狙いがありました。
【社内展開と運用の工夫】業務稼働との調整をどう乗り越えたか――先陣を切った1期生2名の挑戦と社内浸透
エンファクトリー:ITサービス業界では、業務稼働の調整が大きなハードルになるかと思います。どのように社内の合意形成を図られたのでしょうか。
上原: 弊社のビジネスは「人月単位」の契約が多く、現場に健全な余白を作ることは容易ではありません。そのため、各本部長クラスに対し、この越境学習は、社員一人ひとりのマインドを変革するために必要な投資だと思って取り組んでいる旨を丁寧に説明し、理解を得ました。
エンファクトリー:1期生として参画された小岩さん、佐藤さんの選出過程についても教えてください。
上原: 昨年度は選抜形式ではありましたが、単なる上司の指示ではなく、案内に対して自律的に「自ら手を挙げた」という高い意欲を持つメンバーが参加してくれました。
1期生として参画した佐藤についても、もともと現場でしっかりと活躍してくれていましたが、当時はまだ若く経験機会もこれからという段階でした。しかし今回の越境学習で見事に成果を上げたことで社内での認知度が上がり、帰任後は他の社外活動や新たな取り組みにも意欲的にチャレンジするなど、ますます活躍してくれています。 人材戦略推進部としては、細かい指示を出すのではなく、彼らがミッションを見失わないよう言語化をサポートし、現場の上司も巻き込みながら「信じて見守る」姿勢を貫きました。
【受講生の変化と成果】経営者の暗黙知をAI化した『デジマキさん』の誕生――主体的な課題解決へのアプローチ
エンファクトリー:小岩さんが開発した生成AI『デジマキさん』は、非常に具体的な成果として注目されていますね。
上原: はい。越境先であるアグリマインドの藤巻代表が経営者として長年のご経験から培われてきた判断基準や経営哲学といった“暗黙知”の共有にチャレンジしました。
現場に深く入り込んで代表の思考プロセスをAIとして資産化したことで、スタッフが多忙な代表に気兼ねすることなく、いつでも「代表ならどう考えるか」を相談できる環境を構築しました。この『デジマキさん』は単なる経営者の代行ではなく、藤巻代表自身にとっても「思考の抜け漏れを防ぐ壁打ち相手」として機能しており、テクノロジーが経営と現場の距離を縮める好例となりました。
エンファクトリー:小岩さん自身のマインドセットには、どのような変化が見られましたか。
上原: 大きな変化がありました。以前から優秀なエンジニアでしたが、当時はどこか「やるべきことをやる」という裏方の意識が強かったように思います。それが越境先での経験を経て、当事者として「何をしたいのか」という自律的なマインドが芽生え、当社のミッションにおいて極めて重要なマインドを獲得してくれました。帰任後、彼女が自らプレスリリースを主導し、他部署の本部長へレクチャーを行う姿は、外の世界で得た確固たる自信の表れだと感じています。
参考記事:https://www.exa-corp.co.jp/news/004628.html
【組織への波及と今後の展望】個人の成果を組織へ還元する――1期生が支える「ピアサポーター」と風土改革
エンファクトリー:個人の学びを組織全体に還元するために、どのような「還流」の仕組みを構想されていますか。
上原: 越境経験者には、お客様との共創型ビジネスを牽引するフロント機能としての役割を期待しています。その知見やマインドを各事業部へ伝達し、人材育成にも貢献することを目指しています。
具体的には、1期生の小岩や佐藤が核となり、次世代の挑戦者を実務・精神面で支える「ピアサポーター制度」の構築に着手しています。経験者のリアルな声が、挑戦のバトンとしてつながっていく循環を作りたいと考えています。
エンファクトリー:「特別な人だけの経験」にさせないための工夫はあるのでしょうか。
上原: 「小岩さんだからできた」「佐藤さんだからできた」という特別感を排し、誰もが挑戦できる文化へと昇華させることが人事の役割です。そのため、社内報で二人の取り組みを詳しく紹介したり、人材育成に関する全社会議でも二人に登壇・発表してもらうなど、リアルな体験談を全社へ共有する機会を設けました。 現在、小岩が所属する「共創Laboratory本部」が組織的なハブとなり、各事業部との連携を強めています。今後は、この取り組みを社員のマインドセットや組織風土の変革に向けた戦略的人材育成のひとつの柱として位置付けていく方針です。
【人事としての学びとメッセージ】自社もまだまだ試行錯誤の途中。社内の育成に「社外の学び」を掛け合わせ、社員が成長し続けられる環境を、社会全体でつくりたい
編集記: 輝かしい成果の裏で、上原様自身もまた、一人の人事担当者として等身大の葛藤を抱えていました。
上原: 正直に申し上げれば、弊社もまだまだ手探りです。現場の稼働調整や「1人月」の壁に、日々悩み、考えることもあります。以前は、Off-JTや現場でのOJTだけでは限界があると感じつつも、どう進めるべきか模索していました。
その心境に変化があったのは、今回の複業留学の取り組みなどを通じて、社員の成長の場を社内だけに限る必要はない、と気づいたところからです。Off-JTやOJTは、今後も大切にしていきたいと思いますが、それだけでは得られない気づきがあることを、今回あらためて実感しました。自社内だけで人を育てるには限界がある。でも、社外の経営者や他社の仲間といった「社会全体で人を育てる」という視座に立ったとき、育成の選択肢が大きく広がりました。
小岩も佐藤も、エンジニアとして積み上げてきたものが通用しない「完全アウェイ」の環境に身を置きました。そこで、お客様の立場で課題を考え、自分で動く経験をしています。この経験は、社内の研修ではなかなか再現できません。異業種の現場で実際の課題に向き合える複業留学だからこそ得られた成長だと感じています。
エンファクトリー:最後に、同じように悩む人事育成担当の仲間へメッセージをお願いします。
上原:社員が社外で得る経験は、社内だけでは得られない大きな成長の機会になります。現場の調整は簡単ではありませんが、外部の力を借りることで、最初の一歩は踏み出しやすくなります。組織づくりに唯一の正解はありません。だからこそ、社内の育成と社外の学びを組み合わせて、社員が成長し続けられる環境を、一緒につくっていきましょう。
編集記: 上原様の言葉は、戦略家としての鋭さと、現場に寄り添う温かな眼差しが共存していました。「自社完結」の限界を認め、社外との共創を選んだエクサ。その挑戦は、エンジニアの未来だけでなく、IT業界のあり方そのものを変えていく可能性を秘めています。
「複業留学」についてはこちら:
https://teamlancer.jp/lp/fukugyo_ryugaku
詳しい資料をご用意しております。
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