越境経験でなぜ「ホーム」が変わるのか〜越境者と上司、受け入れ企業が語るリアル【東京都人材交流支援事業 中間報告会レポート④】

越境学習

エンファクトリーは、東京都の令和7年度「大企業と連携した中小企業・スタートアップの成長促進に向けた人材交流支援事業」に運営協力として携わっています。本事業は、人材育成を進めたい大企業と、事業を加速させたい中小企業・スタートアップの双方に対し、人材交流を通じた成長を促す取り組みです。

▶本事業の詳細: https://jinzai-kouryu.metro.tokyo.lg.jp/

2026年5月28日には、これまでの成果を共有する中間報告会が開催されました。本連載では全4回にわたって、当日の内容を詳しくご紹介しています。第4回となる本記事では、越境者・その上司・受入企業によるセッションの内容をもとに、越境学習がそれぞれの立場にもたらした変化に迫ります。

▶中間報告会の詳細: https://jinzai-kouryu.metro.tokyo.lg.jp/interimreport/

アウェイで直面した戸惑いと化学反応

セッションには、越境者であるNOK株式会社(以下、NOK)の保田様、コニカミノルタジャパン株式会社の奥村様(以下、コニカミノルタジャパン)、その上司や受入企業の方々、さらに基調講演を行った株式会社ビジネスリサーチラボ代表取締役の伊達様がモデレーターとして参加しました。

営業一筋でキャリアを重ねてきた保田様は、株式会社アスソラ(以下、アスソラ)へ越境しました。アスソラは、トップから方針が示される本業とは異なり、社員からもアイデアが活発に出てくる環境でした。社員一人ひとりが強みを前面に押し出す姿に触れ、自分の強みは何かと戸惑ったといいます。

一方、人事としてコニカミノルタジャパンの奥村様は、CHEERS株式会社(以下、CHEERS)で人事制度の策定に取り組みました。これまでは自分の中で7割ほど完成させてから周囲に相談するやり方でしたが、CHEERSでは日常の会話の中でも意思決定が進んでいきます。奥村様は大枠の方向性を共有し、初期段階からフィードバックをもらうことでこの「ズレ」を乗り越えました。

モデレーターを務めた伊達様は、越境学習ではこれらの葛藤を通じて個人としての価値が問われること、フィードバックを受けながら企画を進める重要性に早い段階で気がつけたことは今後のキャリアを考える上でも貴重であることを指摘しています。

受け入れ企業が得られた価値

受け入れ側からも、越境学習による変化の声が上がりました。アスソラの山崎様は、20年以上の営業経験を持ったプロである保田様が異分野への挑戦を望み、上場に向けた組織基盤の整理に取り組んでくれたことを振り返ります。

保田様が違う分野へ挑戦する姿は現場への刺激となり、社内のコミュニケーションの活性化にもつながりました。組織基盤が未完成の状態から1か月で全体を整理するなど、物事を構造化する力も存分に発揮し貢献されました。

CHEERSの植村様は、半年で組織が15名から30名へと拡大する急成長の最中で奥村様を受け入れ、人事制度の策定を依頼しました。大企業とスタートアップという文化のギャップがある中、奥村様はこれまで触れてきた大企業の組織体制を、CHEERSのことを尊重しながらうまくインストールすることに成功しています。

これを受け伊達様は、単に越境者が優秀であっただけでなく、課題の明確化や越境者との対話などで発揮される受け入れ企業側の「受入力」という能力があったからこそではないかと指摘しました。

ホームに戻った三者に起きた変化

セッションでは、帰任後の変化も話し合われました。

越境者である保田様は、20年間「NOKの営業」として仕上がっていた自分に気がつきました。周囲の人の視点や考え方を今まで以上に意識できるようになり、以前は環境に戸惑いを感じていた異動先の部署にも溶け込めるようになったといいます。

奥村様は、毎年同じ内容で実施していた新入社員研修にも、新しい意図やアイデアが必要ではないかと考えるようになり、カオスな環境を楽しむワクワク感を持てるようになりました。

越境者の上司からも、越境学習の変化を実感する声があがっています。

NOKの本川様は、保田様が本来の自分の良さに気づいて戻ってきたことで、明るさや積極性が表れていると話しました。

コニカミノルタジャパンの佐藤様は、奥村様が「一皮むけた」という印象で、一つひとつの取り組みに対する問いそのものが変わったと振り返ります。周りのメンバーも「今日はCHEERSさんで何するの?」と日々声を掛けるなど、奥村様の越境を楽しんでおり、徐々に学び合える組織の土壌が形成されていると感じています。

伊達様は、越境学習から戻った人を元の職場(送り出し企業)が「迫害」するのではなく、アウェイでの活動に関心を寄せることが送り出し側の「受入力」につながると語りました。一連の事例が示すように、まさにこの周囲の受け入れ姿勢が、組織の変化を導く鍵となっています。

越境経験を未来へどう活かすか

セッションの最後に、参加者は未来に向けたメッセージを語りました。

保田様は「新事業において、人を引っ張る牽引力のあるリーダーになりたい」と述べ、20年選手でも効果があると語っています。奥村様は外の視点を取り入れながらキャリアを作る重要性を感じたとともに、雑談から新しいアイデアが生まれる環境を自社でも構築したいと語りました。

NOKの本川様からは「越境学習を通じて、自分とは異なる立場にあるさまざまなプレイヤーの価値を考えられる存在になってほしい」、コニカミノルタの佐藤様からは「次世代経営人材の経験の場として活用したい」といった展望がそれぞれ示されました。

受け入れ企業側からも、ポジティブな声があがっています。アスソラの山崎様は「越境学習は『三方良し』のよく練られたプログラム」だと評価しました。CHEERSの植村様は、「バックグラウンドの違う人が入ることで、組織は 『遠くに行ける』」と述べています。

まとめ

連載最終回の今回は、中間報告会で実施されたセッションの内容をもとに、越境学習が越境者・上司・受け入れ企業のそれぞれにもたらした変化をお届けしました。越境学習の価値は、参加者本人の成長だけでなく、送り出す側と受け入れる側の双方に広がっていきます。

本連載では、越境学習がもたらす効果について参加者の声も交えながら多角的に紹介しました。越境学習のリアルを知るうえで、本連載の内容が参考になれば幸いです。

▼なぜ今「越境学習」なのか?送り出す側・受け入れる側の価値を解説【東京都人材交流支援事業 中間報告会レポート①】
https://enfactory.co.jp/ekkyo-gakushu/column/10741/

▼未知のテーマでも、自分の強みは通用する〜越境がもたらしたと確固たる自信【東京都人材交流支援事業 中間報告会レポート②】
https://enfactory.co.jp/ekkyo-gakushu/column/10837/

▼社外の大企業人材が新規事業をリードする〜受け入れ企業が語る越境学習の価値【東京都人材交流支援事業 中間報告会レポート③】
https://enfactory.co.jp/ekkyo-gakushu/column/10843/

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